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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
三章 思惑

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③①


「や、やめ……!」



力技かと思いきや、意外なくすぐり攻撃を受けてオリヴィアは翻弄されていた。



「~~~っ!?」



このまま勝負が決まるわけにはいかないが、この格好が恥ずかしい。

とりあえずは彼優位な態勢をどうにかしなければと、ロベールをビンタしようと思いきり振り上げた。


──パシッ


オリヴィアの手を掴むロベールにギョッとする。

しかしここは無理やり押し込もうと、力をこめようとした瞬間だった。

オリヴィアの腕を掴んでいる手の甲に唇を寄せるロベール。

彼の瞳がこちらをじっと見つめて捉えて離さない。


唇が触れてしまいそうな距離にオリヴィアの心臓が高鳴っていく。

激しい鼓動が響いていた。

反対の手がオリヴィアの足を誘うように撫でた。


(このまま勝負がついてしまうの!? ロベール様に負けるということ?)


そんなのはディルムーン辺境伯の娘としてありえない。

オリヴィアがカッと目を見開いて、持ち前の怪力を利用して彼の手を振り払う。



「……ッ!」



あまりにも力が強かったため、ロベールが一瞬だけ怯んだのを見逃さなかった。

そのまま彼の体を押さえつけて、オリヴィアはロベールに馬乗りになる。

彼は大きく目を見開いていた。



「勝負は正々堂々とお願いいたします」



そう言った瞬間、ストンとドレスが下に落ちてしまう。

胸元が露わになったことで、ロベールを押さえていた手が離れた。

ロベールは上半身が起き上がったため、再び力勝負になるかと思いきや、ロベールはオリヴィアにシーツをかけた。



「勝負はしないのですか? するなら、すぐに着替えますが……」


「着替え? 一体、何の勝負をするつもりだ?」



ロベールはオリヴィアの発言に何かに違和感を覚えていたのだろう。

オリヴィアはシーツを体に巻きつけつつ首を傾げた。



「初夜とは肉体と肉体のぶつかり合い……なのですよね?」


「…………は?」


「お兄様がそう言っていたのです。武器なしで勝負をするということでしょう?」


「武器……」



ロベールはパチパチと何度か瞬きを繰り返している。

しかし次の瞬間、声を出して噴き出すように笑い出してしまった。



「くっ……ははっ」


「ど、どうして笑っているのですか!」


「肉体と肉体のっ、ぶつかり合い……くくっ、たしかにな」



これも余裕があるゆえなの笑みなのだろうか。

シーツを持ち上げながら、彼の様子を伺っていた。



「閨事を教えるものはいなかったのか?」


「…………ねや? 屋根ではなく?」


「ああ、そういうことか。よくわかった」



なぜか上機嫌になってしまったロベールはあっさりと引き下がった。



「勝負はしないのですか?」


「今はいい。それに正々堂々と勝負をしなければならないのだろう?」



ロベールの視線はオリヴィアのシーツを押さえている手に向かう。



「それはありがたくはありますが……」


「くくっ……」



何度も笑うのを堪える素振りを見せるロベールは仮面を付け直した。



「エリーを呼んでくる。少し待ってろ」


「あっ……はい」



ロベールは何事もなかったかのように部屋の外へ出た。

部屋の外にはマルセルとアイナスが待機していたようだ。

しかしいつも完璧な彼らは腰を折りながらブルブルと震えているではないか。

アイナスに関しては壁に寄りかかって震えていた。

足元も覚束ない様子に心配になり声をかけようとするものの、自分の今の状況を思い出して踏みとどまる。


(彼らは勝負を見届けようとしていたのかしら。彼らの腹部が痛くなったから中断したの?)


扉が閉じる前、振り向いたロベールの口角が上がっていた。


(次は絶対に負けないということかしら……いい度胸じゃない)


ポツンと取り残されたオリヴィアは自分も負けないと気合いを入れていた。

しかし予想外の出来事ばかりで心が揺さぶられたのも事実だ。



「何なのよ、もう……」



オリヴィアはシーツに包まりつつ、赤くなった顔を隠した。


(……あんなに男性と近づいたのは初めてだわ。よくわからないけど、すごくいい匂いがした。あれが貴族なのね……!)


言葉にはできないが、今まで出会ってきた男性とは違うことだけは確かだ。

なぜか顔が赤くなるし、恥ずかしくてたまらない。


(いけない……! こんな気持ちだと初夜の勝負に勝てないわ!)


ロベールの唇が自分の唇と触れてしまいそうになっていた。

唇を押さえながらオリヴィアは自分の気持ちに困惑していたのだった。


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