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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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傲慢な少女

その後も着々と魔物を倒して進んでいったルミアたち。ジオルドたちの戦力は思ったよりも通用していた。スフィラとレオが魔法で足止めし、ジオルドとアディが剣で切り込む。


蜘蛛のような足が何本もある魔物の群れと対峙した時だけ、スフィラは見た目の気持ち悪さに怯えてしまっていた。けれどレオが冷静にカバーし、アディが息を合わせて前に出ていた。


ふと、アディは持っていた時計を見て、外の時刻は深夜未明の2時ごろだと皆に伝えた。するとシドヴィスが足を止めてアディに顔を向けた。


「アディ、この先に緑地があるはずだ。持ってるんだろ?その…収納だったか?」


「あぁ、あります。全部用意してます」


「ならそこで交代で休息を取る。ここからあと数分だ」


(やっと休憩!?やった…)


ごつごつとした洞窟の中を進み、階層の数字が書かれた木の板が壁に立てかけられていた。ルミアは気づかなかったが、ここまできた洞窟のあちこちに、木の看板が地面に立てかけられていた。


『10階層ー避難所』


(避難所なんてあるの?)


「避難所なんてあるのね」


ルミアが思ったことをスフィラが言った。アディはその避難所について説明しようと口を開きかけ、シドヴィスが冷ややかに一言答えた。


「水場と緑地があるだけの行き止まりだ。避難所といっても魔物が入らない保証はない」


(なるほど…結界石でも置いてるのかな)


「ちょうどよかった。少し休みたいし、お腹も空いたね」


レオが柔らかく微笑んでいったが、頬に汗を垂らして疲労を露わにしていた。


「殿下、大丈夫ですか?手を…」


ジオルドはレオの不調に気づいていた。ここまで声を掛けることもできなかった彼は、レオの肩を担いだ。


「大丈夫だよ。でもちょっと息苦しいかな」


『まったく、世話が焼けるわね、王子。ルミア、彼の魔石のマナの減りが激しいわ。後で補充が必要ね』


(え…なんで?)


『王子は穢れに弱いのよ。理由なんて聞かないことね』


「ごめんね、ルミア」


「いえ、わかりました」

(今は聞かないでおくけど、ちゃんと後で教えてね)


『ふふ』


エデンはルミアに返事はせず、妖しく笑いかけただけだった。




階層と階層の境目は曖昧で、崖を降りたり、でこぼこの道を歩いていたので今が何階層なのかルミアたちはわからなかった。ジャベリン兄弟は黙々と進むばかりで、魔物の警戒に集中していただけあって、余計なことは聞けない雰囲気だった。


この先を数分と言ったシドヴィスは嘘つきだと、ルミアは思った。レオたちもそう思ったに違いない。避難所に着いたのは、1時間以上経ってからだった。魔物の数が多くなり、毒を吐く甲殻類の魔物が厄介だった。


黒く艶々とした昆虫のような殻を持った魔物。魔法攻撃が効かず、アディの雷撃も通らなかった。ジオルドが身を呈して殻の隙間に剣を差し込み、シドヴィスがルミアの手を離して双剣で切り刻んだ。あまりに素早い攻撃にルミアたちは驚いたが、彼の持つ双剣からは蒼い冷気のようなオーラが出ていた。


「それは魔剣ですか?」

(その冷気って精霊?)


「そんな大したもんじゃない。魔石を埋め込んだだけの魔道器だ」


ルミアの言葉にさらっと答えてまた手を握る。シドヴィスに慣れてきたのか、ルミアは質問を続けた。


「魔石を埋めたものを魔導器って言うんですね。魔剣と同じでドワーフが作ったんですか?」

(神眼が機能したら聞かなくてもよかったのに…)


「知らん。もらいもんだ」


「魔石に魔力を流してるんですか?それとも何もせずにその威力なんですか?」

(魔石に精霊が?どう言う仕組み?)


ルミアはシドヴィスの持つ双剣が気になり、彼の冷ややかな睨みも効かず、グイグイ質問攻めをした。ルミアは平気で、人に質問はするのに、逆にされると嫌がる。アディが最も彼女を変人だと思うところの一つだった。


「………この石は魔石じゃない。魔術式が組み込まれた宝石だ」


「なるほど。そこに魔力を流して剣の威力を上げてるんですね。ちょっと見せてください」

(術式を書いた宝石?水晶かな?普通なら魔石を使うのに…)


「後にしろ。黙って歩け」


「……数分で着くっていったのに、通り過ぎてませんか?」

(この無愛想な感じ…ゼノヴィス様にそっくり)


「お前の足が遅すぎる」


「……」

(イラッ)


「兄上。ルミアに合わせてるんじゃなく、魔物の数が多いからですよね?」


アディが後方から呆れた口調で話した。ルミアは頬を膨らませて不機嫌にシドヴィスを睨んでいた。


「たしかに魔物の数が異常だ。こいつの影響なら、尚更だろ」


「ルミアは兄上の剣に興味があるから聞いただけです。ただの会話ですよ」


「お前はこいつの肩を持ちすぎだ」


『大層な剣じゃないわよ。ただのおもちゃみたいなものよ。それに魔剣なら以前見たからわかるでしょ?』


ジャベリン兄弟のルミアへの態度が気に入らなかったのか、エデンがふわふわとルミアの横を飛びながら答えた。ルミアは以前のゼノヴィスに放った言葉を思い出して同じような気持ちになった。


「そっか。アレね」

(あぁ、確かに魔剣と呼ばれるには気配がないもの。魔道具と同じってことね。流石にガラクタなんて言えないけど)


「……」


シドヴィスは少女を睨むも、すぐに前を向いて、歩く速度を上げた。ルミアは対抗してシドヴィスに気づかれないように地面から足を浮かせ、浮遊した。ゼノヴィスはその違和感に気づかないほど、周囲の魔物に警戒していた。




後ろから見ていたジオルドとスフィラは顔を顰め、レオとアディは笑いを堪えていた。出現する魔物に対処できていることで、余裕が出たのか、この時はまだ、なんとかなるとゼノヴィス以外、笑えていた。


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