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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
四章 近づく距離

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⑤③

オリヴィアはハッとして口元を押さえた。

すぐに情報を吐かせるのは無理なほどにボコボコにしてしまったからだ。

子どもたちへの態度や言葉を聞いて、我慢できずにやり過ぎてしまった。



「す、すみません……!」


「まさか男たちを!?」


「殺してはないんですけど、少しだけやり過ぎたといいますか……半分だけ」

 

「……半分?」



ロベールはオリヴィアのもとを離れて、男たちがいる荷馬車へと向かった。

様子を確認したのか、こちらに戻ってくる。



「死んでないのなら問題ない」


「よかったぁ……!」



ホッとした様子のオリヴィアだが、影蜘蛛たちは男たちの惨状を確認して何も口にできなかった。

急所を的確に与えて、激痛を与えている。

しかし主人であるロベールが『問題ない』というのだから、それに従う以外はなかった。



「ロベール様も食べますか?」


「……ああ」



オリヴィアの問いかけに、ロベールは静かに頷いた。

それにはマルセルたちも驚愕して言葉が出てこない。

オリヴィアの隣にピッタリと体を寄せたロベールと、少し動きづらそうにしているオリヴィア。

周りから見ていると二人の気持ちの差が透けて見えるような気がした。


肉塊が焼けるのを待つ間、ロベールは終始、嬉しそうなオリヴィアをじっと見つめていた。



「やはりオリヴィアが傷つくことが許せそうにない」


「……えっと」



彼の視線は拘束を解く際に擦れてしまった手首の傷に視線を送っていた。

彼は本気で言っているのだろうか。

その怒りはひしひしと伝わってきた。



「二度このようなことはないようにする」


「この程度なら別に構いませんけど……」


「俺が耐えられないんだ」


「……?」



オリヴィアは大したことではないと思っているが、ロベールは違うようだ。

彼とは考え方の差があるのかもしれない。

焼けた肉を分けようとするが、彼は首を横に振っている。

それからオリヴィアが肉を平らげるまで、ロベールはずっと隣に座っていた。


その間、荷馬車ではマルセルが情報収集を始めたのか、定期的に悲鳴が聞こえてくる。

オリヴィアのお腹はパンパンになる頃には、マルセルが血まみれの状態で笑顔で出てきた。



「どうやらグミーダ伯爵とその娘、サンドラ嬢が関わっているようです」


「はぁ…………」



ロベールは深々とため息を吐いた。

グミーダ伯爵は前々から怪しんでいたようだ。


(……たしか影蜘蛛たちが怪我をしたのもグミーダ伯爵家のパーティーだったんじゃ)


オリヴィアはあのときのことを思い出す。

怪しい家々に影蜘蛛たちを派遣していたようだ。



「アリスの関与は?」


「……恐らくは」


「だろうな」



彼らによれば、アリスがロベールに近づこうとする令嬢に圧をかけるのは、いつものことだそうだ。

それにサンドラというのは、オリヴィアが娼館の面接だと勘違いしていた際に一番目立っていた貴族の令嬢らしい。

そして怒鳴り声を上げながら帰っていったことが印象的でよく覚えていた。


その令嬢とアリスが繋がっていて、こうしてオリヴィアを山に捨てる作戦を企てたというのだろうか。



「どうして山に捨てるのでしょうか」


「令嬢がもっとも絶望するからじゃないか」


「そう……なんですか?」


「オリヴィアには、まったく効果はないようだな」



そう言ったロベールはオリヴィアの口元を親指で拭った。

どうやら口端に肉汁か何かついていたようだ。

マルセルがすかさずロベールにハンカチを差し出す。



「オリヴィア、ありがとう」


「……はい」



蜘蛛の影たちと後処理をしつつ、残りの肉は持ち帰りシェフに調理してもらうことにした。

手際よく猪を捌いたのがオリヴィアだとわかると、ロベールはますますこちらに関心を寄せていた。

ロベールはオリヴィアの肩にジャケットを掛ける。



「君はいつも薄着だな……」


「動きやすさ重視でしたから」


「他の男の前ではやらないでくれ」


「……どうしてでしょうか?」


「それは馬車の中でじっくりと話す」



馬車の中でも、ロベールはオリヴィアにぴったりと離れなかった。

ロベールはオリヴィアになぜ薄着ではないけないのかを丁寧に説明していくが『君が魅力的で……』辺りから何も聞こえなくなった。

爆睡していたオリヴィアだったが、ロベールに抱えられるようにしてエンバルト公爵邸に到着する。


エリーがオリヴィアの血塗れの姿を見て、悲鳴を上げて倒れてしまった。

ドレスが無事だということや、ほどんどが返り血だと話すと、今度は悪魔のような表情で怒っていた。


それからロベールは体調のいい子どもたち、一人一人を送り届けに向かった。

怖い思いをして、彼らは傷ついたことだろう。

しかしオリヴィアのお肉パーティーのおかげで、少しだけいい思い出にもなったようだ。


体調を崩しているのは、ほどんど王都付近で攫われた子どもたちだ。

彼らの体調がよくなり次第、王都に送り届けるそうだ。

それに王家に直接報告することになっているらしい。


今から男たちの証言をもとに、証拠を集めていくそうだ。

どうしてここまで騒ぎになったかというと、三大公爵の蜂の紋章を持つガンダルード公爵家と関わりのある人物が攫われた子どもの一人だったらしい。


街にお忍びで遊びにきたところ、運悪く彼らに捕まってしまったようだ。

そこでエンバルト公爵家に調査の依頼がきたそうだ。


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