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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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*壊れた花瓶*

「落ち着けって」


「兄上は…知らないんですよ…あいつの頑固さを…」


シドヴィスは、アディに用意された客室の一室で、兄弟だけの会話をしていた。部屋の割り振りはレオとジオルドが3階に、ルミアとスフィラが2階に、1階の、外と出入り可能な客間にアディたちがいた。

大声を出さなければ他に聞かれない。けれど、荒ぶった弟は、壁に大きな花瓶を投げつけて屋敷中に聞こえてもおかしくない破壊的な音を立てていた。


「ルミアは確かに異常で異質だ。だからこそお前一人に任せられないと判断して、父上は動いたんだ」


「いえ、わかってないのは俺もなんですよ…黒に戻せって言ったのは、その方があいつに変な注目を集めなくて済むからで…俺はあいつに信徒が生まれるんじゃないかって…」


「落ち着けって、まじで」


アディは頭を抱えてぶつぶつとつぶやいていた。その両目は完全に見開いて壊れかけてみえた。シドヴィスは不気味な弟の背中をさすりながら、落ち着かせようと努めた。


「ルミアにあの精霊がついてからおかしいんです…闇の精霊ですよ?火とか風とか水ならまだしも…闇って…なのに白いんですから…絶対おかしいんです…それにあいつの態度も今までと全然違う」


「はぁ…アディ、お前、少し休め。俺が代わりに出席するから」


シドはアディの頭の上にポンと優しく手をのっけた。アディはその手を強く握って退けた。


「いえ、俺が出席します。俺はあいつから目を離してはいけないんです。これからは特に、もっと注意深く監視しないといけませんから」


シドは態度が急変した弟の顔に怯えた。アディは揺るぎない眼差しと、迷いのない表情を兄に向けていた。さっきまで暴れて物を壊し、頭を抱えていた弟の情緒が理解できなかった。


「……お、お前…」


「兄上、聞いてくれてありがとうございました。おかげでスッキリしました。引き続き全体の監視をお願いします」


「え、いや、ちょ…アディウス?」


「では、ちょっと出てきます」


「は?どこいくんだよ?」


「じゃ」


アディは裏庭へと続く扉を開けて、素早く部屋から出ていった。その顔は、月の光の影で見えなかった。

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