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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
四章 近づく距離

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④⑤


覆い被さる彼に名前を呼ばれたオリヴィアはどうすればいいか迷っていた。


(もう勝負が始まったのかしら……?)


拳を握るが、彼が何かを仕掛けてくる様子はない。



「気が変わった」


「……え?」


「一つだけすべての願いを叶える方法がある。知りたいか?」


「わかりますよ? ロベール様に勝てばいいんです!」



拳を握り、軽くパンチを繰り出したオリヴィアに対して、ロベールは首を動かして平然と避けていく。

そして手首をひとまとめにして、ベッドに縫い付けられるようにして動けなくなった。


だが、オリヴィアは余裕だった。

なぜならかれを押し返そうと思えばいくらでもできるからだ。



「この体勢から勝負を始めるのですか?」


「まだ俺が勝ったときの条件を決めてないだろう?」


「はっ……そうでした」



これは正々堂々の勝負なのだろう。

ロベールはオリヴィアを見下ろしつつ微笑んでいる。

彼が勝ったときの条件を決めてから、勝負を始めるのだろう。



「俺は君が欲しい」


「…………はい?」



オリヴィアは聞き返すように問いかけた。

しかしロベールは笑みを浮かべたままだ。

それに『君が欲しい』と言っているが、もうオリヴィアはロベールのものではないだろうか。

そもそも契約結婚とは、そういうことではないだろうかと思い、そのまま疑問をぶつける。



「もう結婚しているではありませんか」


「以前言ったことを撤回したい」


「……どういうことでしょうか?」



さっぱり意味がわからないではないため、オリヴィアは眉を寄せた。


(以前って、いつのことかしら……)


するとロベールは手首を拘束していた手を離す。

こちらを見つめながら、そっとオリヴィアの頬に指を滑らせた。



「オリヴィア、君にはずっとここにいてほしい」


「嫌ですけど」



オリヴィアは即答してしまった。

それには双子もエリーも緊張から体が強張っていく。

ロベールは不満そうにこちらを見ているが、オリヴィアの答えは決まっていた。



「だってわたしたちは一年だけの契約結婚ですよね?」


「…………。そのことだが……」


「それは契約違反にはならないのですか?」



そもそも、一年だけの契約結婚をするとオリヴィアに言ったのはロベールだ。

その代わりに援助をしてもらうという約束ではないだろうか。

オリヴィアもお金目的でロベールと結婚したはずだ。


(そもそも、ずっとここにいてほしいってどういう意味なのかしら)


いまいちロベールの言っていることが理解できなかった。



「どういう意味なのか説明してください」


「やはり一年では足りない」


「え……?」


「ディルムーン辺境伯の事業が軌道に乗るためには一年以上は必要だろう。それに俺が離れれば、またどうなるかわからないぞ?」



なんもなく丸め込まれているような気もするが、彼の言っていることにも一理ある。

父は今、ロベールの助言をもとに事業を順調に進めているようだ。



「それは勝負に勝てば……」


「負けたら?」



オリヴィアはグッと唇を噛んだ。

たしかにロベールは頭がいいため、負ける可能性もなくはない。



「いいか? いまから言うことをよく考えてみろ」


「は、はい!」


「オリヴィアがここにいることでディルムーン辺境伯たちも幸せになり続けて、柔らかい肉も好きなだけ食べられる。それだけでもここにいる価値はあるだろう?」


「たしかに……!」



オリヴィアはロベールの口車に乗せられていると気づかないまま、大きく頷いていた。



「なら、オリヴィアは俺のそばにいろ。いいな?」


「──はい、喜んで!」



オリヴィアの気合い十分な声が部屋中に響き渡った。

満足そうに微笑んだロベールの端正な顔立ちに釘付けになっていると……。



「それなら勝負をする必要もないな」


「…………ん?」



ロベールの願いが叶うことでオリヴィアの願いも自然に叶うため、勝負は必要ないということだろうか。



「ですが、せっかく準備したのに……!」


「オリヴィアを傷つけたくはない」


「わたしは丈夫ですから、少しくらいなら……っ」



そう言いかけたが、ロベールは大きく首を横に振った。



「今更だが、オリヴィアを大切にしたいんだ」


「へ…………?」


「今日から屋敷にいるときはここで眠る。いいか?」


「別に構いませんけど……」



ベッドがこんなに広いのだ。

ロベールとともに寝たとしても特に問題はないはずだ。

手合わせできないことに不満を抱きつつ、みんなが幸せになるならいいかと妥協していた。


(つまり…………? まぁ、いっか!)


考えるのが面倒になってしまい、オリヴィアは承諾するしかなかった。

ロベールがゴロリとベッドに寝転がった。

オリヴィアも彼のほうに向き、ベッドに倒れ込む。

彼は腕を伸ばしてオリヴィアの髪を巻き付けて、くるくると遊んでいた。

オリヴィアは彼の行動をしばらく見ていたが徐々に眠くなってくる。



「君は本当に鈍いんだな……」


「……んぅ?」



半分寝ていたオリヴィアは何かを言われた気がして瞼を開ける。

しかし眠っていいといいたげに優しく頭を撫でる大きな手のひら。

安心感にオリヴィアはスヤスヤと眠りについた。


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― 新着の感想 ―
ロベールの「俺は君が欲しい」にキュンとさせられ、畳み掛けるような告白。だけど、オリヴィアは理解できてなくて(*´ 艸`) オリヴィアが恋を理解する日を楽しみに待ってます☆
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