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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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73/103

*うそ*

アディはルミアから無理やり貰った認識阻害マントを使って街に出ていた。そしてジャベリン家からの監視を撒いて、変装し、何事もなかったかのように酒場に来ていた。冒険者が集まる酒場に、青い髪の14歳の男の子は似合わなかった。


「坊主、お前、ここがどこかわかってるのか?」


「父さんと来たはずなんだけど、戻ってこないんだ。おじさんって冒険者?」


おじさんと呼ばれた白髪混じりの顎髭に、茶髪の男性、筋肉がむき出しの半袖を着た大男。


「あ?だったらなんだ?親父はいないのか?」


「いないみたい。ねぇ、おじさんさ、ちょっとしたお願い聞いてくれない?」


変装したアディは、大男に金貨を渡した。


「は?なんでガキがこんなもん持ってんだ?」


「もっとあるんだ。この建物の近くにあったよ。僕、その場所知ってるんだ。でも暗くて怖いから着いてきてよ」


「……親父はどうした?」


「父さんは女の人とどっか行ったんだ。だからここで待ってようとしたんだけど、これを見つけたんだ」


「……いいだろう。おじさんはやさしいからな」


「ほんと?ありがとう。助かるよ!」



その日以降、ダレンという冒険者が忽然と姿を消した。消息をたった大男は酒場の常連の冒険者。けれど誰も不審に思わなかった。どこにでもいる冒険者で、冒険者がいつの間にか、別の街に移動するなんてことは必然だったからだ。


だからこそ、冒険者ギルドが彼を捜索することはない。



「そろそろ70か…あと、30は欲しいな」


アディはそう呟いて、また裏路地で認識阻害マントを羽織り、変装を解いて屋敷に戻る。マントが手に入って今までよりもやりやすくなったな、とアディは笑った。


堂々と歩いて屋敷へ向かう弟は、門の前で待っていた兄に気づいた。


「…お前、何してるんだ?」


「俺は…ルミアから離れたいと思います」


「俺が聞きたいのはそこじゃない。今までどこに行ってた?」


シドヴィスは悲しげな顔の弟を睨みつける。これは演技なのか、本気の顔なのか、見定めようとしていた。


「兄上。俺は…あいつの髪が黒かったから…無意識に重ねていたようです」


「……アディウス。ちゃんと答えろ」


弟は地面を睨みつけ、眉間に皺を寄せた。


「路地裏です。感情が抑えられなくて……泣いてました」


「…なら監視を抜ける必要ないだろ?」


「兄上は泣きじゃくる記録を残されたいですか?父上と母上に見せたいですか?黒烏の大勢に…見られて平気ですか?」


「俺は泣かない」


「俺は泣くんですよ。感情が昂って抑えられないんです。どうしようもなく壊したくなるし、投げ出したくなる。なので、監視を抜けてました」


弟の言い分を理解できないわけではなかったシドヴィス。父から聞いていた通り、アディは妹とルミアを重ねていたことに気づいたようだ、と兄は思った。


なぜ両親に今まで言わなかったのか、今、理由を聞いて信じた。


「少しくらいなら、見えなくできる方法があるだろ」


「えぇ、でもそれじゃ収まらなくなったんですよ。だからあいつのことは兄上に任せます。なので俺が代わりに外国に行きます」


「迷宮はどうする?学園もあるし—」


「迷宮なら俺より兄上の方が適任ですし、学園は話しを通してちゃんと卒業できるようにします」


「……本当にいいのか?会えなくなるんだぞ?」


「えぇ、いいんです。俺は俺にできることをする。それだけです」


アディの眼には熱が込められていた。決意に燃えるのとは違う、静かな熱。奥底に何かを秘めているようなそんな眼をしていた。


「いつからにするんだ。俺はここを離れられない」


「来年の春、あいつが学園に入学するまで…」


「わかった。俺から言っておく」


「助かります」


アディは悲しげに呟いて、一人、暗闇の中、明るい屋敷へと向かった。シドヴィスはため息をついて、仕事を片付けにギルドへ向かった。


アディは平気で嘘をつく。


けれど、それはルミアのために。


けれど、それは自分の野望のために。


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