011 VSテロリスト、そして本気を見せてみる
「な、なんだァ!?」
「せ、セラ……?」エバは唖然した顔になる。
テロリストは、一斉にドアへ銃口を向ける。スズキは当然それを見越していて、手始めに一番近くにいたヤツからライフルを奪う。それを腕力だけでへし折り、彼女は覇気のない、いってしまえば退屈そうな表情で言う。
「人質、撃ちたきゃ撃てば? その瞬間には、オマエらの背骨はへし折れるけどさ」
スズキの言葉に、テロリストたちは怒りを隠せない。だが、あっという間にひとりの仲間の銃をへし折った少女の言ったことは、脅しでもなんでもないのは確かだ。
「クソッ!! こうなりゃ──!!」
ライフルを構えた瞬間にも、スズキは突撃してくるであろう。であれば、おそらく次に取る手段は……、
瞬間、閃光弾が破裂した。耳と目が焼きちぎれるような感覚に苛まれる。この刹那を狙い、スズキ、あるいは人質を殺すつもりだろう。
しかし、スズキは核弾頭でも死なないような〝化け物〟だ。閃光弾など、効くはずもない。
彼女はそれを投げたテロリストに詰め寄り、彼の首を掴む。ミシミシ……と11歳の少女とは思えない力で、首に力を入れていく。顔がピンク色に染まり、咳き込むことすらできない。
「小ネタで潰せるほど甘くないぞ、こっちは」
そう言い放ち、敵の意識が飛んだところでスズキは手を離す。
「さて、次は誰からガラクタになりたい? それくらいは選ばせてやるよ」
万が一にも、スズキには敵わない。それを理解したようだが、テロリスト側も諦めるわけにはいかない。捕まれば終身刑は免れないからだ。しかも、小学生にやられたとなれば、刑務所でひどいイジメに遭うのは確定。引き下がれないが、引き下がらないと死ぬ。そう考えているだろう。極限の場面だった。
そんな最中、スズキは窓ガラスのほうから誰かが飛んでくるのを目視する。凄まじい速度だ。マッハ単位といえるほど。スズキは首を曲げてゴキゴキ鳴らし、
「お仲間のご登場か……」
スク水型のパワードスーツ、右手にライフル、左手にロケット・ランチャー、フルヘルメットを被っている。性別はおそらく女。そんな兵士は、
「パーク登場。正義のヒーローごっこも終わり。世界の頂点は私たちのものだ。もう逃げ場はないぞ」
スズキは溜め息をつく。
「逃げ場がねぇのは、オマエもいっしょだろ。私に勝てる見込みでも、あるのか?」
「なければ、ここへは来ない」
テロリストたちが、一斉に声を張り上げる。
「おォ!! パークさんだ! 最強のソルジャーだぞ!! クソガキィ!!」
「パークさん! やっちゃってください!! 人質はこっちが抑えておくんで!」
推定だが、かなりの強敵。スズキは指をパキパキ鳴らして、覇気のない目に闘志を燃やす。
「仕方ねぇ。ちょっと本気ってヤツを見せてやるよ」
そう言うと、スズキは拳をぶつけ合わせる。
すると、
ブルッと、雰囲気が変わった。風圧的なものが、パークたちの頬をかすめる。
「なにをするつもりだ?」
「本気を見せるつもりだよ」
「本気? なるほど。時間制限付きか」
「どうだかな」
簡潔に言葉を交わし、スズキは教室の床に転がっていたホワイトボード用のマーカーを拾う。そして、それをダーツのごとく放り投げた。
そうすれば、
マーカーは、恐ろしい加速とともに消え去る。残ったのは速度という重たさ。パークはかろうじてそれを躱すも、突き破った窓ガラスが完全に割れきる。スズキは、舌打ちする。
「躱すなよ。最短で終わらせてやろうと思ったのに──」
その刹那、
スズキは、躱したことで油断しているであろうパークとの間合いを、さながらチーターの如く狭める。




