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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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アディウス・ジャベリン

この国には三公爵が司る三つの機関がある。


ヘイレスト家は魔力に長けた血筋で、魔導学園を創設した大賢者オルグ・メイデンは、ヘイレストの遠い親戚だと公表されている。学園では今現在、ヘイレスト公爵が学長を務めているし、ヘイレストの血筋の者の多くが教師をしている。その多くが治癒師や薬師としても有名で、薬師を育てる研究機関も同じ学園内に設けている。



ジャベリン家は王直属の財政と暗部を担っている。情報収集に長けた諜報機関、黒鴉こくうという組織を司る一族。彼らは国内だけでなく、他国に土地を持ち、国のため、王のために裏で働く存在。暗部というだけあって、裏で何をしているのか秘匿されている。公にしている仕事といえば、昔からジャベリン商会として商品の物流を生業にしている生粋の商人。国の貿易は彼らの仕事だ。




そしてアヴァロフ家は軍事を司る。王国騎士団と王国魔導士団を鍛え育てる軍部武官総指揮を王から賜ってきた。魔物が現れた時の対応や、王宮の護衛、または軍部訓練場で騎士を育てる。国内の各領地の砦の守りまで従事する機関だ。昔から戦術に長けた家系で、剣術、魔術など戦う術を磨いてきた血筋。過去には才能がないと家長に判断されて、容赦なく家名から除籍処分を受けた者たちが何人もいた。



ルミアの父、ボルト・アヴァロフは王直属の護衛騎士兼軍部総司令。

ルミアの母、エミリス・アヴァロフは王妃直属の護衛兼魔導士団総長。

ルミアの長兄ジオルド・アヴァロフは第一王子の護衛

そしてもう一人の兄アズール・アヴァロフは第二王子の護衛。


王子たちは必然的に兄二人の友人となって我が家に遊びに来ていた。それは王宮以外に認められた安全な遊び場所が三公爵の屋敷だけだったから。だから、レオナルド王子は特にアヴァロフ家に訪れていた。


ルミアの姉、スフィラ・アヴァロフは今後、前年に生まれた王女の護衛を任される予定。


ルミアは6歳である現在、秀でた戦術を見出せておらず、本ばかり読んで引きこもっていた。このまま12歳までに両親から認められなければ過去に追放された先祖たちのように名前にバツがつけられてしまう。


知識はあるが外で活発に遊んでいた兄弟たちとは反対に、内向的で引きこもりがちな問題児だと家族から非難され、同時に心配されていた。


そんなルミアは幼いながらに、話の合わない家族には疎外感を感じ始めていた。どうすればもっと強くなれるか、どうすればもっと魔術で強くなれるかなど、ルミアに取ってどうでもいいことだったのだ。




自室に戻ると、誕生日のプレゼントが山積みになっていた。ぬいぐるみや宝石、ドレスの飾りやアクセサリーなどなど。


けれど、今日はもう遅いしクタクタなので早々に眠った。


次の日、外の季節は夏の暑い朝。侍女はルミアを起こすといつものように支度を整えて、家族のいる食堂へと連れていく。誕生日プレゼントは片付けられ、きちんと飾られていた。


兄ジオルドが珍しく座っており、その隣にはアディが座っていた。いつもなら兄たちは軍部の訓練や学園と忙しいので一緒に朝食を摂るのは久しぶりだった。スフィラと母は外出でいない。二人はよく茶会や買い物に出かけるのでいつも通りの朝だった。


今日、座っているのは父と兄二人とアディ。


「おはようございます」


「あぁ、おはよう」


皆挨拶は返してくれるものの、ルミアと目を合わせるのは父とアディのみ。


「おはよう。昨日はお疲れ様」


「ジオルド兄様たちとアディがいるなんて珍しいですね」


「あぁ夏季休暇で学園はお休みなんだよ」


無口な長男の代わりにアディが答える。


「ルミアも10歳になったら同じ学園に入学するんだ、今のうちにしっかり鍛錬しなさい」


「…はぁぃ……」


今日も威厳たっぷりに父が娘に言い聞かせた。当の娘の返事にはやる気がない。


父とアディ以外黙々と食事を摂っていた。なにか物々しい雰囲気で、静かな食卓の中、ルミアは居心地が悪かった。


母と姉が居ないと静かすぎるなとも思ったが、いつもと違う何かを感じ取っていたルミア。アズールも昨日疲れたのか、いつものくだらない話しもしない。




食事が終わると、アディが突然立ち上がり、父の横で耳打ちをする。珍しい光景にルミアは目で追った。


「ルミア、食事を終えたら執務室に来なさい」


「…はい」

(なんだか嫌な予感がする…)



食後に執務室に入ると、アディとジオルド、アズール、父がソファに座った。


(いつもの食後のお茶?なんで談話室じゃないんだろう)


父と兄たちは並んで座り、ルミアは向かいのソファに座った。アディの隣に座ったルミアは緊迫した空気に胸が痛くなった。


お茶を配膳され、ルミアがカップに手を伸ばそうとした時、アディが話し始めた。


「ボルト様、早速本題を話させていただきます。ジャベリン家としてはルミア嬢を研究機関に調べさせてもらえないか、との打診。ヘイレスト家としてもバルトロ男爵が息を吹き返したのは治癒の魔法によるものではないと判断。それに加えてヘイレスト家は婚約を申請されています」


いつもの優しい声ではなく、淡々とした話し方のアディ。本を棒読みしているようなアディの口調。初めて聞いたルミアは思わず横のアディを見て怯えた。


ジャベリン家の者としてアヴァロフ公爵に報告したアディ。内容がルミア自身のことなので余計に体が強張った。


さらにアディの報告に憤慨する父の目は、魔力が溢れ赤黒く光って部屋の空気を一層変えた。


「ヘイレストに嫁入りだと!?それだけは天地がひっくり返ってもあり得んことだと伝えてくれ!ジャベリンは研究機関にと言うが、まさかヘイレストの研究機関に預けるなどと言うまいな?」


「違います。ルミア嬢には我々の見えなかったものが見えていたのです。報告の通り、バルトロ男爵がつけていたブローチは北のエルドニア帝国から流れできた物とわかりました。彼女の目に何が見えたか詳しく調べるだけです。それに、調べるだけなら専門のヘイレスト家が適任だと言うだけです」


「ルミアは知らないと思うけど、父とヘイレスト公爵は昔から仲が悪いんだ」


兄ジオルドがルミアに余計なことを教えた。


「ジオルド!お前に何がわかる!あいつは母さんを誘惑したんだぞ!!魔法の才能に気づいた途端にだ!!」


「でも父さんとくっついてるじゃん…」


アズールはいい意味で空気を読まない。


(どうでもいいけど、私必要?禁書庫行きたいんだけど…)


「ルミアはまだ6歳になったばかりだ。まだ自分の立場も危ういのに、他家に構っていられるか!!」


父の声を最後に、沈黙が流れた。こういう時になぜ母がいてくれないのか、とアヴァロフ家の子供達は思った。


そしてアディは懐から静かに一枚の紙を机の上に堂々と広げた。


父はそれに目をやると、それまで組んでいた足と腕を崩し、驚愕した。


「王宮に召喚!?アディ、これは…」


「ボルト様、ルミア嬢は今、この国にとって最重要人物と判断されています。ヘイレスト家もジャベリン家も関係なく、直ちに保護するようにとの王命です」


「王も……」


「はい、ですから昨日の今日、緊急に参りました」


アディは無事全部伝え終えた安心感に、ふぅ、と息を吐いて紅茶を飲み干した。


「ははは、えらいことになったな、ルミア」


アズールはやっぱり空気を読まない。


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