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連環の樹 —憂い令嬢、周りから囲まれてた—  作者: ダッキー


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誕生日


誕生日パーティが始まった。父の手に引かれて招待された貴族の方々、一人一人に家族全員で笑顔のご挨拶。その次に同じ三公爵の方々がご来場。ルミアは祝福の言葉に笑顔でありがとうございますとだけ返すのみ。


(つまらない…本読みたい…頬が痙攣しそう…早く終わらないかな…)


一番最後に王陛下、王妃殿下、第一王子殿下、第二王子殿下がお見えになられた。


王様は銀髪で黒眼の恰幅のいい美しい男性。

王妃様は淡い金髪で蒼紫の瞳の美しい女性。

第一王子は銀髪で蒼紫の瞳、第二王子は金髪で黒の瞳。皆美しい顔なのは、女神と精霊王の末裔だからだと民衆は崇めていた。


(実際のところわからない、正装は初めて見たけど…迫力…すごっ)


第一王子からは祝福の花束を渡され、大きくなったね、と言われたルミア。深々と頭を下げて教わった通りに感謝を述べた。


「レオナルド殿下、お越しくださいましてありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします」


「うん、楽しみにしてるよ」


レオナルド王子とは、普段、我が屋敷に遊びに来る兄達の友人で、一緒にかくれんぼをしたことが何度かあった。彼はルミアと顔を合わせるたびに、喜んで微笑みを送ってくる、優しい兄のような存在だった。けれど、ルミアが書庫に籠り始めてからはほぼ顔を合わせていない。


(早く終わって本が読みたい…禁書庫が私を待ってる…)


広間と外庭園を使っての大規模なパーティが、音楽の生演奏と共に始まった。


この国では6歳の誕生日を盛大に祝う。それが貴族の風習であり、王族を支える立場の三公爵の娘ともなれば、国をあげてのお祭りだ。王都では国旗が飾られ、国民には花が配られた。


そして主役のルミアは、大勢の貴族に見守られながら祝福のダンスをしなければならない。祝福をもらうお返しに、祝福を返す儀式のダンスだ。


誕生月の蒼い花を胸元につけ、第一王子と一緒に踊る。


精霊譲りと言われる透き通るような銀髪に、女神譲りの蒼紫の瞳。見目麗しい10歳の第一王子レオナルド。さすが人外と噂の王族。微笑むだけで会場の女性はうっとり。


一方、ルミアはこの日のために猛練習させられたダンスを、ぎこちない笑顔で乗り切った。眉間の皺がよって、頬は痙攣していた。


ルミアにとって初めてのパーティー。主役のダンスが終われば、自由時間。曲調が変わりみんな好きな相手と踊り出す。食事とお酒が振る舞われ、大人たちのどんちゃん騒ぎが始まる。


——ルミアを除いては。


「レオナルド王太子殿下、お付き合い頂きありがとうございました」


「こちらこそ祝福をありがとう。そして誕生日おめでとう、ルミア。今日はレオ兄様と呼ばないんだね?」


「…教わった通りにしか呼んじゃダメなの」


「ふふ、ルミアらしいね」


ルミアは教わった通り、右手を胸に、左手でスカートを持ち上げ、片足を後ろに下げてお辞儀をする。


「次は俺だな」


そう言ってルミアの手を取る第二王子。年はスフィラと同い年で9歳。第一王子と違って少し乱暴な性格。よく言えば積極的。


「ヘラルド王太子殿下、よろしくお願いいたします」


「よろしく」


弟のヘラルド王子はグルグルと余計に回転するように踊り、何度か足を踏まれながらもルミアは頑張って踊り切った。


二人の王子との踊りを終えたルミアは、体力の限界を迎えて庭の東屋に逃げ隠れた。大人たちの関心は自分の娘や息子を、王族や三公爵との繋がりに売り込むことにいっぱいいっぱい。主役のルミアがどこへ行こうと誰も構わないのだ。



(ヘラルド殿下、力強すぎ…手が真っ赤になってる…踏むなんて…もう!)


「はぁ…疲れたぁ」


「お疲れ様」


「うあ!…アディ!」


「王族とのダンスが終わったんだし、堂々と休憩すればいいのに」


「あんなに人がいっぱいいる中じゃ休めないよ…ふぅ」


「わかるよ。俺の時も大変だった」


暗めの銀髪で茶色の瞳のアディウス・ジャベリン。長男のジオルドと同い年の友人。三公爵のアヴァロフ家とジャベリン家は、昔からお家柄の影響で繋がりが強い。そして、アディウスはルミアにとって4人目の兄のような存在。


でも兄たちよりもルミアに優しいアディは、ルミアに飲み物を渡した。


「ありがとう。アディの時もいっぱい踊った?」


「もちろん。スフィラと踊った後は同年代の子と一通り踊った」


「うわー…そりゃ大変だったね」


「それより手、大丈夫か?足も踏まれてたみたいだけど…」


「見てた?目がまわるかと思ったよ〜。でも大丈夫だよ」


「そう。ならよかった。そういえば禁書庫の鍵もらったんだって?」


疲れてしょぼくれてたルミアの顔がアディの魔法の言葉でぱぁっと明るくなる。


「うん!そうなの!!やっとお父様にもらえたの!!」


「お前はほんと本が好きだな」


「みんなそう言うけど、本が好きなんじゃないよ?」

(知ってるでしょ?)


「知ってるよ、賢者のじいさんが好きなんだろ?」


「ちがうよ〜大賢者オルグさま!」


「ははっ、知ってる」


「アディもバカにするの?」


「しないよ。大賢者の功績はこの国だけじゃなく大陸中にあるからな」


「そう!外国でもオルグ様はたくさんの人たちを救ってるすごい大賢者様!」


アディは他の人とは違ってルミアを馬鹿にはせず、ちゃんと話を聞いてくれる唯一の存在。なのでルミアも心を開いてなんでも話してしまう。


しばらく禁書庫の魅力をアディに語っていたルミア。禁書庫の鍵を嬉しそうにアディに見せつけ、どんな本があるのか予想を語って聞かせていた。ルミアの今日一番楽しい時間となった。


けれど、突然後ろから声がした。


「ここにいた!!ルミア、母様が探してたぞ!!」


東屋の裏側の茂みからひょこっと顔を出したアズール。


「もう?まだパーティーは終わってないよ?」


アズールが母の指示で妹を探しに来たようだ。茂みから移動して姿を消す。


「アズールはルミアを見つけるの上手いよな」


「隠れんぼしても一番に見つかるから楽しくないの」


ルミアは口を尖らせてアディに告げ口をする。アズールは裏から東屋の入り口に周り、妹に呆れたように言った。


「いつもルミアは書庫に隠れるからだろ。そんなことより、母様のとこに戻るぞ。アディ兄も」


「はぁーい」



会場に戻ると、音楽が止み、妙な空気が流れていた。ざわざわと大人たちが何かを囲んで驚きの顔をして動揺していた。ルミアは不安を感じ、アズールの袖を掴んだ。


「なにかあったの?」


「バルトロ男爵が倒れたんだ」


「…だ、だれ?」



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