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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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レオの歪み

「殿下はルミアの加護について知ってるんですか?」


レオナルドは護衛のジオルド・アヴァロフに帰りの馬車で詰め寄られていた。ルミアの兄である彼は今まで彼女に関心なんて持っていなかったというのに。身を乗り出して不機嫌な顔を近づけてきた。


「ルド、近いよ。それに僕が言えるわけないだろ」

(ルドがアヴァロフの公爵になったとしても言えない)


「俺は殿下の護衛でもあり友人でもあります。殿下を守る上で必要な情報だと思いますけど?」


レオナルドはジオルドの頭を押し返して距離を離した。無駄に力を込めて抵抗する護衛に向かってため息をついた。


「あのねルド。ルミアは君の妹なんだよ?直接聞いたらいいじゃない」


「あいつが俺に話すと思いますか?アディ以外には話さないですよ」


「アディねぇ…僕はアディが羨ましいよ」


「羨ましい?なんでですか?」


レオナルドは窓の外をカーテン越しに見ながら深いため息を吐く。ジオルドの性格を昔から知っていた王子は、彼はきっと理解できないと思いながらもつぶやいた。


「ルミアは僕がアディみたいに王子じゃなかったら仲良くしてくれたのかな、って。僕はもっと彼女と仲良くなりたいんだよ。お茶して話したり、一緒に遊んだりね」

(2、3歳の時のルミアはくっついて遊んでたのに…可愛かったなぁ…)


「…殿下がルミアと仲良くなりたい?」


「加護のことがなければ無理にでも、もっと会いにいってると思うよ。僕も本は好きだしね」


「殿下は今も昔もそれどころじゃないくらい忙しいです…それに図書室から出てこなかったじゃないですか、あいつ」


「ルドも知ってるでしょ?スフィラがいたからルミアには近づけなかった」


レオナルドは王子としての教育に毎日分刻みで予定が詰まっていた。次の王になるためには時間が足りないほど毎日多忙を極めていた。その合間を縫って気晴らしに数時間だけアヴァロフ家に遊びに来ていた。ルミアが生まれてより一層時間を作っては遊びに訪れていた。


けれど周囲はスフィラとの婚約を進めようと動いていた。そんな中ルミアは図書室に篭るようになって会える頻度が少なくなった。最初は無理に誘っていたが、アヴァロフ家の両親は断り始めたのだった。


「今回の騒動でスフィラが追放を免れても、陛下はルミアとの婚約を望むだろうね。だから僕には好都合だ」


「殿下は本気でルミアを望んでるんですか?」


ジオルドは信じられないという顔でレオナルドに聞いた。引きこもりのルミアはスフィラと比べて社交が嫌で参加しなかった。それに茶会でもパーティーでも存在感を消していつの間にか消えていた。そんなルミアを見てきたジオルドは、彼女に王妃は相応しくないと思っていた。


「さぁ?ルドには僕の気持ちなんてわからないよ」

(僕を王子としてしか見てないんだから)


ジオルドは女神と精霊王の加護について『黒いモヤが見える』くらいにしか知らなかった。両親が騒ぎ始めた剣術大会以降、ルミアに対して関心を持つようになっただけ。まだ婚約なんてものは家のために親が決めるくらいにしか考えていなかった。


「…確かに殿下のお心を測るなんて恐れ多いですね。でも友人として話くらいしてくれてもいいんじゃないですか?」


「ルドが僕に勝てたら話すよ」


「なっ…」


そう言ってレオナルドは笑って見せた。ジオルドは大会で負けた悔しさを思い出して何も言えなくなった。



馬車は王族の住む王宮についた。多くの宮仕に恭しく頭を下げられ、見慣れた廊下を歩くレオナルド。その後ろにジオルドがついてきて、王族の住居区画手前まで送り届ける。宮廷外の護衛はここまで。ジオルドと別れたレオナルドは、王族の居住区画へと入っていく。


住居区画には限られた宮仕しか入れない。入り口は王宮騎士団が護衛して外部のものは入れなくなっている。魔法障壁や結界に守られた入り口を抜けて中へ入る。


庭園を抜け王妃と先王妃がいるであろう離れに向かった第一王子。生い茂る草花に軽く触れながら歩いた。


「レオ?あなた学園はどうしたの?」


「ただいま戻りました、母上、お祖母様」


淡い金色の髪を後ろで纏めた王妃と、白髪の混じった銀髪の先王妃がお茶を楽しんでいた。息子に気づいた母が驚いて蒼紫の瞳を向けた。


「学園でちょっとした騒動がありまして、今日は帰ることにしたんです」


「あら、それは大変だったわね、ヘラとジョーは今神殿に行ってるわよ」


「そうですか。僕も後で行きます。今日ルミアに会いましたよ」


レオナルドは茶会の席に着き、宮仕に用意されたお茶を取る。


「そうなの?どうでした?」


「彼女は浄化を使っていました。両手から光り輝く黄金の粒を溢れさせて…とても美しかったです」


レオナルドはお茶を片手にルミアを思い出し、甘美な顔を見せた。王妃も先王妃も同じようにうっとりとさせて微笑んで喜んだ。


「まぁ…私も早く会いたいわ。お義母さま、エミリスに茶会を開いてもらいましょう?」


「私も会いたいわ。けど、退位した今は表に出れないのよ?それにあなたが出しゃばっていたらレオと彼女の未来が心配よ」


「まぁ、お義母さま。私が出しゃばらないとあの子に会えませんわよ?ヘイレストのエリーもアヴァロフのスフィラも候補から外れた今だからこそチャンスですわ!」


「そううまくいくかしら…レオ、いきなり王宮でお茶会なんて只事ではないですから慎重になさい。あなたの母はこんなだから、あなたがしっかりしないとダメですよ」


「お義母さま!あんまりですわ」


レオナルドはふふふ、と笑ってお茶を口にして、そっとカップを置いた。


「もちろんですよ。お祖母様。チャンスを逃すつもりはありません」


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