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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
三章 思惑

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③③ アリスside1


──アリスは去っていく二人の背中を見つめていた。


(侍女を連れてこなかったのは失敗ね。あの子たち、誰も使えないんだもの……)


苛立ちをぶつけるように、アリスはそばにあったカップを叩き割った。


(ロベール様はあんなふうに庇ったりしなかった。わたくしが今までで一番だった……こんなことは絶対に許されない)


彼が愛おしそうにオリヴィアに触れた表情が今も脳裏に焼き付いている。

幼い頃からずっとずっとロベールの一番はアリスだった。

それなのにオリヴィアが選ばれてしまった。


オリヴィア・ディルムーン

よりにもよって、英雄ディルムーン辺境伯の長女。

彼女は今まで表舞台に姿を現すことはなかった。


しかし英雄の血が欲しいと、ディルムーン辺境伯の妻のミリの生家から、なんとかコンタクトをとろうとするものの、ことごとく失敗していた。


その理由はディルムーン辺境伯に溺愛されているため。

領地の立て直しや事業を成功するために力を尽くしているといわれたためだ。

彼らは国を守るために戦ったため、貴族側からは何も言えなくなってしまう。

彼の兄であるペリエの隣国への血生臭い話もあり、誰も彼らと関わろうとするものはいなくなっていった。


(なんでよりにもよって彼女なの? 彼女以外だったら、お父様に言ったらすぐ潰せるのに……)


今までロベールに近づいてくる令嬢がいないわけではなかった。

関係を持つ前にすべてアリスが排除していたのだ。

レディズリー公爵家の名前はそれほど偉大なのだ。

三大公爵家はずっと国を支えてきた。

しかし今はディルムーン辺境伯家は同等、それ以上に力を持っているかもしれない。

だからこそ簡単に手出しすることができないのだ。


ロベールがディルムーン辺境伯領に向かったと無理やり聞き出したときも、すぐに父に訴えかけた。

いつもアリスのわがままをすべて叶えてくれる父でも、今回ばかりは無理だと言いきったのだ。

ディルムーン辺境伯が本気になれば、王家どころか国中を敵に回すことになるからと。


(わたくしは国中の人たちが敵になっても、ロベール様を愛しているのに……っ!)


ディルムーン辺境伯の娘、オリヴィアとロベールが結婚したことは王家と三大公爵家に知らされた。

父にそろそろ現実を見なさいと諭されたアリスは信じられない気分で、レディズリー公爵家を飛び出したのだ。


きっと訳を話せばロベールは助けてくれる。

今日はいつもアリスの邪魔をしてくる目障りな双子もいない。


アリスにだけ心を開いてくれていたあの頃のロベールに戻ってくれる日がいつかくるはずだ。

そのための努力は惜しまない。今までそうやって彼を愛してきたのに……。


(わたくしがロベール様のことを一番に想ってる! 彼のことを心から愛しているのにこんなのっておかしいわ!)


たかが一週間程度でアリスの居場所をすべて奪われてしまった。

それは十年近くロベールのそばにいて彼を見てきたアリスを侮辱するものだ。

彼の気持ちはそんな簡単に動くはずがないのだ。

アリスはロベールのすべてを受け入ることができる。


きっと何かの間違いで、こうなってしまったのだ。

でなければロベールがこんなことをするはずがない。

もしかしたらディルムーン辺境伯に脅されて、仕方なくオリヴィアと結婚したのかもしれない。


だったらロベールを救い出せるのはアリスしかいないではないか。



「あの女……ぶっ潰してやるわ」



それからアリスは動き出した。

父か兄に頼もうかと思ったが、今は公務で忙しいと屋敷から出てばかりで相手をしてもらえなかった。


(タイミング悪すぎるわ。お父様もお兄様も、わたしとロベール様とのことをもっと応援するべきでしょう!?)


二人はロベールとの結婚を強く望むアリスを全力で支えてはくれない。

こんなにも彼を必要としているのに、それが伝わらないことに苛立っていた。

『ロベールはアリスを大切にしてくれない』

『アリスにはもっと相応しい場所があるはずだ』

そう言われても、まったく納得はできなかった。


今までロベールのこと以外は、なんだってアリスの言うことを聞いてくれた。

なんでも、だ。


なのにどうしてロベールだけがダメなのか理解できなかった。

若くして公爵家の当主になった彼を、ずっとずっと影で支えてきたのはアリスだ。

それにエンバルト公爵邸に一日中滞在しても、彼は文句を言ったことはない。

今回『もう帰ったほうがいい』と、アリスのことを心配することはあっても拒絶されたことはなかった。


(わたくしはロベール様に愛されているの。それだけは間違いないんだから!)


だからアリス以外を妻にしたのは何かの間違いだろう。

少しの浮ついた気持ちくらい、理解してあげるつもりだ。

ロベールを心から愛しているアリスだからできること。

あの田舎貴族には絶対にロベールを幸せにできない……それだけは決定事項だ。


今回、アリスはオリヴィアに紅茶をかけてしまい、ロベールに見つかったてしまった。

そこでほんの少しだけは怒られてしまったが、またすぐに寂しくなってアリスを必要としてくれるはずだ。

そのうち飽きるに違いないと思っていた。


(今、わたくしが動くのにはリスクがあるわ。あぁ、そうだわ……いいことを思いついた)


彼が結婚相手を選ぶ際、数人は貴族の令嬢が紛れ込んでいた。

アリスに見つからないように平民に変装していたが、絶対に見逃さなかった。

あとで彼女たちを罰するつもりだ。


(わたくしのロベール様を狙うなんて、バカなやつらに教えてあげないといけないもの)


アリスは廊下に立って、その様子を見ていたが、一人だけ馬鹿みたいに派手な格好をして、大激怒して帰っていた令嬢がいた。


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