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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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王宮(泣)


「コレ、何が見えるか教えてくれるかな?」


「…赤い宝石が見えます」


「うーん、黒いモヤモヤは見えないかな?」


「見えません」


「うーん…ダメか…」


ルミアは王宮の一室で深緑の髪のおじさんと向かい合って座っていた。深緑の瞳に眼鏡をかけたおじさんは、女性に不自由しないのでは、と言うほど整った顔をしていた。


彼は父と不仲なヘイレスト公爵。ルミアの父は、研究機関ではなく王の元(父の目の届く場所)でなら娘を調べてもいい、と王に直談判したのだった。



「これはどうかな?」


「黒い石が見えます」

(この人が母様を誘惑したって人なんだよなぁ…)


「モヤは出てない?」


「出てません」

(見た目は若いしかっこいい…でも母様は強い父様が好き…)


「…これもダメかぁ」


「…」

(これ、何回やるんだろ…)


ヘイレスト公爵は他国から流れてきた宝石を一つずつルミアに見せて、例の黒いモヤが出ているか確認していた。


「じゃぁこれは?」


「…違います」

(もうやめないかな)


「…うーん」


ルミアが王宮に呼ばれて3日。朝から夕方までずっと同じことを繰り返す。最初はルミアも緊張して言われた通り大人しく答えていた。けれど3日目となれば愛想もない。


「あの…公爵閣下…」

(もう限界)


「ダニーおじ様でいいよ」


「…それはちょっと…じゃなくて」

(いきなりそれは…)


「飽きたんだよね?わかるよ〜けど大事なことなんだよ?ルミアちゃん」


「…」

(うわ…ちゃん付けとか…ルミア嬢って呼んでなかったっけ?)


ルミアは背筋がぞわっとして無自覚に顔が歪んだ。このおじさんと二人きりの部屋でずっとこうして石を見せられ続けるのかと思うと本が読めないことへの苛立ちが沸々と湧き上がった。


「大事なことっていうのはわかります。けど、男爵の胸に付いてた宝石には魔力が流れて熱くなってました」


「もちろん、報告は受けてるよ。アディウスくんがその場にいたらしいね」


「じゃぁ!」


「だから魔力を流して一つずつ反応を見てるんだ…」


「…」

(帰りたい…今すぐ禁書の本が読みたい!!この時間がもったいない……)


「さぁ、これはどうかな?」


「…む…むむ」

(そうだ!可能性の保証はオルグ様に賭けてみよう!何百年も前の本に書いてあったんだ!この人は魔法に詳しいはず!)


「ルミアちゃん?」


「……遠隔操作魔法…ではないかと思うんです。特殊な魔力の流し方をすれば魔石でも宝石でも反発して熱くなることがあるんです」


突然ルミアは席を立ち、両手にグッと拳を握りしめて深呼吸する。


(変化ない石を見ても意味ないんだから)


怪訝な顔のダニーおじ様の目を真っ直ぐに見つめ、自分の考察を述べた。通用するかわからない不安から、無意識に握りしめていた拳は震えていた。


「以前、大賢者オルグ・メイデン様の面白い実験失敗談を読みました。ご存知かもしれませんが、屋敷中の明かりに使っていた魔石を遠隔操作魔法で一気に点灯させる実験です。ですが魔石の温度が上がり過ぎたため、家を丸ごと火事にしてしまったとありました。離れた位置から流す魔力が一定ではなかったことが原因ではないか、とも書かれていました。バルトロ男爵の赤い宝石に触れた時、持っていられないほどに熱かったんです!だから庭に投げました。その後の宝石からは黒いモヤは出無くなり、熱もなかったんです。ということはあのパーティ会場に遠隔で魔力を飛ばしていた誰かは、男爵の胸から宝石が離れたことを目で見ていたと考えられるのではないでしょうか!?」


捲し立てるような早口で話したルミアは、目の前のヘイレスト公爵の固まった姿を見て瞬時に後悔した。


「…あ…す、すみませんでした!そ、そうじゃないかな〜って…アディと話して…その…ただの浅知恵です。ごめんなさい」


ルミアはこれ以上頭が下がらないところまで下げ、謝罪した。公爵閣下に出過ぎた物言いや振る舞いをしてしまったとわかっていた。けれど我慢ができなかった少女は冷や汗をかいた。それは、6歳の発言とは思えない。


(本が読みたいばっかりに…)


「…少し、時間をもらえるだろうか?」


「へ?」


ヘイレスト公爵は顎に手をやり、立ち上がるとどこか上の空で退室した。


「…あぁ…どうしよう…」

(禁書庫の鍵…やっと手に入れたのに…お父様に取り上げられちゃうかな…それより帰れないなんてことも…あー…)


その日も王宮に泊まり、慣れない部屋で一人ベッドでゴロゴロと動き回り落ち着かなかった。王宮に来て3日間、夕方には両親が会いに来ていたのに、今日は誰も来なかった。


ルミアはそわそわと落ち着かず、ベッドの天井の豪華な装飾を眺めていた。部屋には金ピカの調度品があるだけで、ルミアの興味を引くものなど見当たらなかった。


一睡もできずに朝を迎えると、入り口とは違う扉から宮仕の人たちが入ってくる音がした。もうそんな時間か、と起き上がり顔を上げると、見慣れた侍女がベット脇に立っていた。


「ユナ……ユナァーー!!」


「お嬢様!あらあら、眠れなかったのですね、クマができてますよ。お可哀想に…」


「うあぁ〜…」


ルミアはベッドから飛び出してユナの胸に飛び込み、大泣きした。ユナはぎゅっと抱きしめ、ルミアの頭を優しく撫でる。


家族とは違う安心の暖かさをくれる侍女。再会に緊張の糸がほぐれまくったせいかルミアは、大泣きして疲れて気を失うように眠ってしまった。



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