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9.『魂の自主制作(インディーズ・レジスタンス)』

地下議事堂の崩壊から数時間が経過した。

官房長官が「背景」へと溶け込み、親父の野望を挫いたことで、世界は一時の平穏を取り戻したかに見えた。


だが、空を見上げた俺の頬に、冷たい**「黒い雨」**が当たった。


「……なんだ、これ。色がついてない?」


その雨に触れた街の彩度が、みるみるうちに奪われていく。

官房長官が身を挺して作り上げた「究極の背景」が、まるで漂白剤をかけられたかのように、白黒のコンテ状態へと退行し始めていた。


「バカな……親父は倒したはずだろ!?」


俺が絶望に暮れる中、空に巨大な「ウィンドウ」が開いた。そこに映し出されたのは、親父よりもさらに巨大で、無機質な存在。

この物語の真の黒幕――**「スポンサー(海外投資家連合)」**だ。


『残念だよ、作画監督くん。クオリティを上げすぎた結果、この国の「維持コスト」が予算をオーバーした。君たちの物語は、本日をもって**打ち切り(キャンセル)**だ』


彼らの背後には、何万体もの「AI生成モブ」が控えていた。

感情のない、左右対称すぎる、魂の抜けた兵隊たちが、雲の切れ間から地上へと降り注いでくる。


「……ふざけんな。ここからは、俺たちが『自主制作』で続けてやる!」


俺は官房長官が最後に遺した、虹色の輝きを放つ**「マスター・パレット」**を手に取った。

これは彼女の魂の残滓。これを使えば、失われた色彩を一度だけ塗り直すことができる。


「みんな、聞こえるか! 放送枠なんて知るか! 俺たちは、俺たちの描きたい『第12話』まで、止まらずに走り抜けるぞ!」


俺の叫びに呼応するように、街のあちこちで、背景の一部となっていた官房長官の「声」が風に乗って響いた。


『……描きなさい。あなたの、物語を……』


俺はパレットに筆を浸し、白黒に染まった世界に向かって、力強く最初の一線を引いた。

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