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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
二章 契約結婚

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21/33

②①

ハッとして振り返ると、アリスがオリヴィアを鋭く睨みつけていた。

気にするなと言いたげに、こちらを見るロベールと目が合う。

頷いたオリヴィアはそのまま豪華絢爛な屋敷の中に足を踏み入れた。


深々と頭をかけた使用人を見て、オリヴィアはある違和感に気づく。

眼帯をしていたり、大きな傷があったり片腕や片足を動かしづらそうな人たちが多いのだ。


(怪我をしている人たちを迎えているのかしら……)


そして自室に案内されるかと思いきや、ロベールはどんどんと薄暗い場所へと向かう。

だんだんと肌寒むくなってくる地下の階段を降りていく途中で我慢できずに声を上げた。



「ロ、ロベール様、一体どこに……?」


「…………」



何も答えないロベールにオリヴィアは、腕を引かれて彼と共に地下を進んでいく。


(ま、まさかわたしが暮らす場所は地下……!?)


鼻を掠める腐敗臭に顔を顰めた。

やはり大金をもらう代償はあったのだ。


だが今になってオリヴィアが抵抗するのは違うだろう。

どんなことがあっても耐えなければいけない。

思えば、ディルムーン辺境伯家のためにあそこまでよくしてくれたのは、こうしてオリヴィアを好き放題しても文句を言われないためにするためだろうか。


(一年、地下に隠れて生活しろと!? それともサンドバッグに? 囚人の世話係をすればいいの?)


オリヴィアの頭の中にはさまざまな考えが巡っていた。


(だけど……もう戻れないのね)


幸せそうな母と父の顔が思い浮かぶ。

牢の番人をしていたのか影蜘蛛たちが、ロベールに深々と頭を下げていた。

覚悟を決めたオリヴィアだが、隣を歩いていたロベールの足が止まる。



「父上、俺はオリヴィア・ディルムーンと結婚する」


「ちっ……!?」



ロベールが『父上』と発言したことでオリヴィアは前を見た。

暗がりでよく見えないが、牢の奥では誰かが話している。

髪も伸びきっていて、体も薄汚れていて囚人のように見えるが、彼は確かに牢に向かって父上と言った。



「ほう……まさかディルムーン辺境伯家の令嬢を連れてくるとはな」



その声は掠れていて張りがない。

髪に埋もれて見えないが、しっかりとスカイブルーの瞳がこちらをまっすぐに見据えていた。



「俺はあなたとは違う」


「……どうだろうな」



意味深な言葉を残して、ロベールは踵を返す。

そのまま動けずにいたオリヴィアの腕を引く。

しかしロベールに腕を掴まれて引かれたことで出口へと向かった。

もう一度振り返ると、その口は歪んで弧を描いていたような気がした。



「ど、どうして……」


「君に言う必要があるのか?」



拒絶するロベールに、これ以上何を言えばいいかわからなかった。

牢の中にいたのは、おそらく前エンバルト公爵なのだろう。


(たしかに一年しかここにいないわたしが深入りする必要はない……彼からの援助を受けている間にお父様にはディルムーン辺境伯家を立て直してもらわないと)


ロベールの言う通り、深入りすることはやめたほうがよさそうだ。



「ありません。余計なことはいたしませんから」


「……!」



オリヴィアは淡々と自分がやるべきことをこなせばいい。



「……。屋敷を案内する」


「はい、ありがとうございます」



それに自分が地下にいく必要はないと安心して息を吐き出した。

ロベールに屋敷を案内されながら思ったことはただ一つ。


(静かすぎて落ち着かないわ。お腹の音が鳴ったらバレそう)


誰も音を立てないため、静寂が居心地が悪くて仕方ない。


──グウウウゥッ!


そして鳴らないでと思っているほどに音を立てるお腹。

恥ずかしさから顔を真っ赤にしていると、ロベールが「あとで食事を用意する」と淡々と告げた。

馬車の中で寝てばかりいたせいか、サンドイッチやパンばかりだった。

それ自体はありがたいことだし、パンが食べられるだけで嬉しいのだが、オリヴィアが肉が恋しくて仕方なかった。


忙しいロベールは、どうやらこのまま案内を続けるようだ。

今度は地下ではなく、普通に部屋を案内してくれていた。

時折、どこかから痛々しい悲鳴が聞こえてくるのだが気にしなくていいの一点張り。

なるべく言われた通り、無視するが屋敷が静まり返っているせいで余計に気になってしまう。


オリヴィアがなんとか気を逸らそうと頑張っていると、屋敷の奥に一際大きな扉があった。


(もしかして食事が……!?)


この奥にダイニングがあるかもしれないとワクワクしていたオリヴィアだったが、部屋には大きなベッドやいかにも高級そうな家具。

猫脚のソファなど、広く綺麗な部屋や美しく艶々な家具が並べられていたことに感動していた。

食事だと思っていたオリヴィアにとっては、部屋を見せられたとしても腹は満たされない。


しかし次の言葉に驚くことになる。



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