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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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子沢山

屋敷に着くまで迷宮の話で盛り上がった。スフィラも興味を持ったようで、誰でも倒せる初級の弱い魔物相手に、ジオルドは情けなく逃げ腰で転けた話は、お腹を抱えて笑った。そのせいでルミアはギルドの建物も迷宮も見逃していた。


そして一同ヘイレスト公爵の屋敷についた。馬車を降り、屋敷の前に並ぶ人々。


ヘイレスト家の多すぎる一族に迎えられた。子沢山を見たレオナルドはいつも通りの王子様。アディとアズールも同じく普段通り。その他、ルミアとジオルドとスフィラは苦笑いだった。


ヘイレスト公爵を中心に、集まって並んだ人数は50名を超える。ダニエルの実子だけで16名。その子孫の子孫を含めてのお出迎え。誰が誰の子か区別がつかない。


小規模なお茶会を想像していたルミアは、お腹がキリキリと痛くなった。


「今日はお招きありがとう、ヘイレスト公」


「こちらこそ、殿下にお越しいただくなんて光栄です。先日また孫が産まれまして、ウェンディは不在です」


(ウェンディが誰なのかわかんない…あ、エリックいた)


ルミアはレオナルドとダニエルの会話そっちのけで、エリックに笑顔で合図した。エリックは顔を傾げてルミアに微笑み返した。


「では、ご案内いたします。こちらへ」





ゾロゾロと大勢移動を開始した。どさくさに紛れてエリックがルミアの横に来て手を引いた。その後ろにアディとアズールがついてきて、3人は別の場所へと向かった。


「いいの?」


「いいの。それにアズはエリーのとこ行っててよ」


(アズって呼ばれてるんだ…)


「あぁ、わかった」


アズールは屋敷を熟知しているようで、ふらっとどこかへ消えていった。


「ルミアはこっち。アディも来るの?」


「はい」


「そう。でもアディは入り口までだからね」


「わかってます」


ルミアは二人の会話が理解できないで黙ってついていくだけだった。ルミアとしてもアディがそばにいてくれるのは心強い。


屋敷の廊下を抜けて、扉を潜るたびに建物が古くなっていった。アヴァロフ家の屋敷も相当な大きさと広い敷地を持っていたが、それに比べてヘイレスト家の屋敷は土地いっぱいに建物がぎゅうぎゅうに建っていた。


広い庭はなく、ガラス張りの温室が屋敷の壁にくっついて建っていたり、中庭が急に現れたかと思いきや、中央に学園と同じ研究施設があったりと不思議な作りになっていた。増築を繰り返したとわかったのは、建物の途中から新しい様式の建物へ変わっていたり、古く色褪せた石畳に変わったいたりと、見た目の一貫性がないから。


迷路のように扉を潜り、一際怪しい扉の前についた。


木製でできた扉はボロボロで、表面には魔法陣が描かれていた。


その魔法陣を見たルミアは、全身に鳥肌がたった。


「これ…まさか…」


「そうだよ。大賢者が自ら描いたんだ。文字の癖がそのまま残ってて読みづらいけどね」


「そんなことない!この跳ねるところとか、くねった文字も…最高だわ!!美しい…」


興奮するルミアの頭をエリックがポンポンと撫でる。ルミアは興奮のまま自分の世界に入り込んだ。


「…」

(すごいすごい!!この文字は…”ヘイレスト家の血筋のみ”って描いてある!この文字は—)


ルミアの思考が深く潜ったとわかったアディは、年上のエリックを睨みつける。


「エリック様は婚約されてましたよね?」


「ん?あぁ、もしかしてアディ嫉妬してる?」


「いえ、俺は立場的にルミアを守るためにここにいます」


「安心してよ、ルミアはまだ10歳になったばかりだよ?」


「えぇ、でもヘイレストは喉から手が出るほど欲しい人材では?」


「アディって意外に嫉妬深いんだね」


「質問に答えてください」


「そんなに警戒しないでよ。今回の目的はこの先だよ?アディはここで待っててね」


「ここで?」


「この先はヘイレストの守ってきた秘密だから。ほら、ルミア、いくよ」


「エリック様!ルミアになんかしたら…」


ルミアはハッと我に返って、エリックに手を引かれるまま扉に近づいた。そして彼は手の平から血を流し、魔法陣に触れた。魔法陣が薄緑色に光り、扉は開かれた。エリックはルミアの背中を押して先に扉の中に入れると、自分も一緒に入っていった。


そして扉が閉まる直前に振り返り、アディに不適に笑って一言残した。


「婚約は嘘だよ」


「はぁ!?…っくそ」

(だからヘイレストは嫌いなんだ!使用人も親族、監視は不可能。扉は入れない…くそ!)


アディは魔法陣の描かれた扉を感情のまま蹴飛ばした。


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