*三公会議*
「陛下、彼女の発言を精査に調べて参りました。現在ジャベリン家が捜索中ですが、バルトロ男爵と共にパーティーに参加していた彼の弟が犯人で間違いないとの中間報告がありました」
王族と三公爵のために造られた会議室には、歴代の王の肖像画が壁にずらりと飾られている。その視線が集まる中心に円卓があり、この国の中枢の人々が集まっている。
三公爵の屋敷で殺人未遂が起きたことも一大事だが、それに他国が暗躍している可能性があれば、尚更大事件だった。集められた公爵家、アヴァロフは王の護衛として背後に立つ。ヘイレストは姿勢正しく、円卓に着く。ジャベリンは昔から態度がでかい。
「同じパーティー会場内から遠隔魔法攻撃を使用しての犯行ではないか、とのことですが…まだ捜査中です。ルミア嬢の言った『黒いモヤ』というのはわかりませんでしたが、伝承にあった女神様の加護によるものではないかと推測します。我がヘイレスト家としては、彼女の力の解析、または向上を目的として、正しい方向に導くことができる我が一族との…」
「ん゛ん゛ん!!」
アヴァロフ家当主、ボルトはダニエル・ヘイレストの言葉を遮るように、わざとうるさく咳払いした。
「貴公がなんと言おうが、うちの娘を渡すつもりはない」
ボルトの渾身の威嚇に、ダニエルは表情一つ、動かさない。
「陛下、武力と知力は戦略において、大事です。ですが、精霊王と女神様はそれをお望みでしょうか?もちろん、この平和な国で、戦争はありません。ですが、今後はどうなるかわかりません。陛下も彼女の聡明さをご覧になられたでしょう。どうかお考えください」
ダニエル・ヘイレストは、どうにかルミア・アヴァロフを手に入れようとしたたかに出た。しかし、そんな言葉に憤りを露わにし、血気多感なルミアの父によって阻まれた。
「何を戯けたことを!ダニエル!お前はまた私から奪おうとするのか!!」
会議室の王の椅子の後ろに、護衛兼ルミアの父として立っていたボルト・アヴァロフは、長年の怒りを込めて叫ぶ。
「はっ!笑わせる。エミリスは私と結婚する予定だったのを、あなたが奪ったんですよ!ルミアにエミリスの聡明さが似たわけです。もし私とエミリスとの子であればもっと…」
バン!!
「黙りなさい!!!」
陛下の隣、王妃が杖で机を叩いた。
「ヘイレスト公、今の発言は大変不愉快です。三公爵である前に、人として最低の発言ですよ」
「…大変お見苦しいところを…申し訳ありません」
王妃の後ろ、護衛兼ルミアの母として同じく立っていたエミリス・アヴァロフの手は怒りで震えていた。王妃が先にダニエルの愚かな発言を止めていなければ、夫と同様に怒りのまま叫んでいたかもしれない。
『もし』など、現実にはない言葉。
「ダニエル、お前が言いたいこともわかる。実際にルミアを見て、6歳だと言うのにあれほど賢いとは確かに驚いた。だが、それでもまだ6歳だ。これから騎士か魔術師に成長するかもしれん。可能性を潰すには、まだ早いと思うが、どうかな?」
王は王らしく中立の立場を取って平和的解決を言葉にした。ルミアとダニエルがやりとりしていた貴族用取調室の控え室でルミアを見ていた王は、三公爵のまとめ役を務める。
「それにもし女神の加護で悪しきものを見ることができたとしても、親元から無理やり離してしまうというのはどうだろうか」
「そうだ!ルミアは渡さん!」
ボルトは息巻いてダニエルに唾を飛ばす。
「…そう…ですが……いえ、そうですね。彼女の未来は私も楽しみですよ。それにいずれ我が魔導学園に通うのですから、その時でも遅くはありませんね」
含みがあるような嫌な言い方をして、ヘイレスト公爵は胸に手を当て、深々と王に礼をした。
(今夜は荒れるわね…)
王妃は未だに怒りが収まらない様子の護衛二人を見て思った。
まだ会議は始まったばかりだというのに、ジャベリン家当主ゼノヴィス・ジャベリンは大きなため息を吐いた。




