*ジャベリン親子*
「父上…俺には無理です。相性が悪いとしか思えません」
ジャベリン家当主ゼノヴィス・ジャベリンは執務室で息子の泣き言を聞きながらタバコに火をつけた。
「ほー…それで?」
「あいつはかなりの秘密主義者の変人です。書庫に籠り出した時からあまり自分のことを言いたがらないんです」
「そんな奴どこでもいるだろうよ」
「あいつは別格ですよ。自白薬盛るのが一番はやいです」
ゼノヴィスはふぅーっと煙を吐いて椅子に座り直す。
「誰とでも仲良くなるお前が、それほど手こずってるなんて珍しいな。自白薬なんてのをアヴァロフ家に使ってみろ。お前は二度と表に出られなくなる」
「…冗談です。けど、あいつは確実に何か隠してる」
ゼノヴィスは机の上の報告書を手に取り、そのまま読み上げた。
「屋敷中歩き回って徘徊。パン作り。温室に植物観察…何がおかしいんだ?」
アディウスは父の愚問にため息を吐く。ゼノヴィスは息子の報告書を読んだからこそ、わざとイジワルに質問をしただけだった。そうやって息子に説明するように、昔から促していた。
「ルミア・アヴァロフは興味を持った事への探究心が強い人物。執着とも言えるほどの関心をオルグ・メイデンに向けている。6歳の誕生日に女神の加護に似た力を見せた。読書が好きなのは大賢者に関係する伝記が好きだからと本人は言うものの、書庫の本は種類科目関係なく、全部読破し記憶している。訓練所では魔法は使えるが、どれも生活魔法程度。剣術は才能なし。昏睡状態から起きた後、書庫へ行ったのは一度きり。物をよく観察するようになったことから、我々とは違うものが見えてるのではと推測します」
「そうだ。何が不満なんだ?」
「父上!俺はあいつの信頼が得られなかったんですよ!!推測はできても本人の口から聞けなかったんですから!」
「はぁ〜…アディ、お前…辛抱が足りんぞ」
「父上があいつに聞けばいい。怖がって泣きながら喋るんじゃないですか?俺はあいつの子守はもうしたくありません」
「うーん…」
(アディウスは母親に似て気が強い。ここで任務を変更させればクセがつく…ここはガツンと…)
「…ルミアとはあまり一緒に過ごしてなかったから、毎回久々に会うんです。どう接したらいいかわからないです…急いだのに…」
「うーん…」
(あれ、なんか俺何も言わない方が良くね?)
「…今日だって、久々に会えたの喜んでたのに…俺、実の兄弟より会話してるんですよ?ジオルドたちがルミアと距離を取るのは話が合わないからだし、合わせようとしないからで…俺はあいつの話聞くのに…心配して急いで帰ったってのに…」
「あぁ、そうだなぁ〜」
(そうだ、真面目な息子よ、もうひと推し!)
「…俺、しばらく帰りません。ちょっと出てきます」
「え?」
「学園始まったら帰るんで…」
アディウスは父の書斎からスタスタと出て行った。
「えぇー…なんでぇ?」
ゼノヴィスは左耳につけた魔道具をカチッと押して書斎で一人喋り出す。
「フィオちゃん、息子出てったわぁ…」
『はいはい、大丈夫。すぐ戻ってくるから〜それにシバちゃんが守ってるし〜』
「さすが俺の嫁」
『はははー…タバコやめなね』




