010 テロリスト襲撃、そして核兵器並みのエネルギー弾
オリビアの親は、過保護を通り越して毒親である。なにせ、放課後遊ぶのにも、親の目を掻い潜らなければならないのだから。彼女が外へ出られるのは、女子校のKOM学園のみ。不憫に感じてしまう。
それらを踏まえた上で、スズキは身長もさほど変わらない彼女へ言う。
「良いんじゃない? なんなら、私も親御さんを説得するよ」
結局、物事は程々が良い。スズキの母親・リナは、基本的にスズキの願い事は聞いてくれるし、本当にまずいことをしたら叱ってくれる。だからこそ、程々だといえる。
「ホント!? ありがとう!!」
「友だちだからね」
スズキは落ち着いた表情と声色で、そう言った。
『小学生相手に、随分優しいではないですか』
『おれは生粋のダメ人間だけど、クソ野郎ではないからな』
脳にマーズの声が響いたので、スズキはそう脳内で返事する。
「んじゃ、行こうよ!」
「うん」
KOM学園まで、250メートルくらい。スズキは、オリビア特有の中身がない話を聞き流しながら、学園へとたどり着く。
KOM学園、本名『カインド・オブ・マジック学園ピースランド分校』は、高校までの生徒が500人ほど。あまり規模の大きい学校ではない。アンゲルス本島には4000万人の人口がいて、本校にはその十倍の生徒がいるらしいので、校舎もそれ相応に大きくはない。
古めかしく、(大規模地震なんて起きる地域でもないが)耐震構造もなされていない。そんな校舎がどこか日本風なのは、誰かの趣味だろうか。
「……リヴ、今から警察に通報して、そのまま駐留してるアンゲルス軍を呼べるようにして」
「え?」
「テロリストがいる。数十人で学校を占拠してるみたい。完全武装してる上に、人質にエバがいるように見えた。性根の腐ったヤツらだね」
「え、どこにいるの?」
「あそこの窓、見てみて」
オリビアは目を見開くが、数百メートル離れている窓先なんて見えるはずもない。彼女は訝りながら、スズキへ言う。
「ホントに、テロリストがいるの?」
「うん。理由は分からないけど、なにか理由がなければ学校なんて占拠しない」
「……」オリビアはしばし、黙り込んで考え込む。「分かった。セラちゃんも、おまわりさんのところへ行こうよ」
「大丈夫。エバが拉致されてるから、せめてあの子だけでも守らないと」
「で、でも、小学生のあたしたちがどうにかできる問題じゃ──」
「小学生だからこそ、だよ。アイツらは小学生ごときに、反撃できないって油断してるはず。その隙をつく」
「……良いの?」
「なにが?」
「殺されるかもしれないんだよ?」
「殺される覚悟がなければ、誰かに危害は加えられないよ。さて、時間は有限だから、早く警察へ通報して。私は行くよ」
「ちょ、ちょっと待って──!!」
スズキは、オリビアが言い切る前に地面を蹴り、さながらスーパーカーのような速度で校舎へと向かっていった。ポカンと口を開けるオリビアだが、一応指示された通り警察へ通報するのだった。
*
「しかしよォ、本当に学校に〝サテライト・キャノン〟があるのか?」
「考えてみろ。田舎の学校に核兵器級の兵器を隠しておけば、誰もその存在に気が付かねェだろ」
「まぁ一理あるが、警察でも知り得ない超機密情報だろ? アイツらに要求聞かれたら、爆笑されるんじゃねェの?」
ひとつの教室に、無造作に選ばれた生徒が拘束されていた。全身武装したテロリストは、ライフル片手に〝戦術核兵器〟並みの威力を誇る、宇宙空間から放たれる超強力なエネルギー弾の指揮権を奪べるか、という会話を交わしている。
(まさか、少し早く登校したら拉致されるなんてね……。まだ、セラに〝カミングアウト〟もできていないのに)
黒髪のふわふわしたセミロングヘアに碧い目のエバは、うなだれる。
そのとき、
教室のドアが木端微塵に砕け散る。




