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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
三章 思惑

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24/34

②④

ロベールに拒絶されていたような気もするが、当然のようにここに居座るアリスの神経の図太さにオリヴィアは驚かされた。


(あれ……? もしかして聞こえていなかったの? そんなわけないよね)


それとも貴族の令嬢は自己中心的なものなのだろうか。

考えているとアリスはオリヴィアのもとへ。

険しい表情でオリヴィアを値踏みするような視線を送ってくるではないか。

講師に視線を送ると、彼女も戸惑っているようだ。



「オリヴィア様、ごきげんよう」


「ご、ごきげんよう、アリス様」


「あなたとは、ゆっくりとお話ししたいと思っていたのよ」



アリスは食い気味に体を寄せてからオリヴィアの手を握った。



「オリヴィア様、今日からよろしくお願いしますね」


「アリス様……」


「一緒にがんばりましょうね?」


「どういうことでしょうか」



どうして彼女がオリヴィアと一緒にがんばるのか、その理由がわからない。



「あなたが慣れないことばかりだろうから、わたくしが少しでもあなたの力になりたいと申し出たの。もちろんここの屋敷の人たちも講師の方も快く応じてくれたわ」



アリスは口角を上げて、形だけの笑みを浮かべた。

つまり彼らを脅して、無理やり居座るつもりらしい。


アリスの笑顔を見て、オリヴィアも上辺だけの笑みを浮かべた。

彼女が何を企んでいるかはわからないが、オリヴィアは自分のやるべきことをやるだけだ。

講師は浮かない顔をしつつ、オリヴィアに質問をしていく。


半分ほど答えられたものの、ほとんどは知らないことばかりだ。

最低限は理解することができていた。

そこは人見知りではあったが、いろいろと教えてくれた母に感謝するばかりだ。

とはいっても、アリスの反応を見る限りはいい状況ではないことが確かだ。


答えられないと隣にいるアリスから『こんなこともわからないの?』と、軽蔑した眼差しが送られる。

それがあまりにも癪に触るため、彼女を無視しつつ学ぼうと思いきや、講師が何か言う前にアリスが答えてしまう。


これは邪魔するつもりではなくて、自分の方が上だと見せつけることが目的だとわかる。

このままアリスに煽られて感情的になってしまえば相手の思う壺だろう。



「なら、アリス様が今度から見本を見せてください」


「はい……?」


「令嬢として完璧なアリス様がそばにいて指導してくださるなら嬉しいですから」



アリスの口端がぴくりと動いた。

一方的にマウントをとるつもりが、好意として受け止られてしまえば逃げられない。

それにアリスを完璧な令嬢と持ち上げたのだ。

彼女は完璧に振る舞い、間違えるわけにはいかないだろう。

少なくともオリヴィアの前では。


(不利な状況を利用する……お父様の教えが役に立つなんてね)


これでオリヴィアを馬鹿にするような発言をしたからこそ、失敗は許されない。

彼女は令嬢としてオリヴィアより優れている。

それに講師の顔も潰さずに済むだろう。

緊張がほぐれた講師にいろいろと教わりつつ、オリヴィアは有意義な時間を過ごしていた。


(まさかこの年になって、ちゃんとした教育を受けられるなんてありがたいわ。しかも無料で……!)


コルセットの苦痛も、アリスの存在も忘れてオリヴィアは勉強に夢中になっていた。

こんなにも幸せな時間があっていいのだろうか。

今までお金がないからと諦めていたオリヴィアだが、新しい知識を得られなら喜んで受けよう。


(一年後、離縁した時に少しでもお父様やお母様の力になりたい。このチャンスを逃してはダメよね……!)


あっという間に時が過ぎてしまい、勉強の時間は終わってしまった。

アリスがいてくれることもあり、完璧な目標と、すぐに実践して習得できることも嬉しいではないか。

アリスはわかりやすいくらい不機嫌になっていく。


講師と楽しく談笑しつつ、次までにどこを学べばいいか教わっていた。



「オリヴィア様は覚えがいいですね」


「わたしはまだまだですから。アリス様も見本をみせていただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします」


「……ッ!」



それを聞いたアリスからギリッと歯を食いしばる音が漏れた。

しかし表情では平静を保っているのだから恐ろしい。

彼女は表に表情を出さないように徹底的に訓練しているのかもしれない。


授業が終わり、講師を送り出すと急にお腹が空いてくる。


(さっきパンとお菓子を食べ損ねたから……)


コルセットのおかげか、空腹感はなかったものの頭を使ったことでさらに糖分を欲しているような気がした。


(エリーにさっきの軽食を用意してもらわないと……!)


そう思ったオリヴィアが部屋に戻ろうとした時だ。

親しげに近寄るアリスが、オリヴィアを引き止めるように手を掴んだ。

手首は強く握られて、長く伸びた爪が食い込んでいた。



「わたくしオリヴィア様と仲良くなりたいの。このあと一緒にお茶でもいかがかしら?」


「えぇー……」



露骨に嫌そうな顔をすると、アリスの眉がぴくりと動いた。

額には青筋が浮かび、かなり苛立っていることがわかる。


どうやらこのまま部屋に帰してくれることはないようだ。

周囲を見るが、やはり誰もアリスに意見できるものはいないらしい。

となると、オリヴィアに残された道は一つだけだ。


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