⑤④
何もヒントがない状態から情報を集めて、男たちにたどり着いたのだ。
オリヴィアの荷馬車を見たが、彼らは手の込んだやり口で子どもたちを攫っていたように思う。
顔色も悪く、具合が悪そうだった子どもたちは適切な治療を受け、食事と水分をとると随分と体調がよくなった。
子どもの回復力は早く、オリヴィアはエンバルト公爵邸で元気になった子どもたちの相手をしていた。
彼女たちと花冠を作ったり、乗馬をしたりと忙しない日々。
ジョセフィーヌも不満そうだったが、子どもということで我慢しながらも背に乗せてくれた。
蜘蛛の影を見つけるかくれんぼをしていた。
影たちも子どもたちが一生懸命探しているからか、姿を現してくれた。
ロベールはやることがたくさんあるのか、後処理に追われている。
しかし寝るときだけはオリヴィアのそばにやってきて朝早く出ていく。
深夜に愛おしそうに髪に口付けたり、名前を呼ばれたりすることもある。
熱烈なアピールと圧にオリヴィアも目を覚ますが、どう反応すればいいかわからないため、そのままスルーしていた。
オリヴィアはロベールに屋敷外に出ないように言われ、またいつもの日常を過ごしていた。
──数日後。
王都から帰ってきたロベールは衝撃的なことを口にした。
「グミーダ伯爵とサンドラ嬢を処罰した」
どうやら子どもたちを攫ったのは財政難に苦しんだグミーダ伯爵らしい。
金に目が眩み、彼らを雇い、見目のいい子どもたちを大金で売り払おうとした。
ガンダルード公爵家に関わりがある子どもを連れ去ったことが運の尽きだったようだ。
彼らは強くグミーダ伯爵家を非難した。
それにくわえてロベールの妻であるオリヴィアを攫ったことで、エンバルト公爵家の怒りも買った。
(そういえば、外では溺愛するふりをしてるって言っていたものね……!)
勘違いしているが、ロベールはオリヴィアに夢中だった。
その溺愛っぷりは今までのロベールを知るものたちからすれば信じられないものだ。
それを理解している周囲は、オリヴィアに伝えたくて焦ったい思いをしていた。
ロベールが最初にオリヴィアに言ったことがマイナスに影響して、何も響いてないと伝えたいが、彼に言えずにマルセルとアイナスに視線を送る。
彼らはニコリと笑うだけだった。
それにサンドラはオリヴィアが妻だとは知らずに、エンバルト公爵家の侍女だと聞いていたらしい。
必死に弁明していた彼女だったが、事が起こったあとでは言い訳にしかならない。
グミーダ伯爵家は降格とともに領地の一部を失った。
爵位も親戚が継ぐそうだ。
そしてサンドラからアリスの名前が出たそうだが、彼女はサンドラに友人としてやめるように忠告したと涙ながらに語った。
レディズリー公爵がすぐに揉み消したのだろうとロベールは言っていたため、サンドラには同情してしまう。
グミーダ伯爵家にとって最悪な結果になってしまった。
「……グミーダ伯爵も落ちぶれたものだな」
ロベールは吐き捨てるようにそう言った。
今は彼とお茶を一緒に飲んでいた。
彼の所作を見習いつつマナーを確認して、紅茶を飲みながら頷いていた。
もうすぐパーティーということで、契約結婚だということをバレないようにしたいのだとオリヴィアも彼に合わせていた。
(これも大切なお仕事だもの……!)
ロベールは突然、仮面をとるとオリヴィアのもとに跪く。
「オリヴィア、俺は君しか愛すつもりはない」
「と、いう設定ですね! ちゃんとわかってますから」
「違う。契約結婚のことだが……」
「安心してください。わたしも演技をがんばりますね」
「…………」
ここまでくるとロベールが不憫だった。
彼はオリヴィアを愛おしそうに見つめていた。
「オリヴィア……」
「……ロベール様?」
オリヴィアが首を傾げると、ロベールの頬が赤く染まっていく。
フッと視線を逸らしたロベールにオリヴィアは『わかった!』と言いたげに頷いた。
そしてロベールの頬にチュッというリップ音のあとに口付ける。
「──ッ!?」
「こんな感じで大丈夫ですか?」
オリヴィアは得意げに笑みを浮かべた。
ロベールはというたオリヴィアに口付けされた頬を押さえたまま動けない。
そのまま自分の席に戻っていったロベールは惚けている。
((((焦ったい……))))
この二人がどんな関係で、これからどんな結婚生活を過ごしていくのかわからないが、まだまだ波乱が起こることだけは間違いないだろう。
「はぁ…………幸せ!」
オリヴィアは紅茶を飲みつつ、幸せを噛み締めたのだった。
end
一旦ここで区切らせてください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!




