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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
四章 近づく距離

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④④


想像だけで大興奮のオリヴィアは、トロンととろけた瞳でロベールを見つめ返す。

彼のことなど目もくれずにあることを想像して悦に浸っていた。

ツーッと口端からよだれが伝いそうになり、こぼれないように舌ですくう。

唇を撫でるように舐めたことで、より扇情的になっていることにも、ロベールが食い入るようにこちらを見ていたことにもまったく気づかなかった。



「我慢できません……!」



次の瞬間、ロベールの体が離れた。

彼はこちらに背を向けて、口元を手のひらで押さえているようだ。


(もしかしてよだれが垂れそうなのがバレた!? それとも……匂ったとか?)


彼が見ていない間にゴシゴシと口元を拭った。

自分の匂いを嗅いでみるものの、石鹸のいい香りしかしない。



「どういうつもりだ……誘っているのか?」


「…………誘う?」



オリヴィアは言葉の意味を考えてみるものの勝負のことだと思い、大きく頷いた。



「もちろん誘ってますよ!」



オリヴィアは〝勝負〟にロベールを誘っていた。

そういう意味では間違えていない。

それを聞いたロベールは先ほどまで背を向けていたはずなのに、パッとこちらを向いた。

やはりほんのりと頬が赤くなっているような気がすると、オリヴィアは彼の額に手のひらを当てた。



「なんだか顔が赤いですね」


「……っ!」


「熱でもあるのでしょうか?」



自分の額にも手のひらを当ててみるが、特に変化はない。

ロベールの頬の赤みは熱が出たからではないようだ。

そっと手のひらを離すと、彼は先ほどよりも機嫌がよさそうに見えた。

とはいっても、ほとんど表情の変化はなくわずかな情報を拾い上げて、なんとなく予想しているだけだ。


(感情表現が乏しいからよくわからないけれど、喜んでいるのかしら)


まさかいつも不機嫌でオリヴィアを『俺に従え』と、言っていた人が、こんなにも柔らかい雰囲気になることがあるのかと驚くばかりだ。


ロベールは誤魔化すように咳払いをしつつ、話題を変えた。



「ゴホン……で、欲しいものは?」



なぜ何度もオリヴィアの好きなものを聞き出そうとするのか疑問ではあるが、一か八か言ってみようと唇を開く。



「わ、わたしが欲しいのは……」



ゴクリとオリヴィアの喉が鳴る。

思い出すのはあの香ばしい匂いと滴る油だ。



「肉、です……!」


「は…………?」


「お肉をお腹いっぱいに食べたいです」



バランスよく食事ができるのはもちろん幸せなことだ。

だが、テーブルマナーを気にすることなく、思いきりお肉にかぶりてけたら、どんなに幸せだろうと考えてしまう。



「夕食に出てくる牛肉を塊で食べられたら……なんて、えへへっ」



ロベールにとっては予想外の願いだったようだ。

表情が消えてしまった。

彼の反応を見る限り、よくなかったかもしれないとオリヴィアは慌てて説明するために口を開いた。



「ち、違うんです! あまりにも牛肉という存在がおいしすぎて感動したんですっ! それを塊で食べられたならどんなに幸せなのだろうと想像したらよだれが止まらなくって……!」



オリヴィアは必死に言い訳していた。

なぜならさっきまで嬉しそうだったロベールの顔から笑顔が消えていったからだ。

それを見て、やはり出過ぎた真似だったかもしれないと反省していた。



「やはり図々しいですよね……! いつもの量でも全然幸せなので大丈夫です。ごめんなさいっ」


「はぁ…………違う。逆だ」


「……逆?」



牛肉の反対は何かと必死に絞り出すものの、何も思いつかない。


(どういう意味……!?)


オリヴィアが戸惑っていると、ロベールはパチリと指を鳴らす。

すると扉の外からマルセルの声が聞こえた。



「オリヴィアのために、今すぐに牛を買い付けろ」


「ブッ……かしこ、まりました」



何故か笑い声が一瞬だけ聞こえたような気もするが、気のせいに違いない。

次に現れたアイナスにも彼は指示を出していく。

今度はシェフにステーキを用意しろと言っていたのだが、マルセル同様にロベールも声が震えていて笑っていたような気がした。


(も、もしかして願いを叶えてくれたの? こんなにすぐに?)


こんなにも早くステーキを食べられるのは感動だった。

すぐに対応してくれたロベールには感謝するばかりだ。



「ロベール様、ありがとうございますっ!」


「ここくらいなら今すぐにでも叶えることができる。もっとマシな願いはないのか? ふざけているなら……」


「嬉しい……お肉がお腹いっぱい食べられるなんて本当に夢みたい!」


「…………!」



ロベールは何かを言っていたが途中で言葉を止めた。

そして心底嬉しそうにするオリヴィアにわずなに目を見開く。

オリヴィアは両手のひらで口元を押さえながら、よだれが垂れないようにするのに必死だった。



「他には?」


「もう思いつきません」


「嘘だろう?」


「本当ですよ。今のこの生活に不満はありませんから」



オリヴィアは首を横に振りながら答えた。


するとロベールは突然、オリヴィアを押し倒す。

よだれを抑えることに必死だったオリヴィアは、大した抵抗もできないままベッドに倒れ込んだ。



「……ロベール様?」


「オリヴィア……」 


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― 新着の感想 ―
作者様、いつも楽しいお話をありがとうございます(*^^*) 今話は主人公のヤラカシが公爵様に可哀想過ぎて(〃>З<)━ッッ!!! (・∀・)イイ!!~ではないなwww と思いつつも感謝を込めて( 。・…
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