第二話 勇者は聞いてない!
秘書の柳原に、勇者について詳しく聞く蓮華。
「で、その勇者って、どこの誰なの?」
秘書は答えられない。
名前も、住所も、顔も知らない。
召喚される予定だった、という情報しかない。
「ちょっと待って。知らない人を探してるの?無謀超えて、それはヒドイ」
「はい。ですから困っているんです」
「……それ、どうやって探すの?」
蓮華の質問に、秘書は黙る。
連絡手段どころか、探す手がかりもないなんて
まるで雲を掴むような話がすぎるわ。
「召喚って、誰がやるの? 魔王? 神様? それとも国?」
秘書は、召喚は魔王側が予定していたものだと説明する。
しかし、誰が勇者を選び、どうやって召喚するのかまでは、秘書にもわからない。
蓮華は目を輝かせる。
「それって、私にもチャンスあるってことじゃない?ヤバ!! 何なら私が行こうか? ねぇどう?」
律が即答する。イラっとしながら
「ないよ」
「なんでよ!律のケチ!!私は、律のキレーな顔には騙されないからね! てかさ、早く彼氏作りなさいよ!!」
「彼氏…僕は男だよ。まぁ、好きになる理由に性別は関係ないよね。でも蓮華は僕のBL展開に期待しすぎだよ。」
「それだけキレイなんだから
期待はする。一生。最近律と、ほら…近所の書店の、バイト君。ザ·男子って感じでー
律を守ってくれそうでぇー」
蓮華の妄想は止まらなかった。
律が秘書に尋ねる。
「話が脱線してごめんなさい。それで
勇者が召喚されなかったことは、どうやって確認したんですか?」
予定の日を過ぎても勇者は現れなかった。
召喚する側からも連絡がない。
だから、魔王は勇者が来なかったと判断した。
しかし、律は指摘する。
「召喚されなかったのか、それとも召喚そのものが行われなかったのか。それは、まだわからないんですね」
秘書は言葉を失う。
来なかった理由を探す前に、何が起きたのかさえ、わかっていなかった。
秘書は少し考え込む。
「……魔王様は、ずっと楽しみにしていらしたんです」
仕事の報告とは違う口調。
蓮華は、秘書の顔を見る。
初対面から、やつれていた男性。
その疲れの奥に、何かがある。
秘書が内に秘めているものを、探る必要が
あると、直感する。
まだ、何故かはわからないけれど。
秘書はそれ以上語らない。
律も、無理に聞き出そうとはしなかった。
律が静かに言う。
「まずは、召喚の仕組みを調べる必要がありそうですね」
蓮華は椅子から立ち上がる。
「よし! じゃあ私も異世界に――」
「蓮華は留守番」
「なんでよぉぉぉ!せめて入り口! どうよ 律!!」
「どうもこうも、無理だよ蓮華。」
秘書は、思わず小さく笑ってしまう。
張り詰めていた表情が、ほんの少しだけ和らいだ。
そして、律が尋ねる。
「ところで、召喚を担当しているのは、どなたなんですか?」
秘書は答えた。
「それが……私にもわからないんです」




