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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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憂いの始まり

「ルミア、これだけは覚えていて。この国は一夫多妻は認められないの」


「…」

(知ってるよ)


母に呼ばれたルミアは、二人でお茶を飲んでいた。アヴァロフ家の料理長が腕によりをかけた『夏の果物をふんだんに使ったお菓子』を楽しんでいた。


「いいわね?結婚相手以外の女性と関係を持つと言うことは、社会的に抹殺されてもおかしくない罪なの。だから…」


母はよりわかりやすくダニエル・ヘイレストの異常さを教えようと10歳になったルミアに説いていた。


「もちろん、王族は別よ?過去には王妃様の他に側室がいたのは事実だから。でもよく考えなさい?王族はこの国にとって特別なお立場だってことはわかるわよね?子孫を残すために…」


「…」

(…心底どうでもいい話だ。今更念押しして話すなんて…)


母の説教じみた会話は一方的に続けられ、ルミアは無表情でちゃんと聞いていた。ルミアが聞いていないと母が判断すれば、母の話は延長されることがわかっていたから。


「ですから、ヘイレスト家ってのは治癒魔法を未来に残すから、陛下からも世間からも多めに見られているの。だから社交界でも貴族の令嬢は、できるだけ、ヘイレスト家と距離を取ってる人が多いの。それにこれまでアヴァロフ家はヘイレスト家に嫁いだことは一度もないわ」


「…お母様。私はヘイレスト家にお邪魔するだけで嫁ぎに行くわけではありません」


「そんなことわかってます。あなたの立場と振る舞いを心配しているから、こうして周りのことを教えているのです。ルミアは社交に参加しないでしょう?だから世間というものを——」


「それならアズール兄さんはどうなんです?だいぶ前から頻繁にヘイレスト家にお邪魔しているそうですよ?」


「あのね、ルミア。あなたは女性で、アズールは男性です。本を読んでるならわかるでしょう?命を授かるのは女性です。そして傷がつくのも女性なんです」


「…お母様の言いたいことは理解してるつもりです。ヘイレスト家に行くのは、エリー様に黒いモヤがないかを調べに行くためで…護衛に姉様もついて来てくれるし、アズール兄さんもいます。流石にダニエル様が若気の至りといったようなことは起きないと思います」


(それに女性だけが被害者とは限らない。だってあの優しいオルグ様は男性のために、精力剤を考案したほどなんだから)


「…はぁ〜」


「お母様とダニエル様の間に何があったか知りませんが、私はまだ初潮を迎えておりません」


「……スフィラよりジオルドを連れて行きなさい」


「え?あ、スフィラ姉様は行く気満々でしたよ?むしろ絶対行くって…」


「…ルミア、見た目に騙されないでちょうだいね。確かに見目はいいのよ。けど中身が最悪なの。人間は中身が大事なんだから」


「えぇ、存じております」

(殿下の時に痛いほど理解したよ。あの美貌の中身は恐ろしいんだから)




なんとか母の説教から引き上げて、温室に戻ったのは夕食前の18時過ぎ。夏なので日が長く、外はまだ明るい。


「ご夕食はどうされますか?」


「ここで」


「はは…お疲れですね。そういえば明日の迎えはアディウス様が来られるそうですよ?」


「そうなの?」

(さすがに朝からダニエル様そっくりなエリックが迎えに来たら心象が悪いのかな…)


ユナは夕食の準備に取り掛かり、温室を出た。ルミアは侍女が居ないのをいいことに、ソファへゴロリと横になった。天井のガラスに照りつける痛いほどの日差しは、眩しい浄化の光、金の粒子をルミアに思い起こさせた。


ルミアは片手を上に伸ばし、浄化魔法を行使して金の粒子を観察した。


(そういや、浄化って魔法なんだな…治癒も奇跡の術とか崇められてる記述があったのに、今では治癒魔法って言われてるし…)


(ヘイレスト家が一夫多妻なのも治癒士を未来に残すための苦肉の策だった…)


(だってあのオルグ様が協力して精力剤や媚薬なんかを残したんだ)


(誰よりも治癒魔法で民を助けてきた、あのオルグ様の手記に書かれてあったもの。どうすればちぎれた足を治癒魔法で治すことができるか必死に研究してた。最後の方には殴り書きで『加護』って書いてあったし)


「お嬢様、また!ちゃんと座ってくださいと何度も…」


「…」

(そんな彼が多くの資料と学園をヘイレスト家に残したんだ。お母様が嫌うのは個人的な理由。でも、私が知る必要のないこと)


「お嬢様…またですね。…いいんですね?お嬢様のあられのない姿をアディウス様に転送しますよ?」


「…」

(ますます浄化と治癒が特別なものってわかった。それと、王子は人外の血を本当に引いてる?もしそうなら、女神と精霊王の間に生まれたのが王女様だったり?そんな…バカな…)


「…はい、送りました!ユナはちゃんとお伝えしました!」


「…あ、ユナ。戻って来てたんだ。ごめん気づかなかった」


「いいえ、いいんです。もう送りましたから」


「…なにを?」


ユナはぷぃっと怒って見せ、不機嫌に食事を机に並べた。ルミアは気にせず席に着いて食事を摂った。


ルミアがソファでゴロリと横たわり、手を伸ばしている横顔の映像を送られたアディウス。

そっと自分用に保管したのは誰も知らない。


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