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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
二章 契約結婚

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18/32

①⑧

オリヴィアの頭の中にある夫婦像をぼんやりと思い出す。

父と母のようなやや暴力的な夫婦関係は一般的ではないことは理解していた。

しかし辺境伯領では土地柄なのか、男性も強いがさらに女性が強い。

貴族の紳士を体現したロベールを前にして、オリヴィアはドキドキするというよりは戸惑いを感じていた。



「わ、わかってます!」



荷物をまとめるオリヴィアは乱暴に武器を詰め込んでから応接室へと戻った。

公爵領に向かう前、ベッドに横になる母に挨拶をする。

大号泣する母はロベールたちに人見知りしつつ、オリヴィアを心配している。



「オリヴィア、手紙を書いてちょうだい。不甲斐ない親でごめんなさい」



耳元で呟かれる言葉、次々と目からは涙が溢れていく。

母が咳き込んでしまい、オリヴィアが背を撫でていると父が紙を手に嬉しそうに事業の説明を始めた。

ピリッとした緊張感にオリヴィアは母を止めようと手を伸ばそうたしたが遅かった。


──ドカッ!


母の拳が父の頬にクリーンヒットした。

父が宙に舞ったことで、ロベールたちは大きく目を見開いている。



「オリヴィアには……っ、わたくしのように幸せな結婚をしてほしかったのに」


「……ミリッ」



母は再び泣き出してしまい、父は再び頬を押さえつつも母の言葉に感動しているようだ。

何も説明はしていないのに、母はこれが契約結婚だと察しているように思えた。

細腕の母が父を吹っ飛ばしたことが信じられないのだろう。

ロベールや影蜘蛛たちは動けずにいるようだ。

それか調べた情報と母が違いすぎたため、戸惑っているのかもしれない。



「さ、さぁ、行きましょう! お母様、手紙を書きますから!」



オリヴィアはアイナスとロベールを部屋から出るように促した。

父とアイコンタクトをもり、母を心配させないように微笑みつつも廊下へと向かう。

これ以上ここにとどまれば、またいつもの喧嘩が始まってしまう。

それを彼らの前で見せるわけにはいかない。


ロベールたちも特に抵抗することなく歩き出した。

オリヴィアはディルムーン辺境伯に残る侍女や執事、シェフたちに深々と頭を下げながら公爵家の馬車へ。

ほとんど何も入っていない荷物はアイナスに預けて、馬車の前へ。

ロベールがエスコートするために手を伸ばした。


(この手を掴んだらもう戻れないわ……!)


緊張しつつも彼の手を掴もうとした時だ。

馬車を引く立派な馬に釘付けになっていると、遠くから聞き覚えのある鳴き声と足音が響く。



「──ジョセフィーヌッ!?」



ジョセフィーヌがこちらに全力で駆け抜けてくる姿が見えた。

彼女の狙いは間違いなくアイナスで、荷物を持った彼に突撃していく。

オリヴィアはロベールから手を離して、アイナスを庇おうと手を伸ばす。



「アイナスさん、危ないっ!」



勢いよく突っ込んできたジョセフィーヌは急ブレーキをかけて、彼の前でぺこりと頭を下げた。

そのまま撫でろと言わんばかりに顔を擦りつけている。

アイナスがジョセフィーヌを宥めようとしているが、まるでこのまま行くのを許さないと言わんばかりだ。


(ジョセフィーヌは一度決めたらなかなか動かないのよね……!)


ジョセフィーヌはオリヴィアでなく、アイナスにベッタリである。

周りに隠れていた影蜘蛛たちが、なんとかアイナスからジョセフィーヌを引き剥がそうとするが、ジョセフィーヌは容赦なく彼らを蹴り飛ばそうとするためうまくはいかない。



「ジョセフィーヌ、いい加減に……っ」



オリヴィアもどうにかジョセフィーヌを落ち着かせようと奮闘していた。

しかしまったく動かずに振り払われてしまった。

暴れるジョセフィーヌをじっと見ていたロベールが信じられないことを口にする。



「その馬も連れて行け」


「ジョセフィーヌをですか!?」


「代わりの馬を置いておく。ディルムーン辺境伯に知らせてこい」


「えっ……あのっ」


「予定が詰まっているんだ」



どうやらジョセフィーヌとともに公爵家に向かうようだ。

手を引かれたオリヴィアは、少年の姿のロベールに軽々と抱えられてしまう。


(まさか……これがお姫様抱っこ!?)


物語で見たようなお姫様になれて感動すると思いきや、体格差に違和感しかなく眉を顰める。

オリヴィアの微妙な反応すらロベールは楽しんでいるように思えた。

そのまま馬車を乗せられたのだが、なぜかオリヴィアの隣に座るロベールに疑問を持つ。

二人の距離が近いからだ。


(彼がなにを考えているのか、まったくわからないわ。これは契約結婚なはずなのに……)


彼は勝手に潔癖なような印象を受けたが、なぜだかわからないがピタリと体がくっついている。



「あの、ロベール様」


「なんだ?」


「前の席が空いていますけれど……」


「見ればわかる」



オリヴィアは少しだけ苛立つが、ロベールは当然のように答えた。

そのまま静寂が訪れたが、このままでは彼が気になってしまい長旅を楽しめない。

目を閉じて眠ろうとしているロベールを起こすように咳払いしたオリヴィアは笑顔で問いかける。



「どうしてわざわざ隣に座るのでしょうか?」



ロベールは首を傾げて当然のように言った。


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