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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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少年の涙

ルミアはエデンの白くてふわふわな毛に顔を擦り付けていた。エデンは嫌がることなく、お腹を見せて気持ちよさそうにゴロゴロと転がる。


迷宮からずっとエデンもノックスもよく眠っていた。ノックスはお菓子の匂いで起きては眠るを繰り返し、エデンは時々起きては言いたいことがある時だけ起きる。


だからこうして頭の中だけで言いたいことにを念じる。

(眠ってばっかり!)


(私、今戸惑ってる…私は生まれた時からイカれてたって。エリックったら知ってて言わなかったんだから…確かに私も気づかなかった)


(ねぇ、エデン。これって女神の加護の影響なの?でも神眼を使えるようになったのは6歳なの)


(でも…誕生日のパーティーで黒いモヤを見たのは…禁書庫の前なの。私ってなんなの?)


(それに殿下がすごい怖い)


(迎えにくるって…怖…)


思い出したルミアは背中に悪寒が走って、ブルっとした。


パーティーでのことをユナには話せなかった。必死に準備してくれた彼女に、申し訳ないからだった。楽しかったか、と聞かれれば、ダンスが疲れたとだけ答えたのだった。


そしてルミアは、入浴を済ませ、着替えてベッドに倒れ込んだ。


(古代文字のことも気になる。でも殿下の迎えも怖い。エデンは起きないし、ノックスだって。アディは様子が変だし…)


「はぁ〜」


(考えても仕方ないことは…考えなくてもいいことにしよう)


(だって、私は異質だし、変だし、イカれてる)


(だから…アディは目立つって言ったんだ…)


「あぁ!!もう!!」


ルミアはベッドから起き上がり、やることもないのに部屋を歩き回った。そして窓の外から声が聞こえた気がして、そっと覗いた。屋敷の入り口で二人の人影が確かにそこにいた。よく眼を凝らして背格好を認識すると、シドヴィスとアディだとわかった。


ふと、部屋の置き時計に眼をやった。時刻は夜中の12時30分を過ぎていた。


(こんな時間にアディが帰ってきたの?どこ行ってたんだろう)


(パーティーでいきなりいなくなったし…アディはパーティーの格好のままだわ)


(あの時、打開策に乗ってたら一緒に行ってたのかな…)


(いやいや、でも……)


ルミアは見るのをやめて、再びベッドに横になった。明日は別の茶会に誘われていたが、今日のことがあって、姉はルミアに参加しない方がいいと言った。


(こんなことなら黒に戻しておけばよかったのかな…でもそれじゃ…)


(なんでこんなに……)


ルミアは目を閉じた。うとうととして、パーティーで3曲も踊ったんだった、と思い返した。けれど、その眠りに邪魔が入る。


ガチャ


突然ルミアの部屋の扉が開いた。ノックもなしに、暗い部屋に誰かが入ってきた。ルミアは飛び起きて扉の方を見た。


「アディ…はぁ…ノックもしないなんて…」


「寝てると思ったんだ」


「なら勝手に入らないでよ」


「あぁそうだな」


アディは暗闇の中、ベッド脇に立つと、そのまま倒れ込んだ。パーティーの時と同じ格好で、ギシギシとベッドを鳴らしてルミアの足の上に横たわった。


「ちょっと!服も着替えないで…自分の部屋で寝てよ。重い」


「ん」


うつ伏せのまま返事をして、動こうともしない。ルミアは足を折り曲げてアディの体から離れ、正座した。動かないアディの体に指でツンツンと刺して寝ないように起こした。


「痛い」


「ねぇ、どこ行ってたの?」


「お前が絶対行かない場所」


「…何してたの?」


「お前が絶対しないこと」


「答えになってない」


「答える気はない」


「……体調でも悪いの?」


「悪い。しんどい。つらい」


「治癒魔法?」


「お前には絶対治せない」


「絶対って…変だよ、アディ」


「お前の方が変だ」


「……エリックにも言われた。イカれてるって」


「はは、いいこと言うな」


「ひどい!でも、それが私の価値だとも言ってた」


「お前の価値はそんなもんじゃない」


「…褒めてる?」


「なぁ、ルミア。あのマント、貰っていい?」


彼は突然、話を変えた。声に覇気がなく、少し震えて聞こえた。ルミアは本気で心配になり、アディの顔に近づき、並ぶように、ベッドに寝転んだ。


以前、二人で夜を明かした時のように。


「認識阻害のマントのことなら、いいよ。悪用しないでね」


アディは突っ伏していた顔を傾け、ルミアを見た。ルミアはアディの顔を見て胸が苦しくなった。なぜなら彼は泣いていたから。


「…ほんとに…どうしたの?」


「お前のせいだ、バカ」


「髪を戻さなかったから?」


「違う」


ルミアはどうして泣いているのか、知りたかった。けれど、なぜか聞けなかった。ルミアはアディの背中に手を当てて、ユナが自分にするように、静かに、優しく撫でた。


アディが泣いているのは初めて見た。弱々しく、声も出さず、静かに、確かに泣いていた。


ルミアは自分も泣きそうになった。抱えきれない悲しみが勝手に溢れていたような少年の顔。


そして彼は眠ってしまった。アディの寝息を聞いて、ルミアも知らぬうちに眠った。


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