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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
二章 契約結婚

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14/33

①④


「そもそも娼館は……ゴホン、いややめておこう」



結局は父は何も教えてはくれなかった。

オリヴィアは今更ではあるが娼館というものがふんわりとしか理解できていない。



「まぁ、つまりだな。オリヴィアは結婚相手を探していたエンバルト公爵に見染められたということだ」


「見染められた? ありえません」


「…………だろうな」



ロベールはそんな雰囲気を一切出していなかった。

娼館の面接だと勘違いしたままでいられるほどに業務的で淡々としていたように思う。

それよりも試されていたという感覚には近いのかもしれない。



「それにこの破格の条件だ。この結婚で相当生き残ること自体が大変なのではないか?」


「生き残る……? 公爵家ですよね?」



ここでオリヴィアは、エンバルト公爵家について初めて詳しく聞くことになる。


(もしかして強い女性を探していたということ?)


娼館で働くと思っていたオリヴィアだが、その認識を改めなければならない。

父が言うには、これは条件付きの契約結婚だ。

ディルムーン辺境伯に金銭的援助をする代わりに、エンバルト公爵家で生き残ればいいという試練なのではないだろうか。

それはオリヴィアにとって娼館で働き、奉仕するよりもずっといい。

それも一年、耐えるだけで大金が手に入る。

さすがに一年だけとは父の手紙には書いていなかったようだ。



「お父様、わたしはエンバルト公爵家に嫁ぎます」


「だが……!」


「ディルムーン辺境伯を、お母様を救うにはそれしかありませんから!」


「…………オリヴィア、すまない」



父は申し訳なさそうにしている。

それに継続的な援助で失敗続きの事業もうまくいくかもしれない。

望みは薄いかもしれないが、これに賭けるしかないではないか。



「どんなことがあっても結婚生活に耐えてみせますから!」



その後、父の応接室に向かい、お金の使い道をじっくりと考えていた。

オリヴィアの希望は母の体調を第一に考えてほしいことだ。

父も今回ばかりは金の使い道に慎重になっているようだ。


それを話していると、ディルムーン侯爵邸の門に見知らぬ馬車が停まっていた。


豪華な馬車から降りてくる仮面をつけたロベールは、圧倒的オーラを発しているではないか。

数日前、オリヴィアと会ったときとは違う姿形をしている。

今回は前回の巨漢の中年男性とはまったく別で少年の姿で現れた。


(あのロベールって人……関節はどうなっているのかしら)


ロベールがどうやって骨格を変えているのか想像もできないが、こうして見目を変えているのは何か意味があるのだろう。


やはりあの巨漢の姿は偽物だったようだ。

というより、何が本当で何が偽物なのかはオリヴィアにはまだわからない。

彼を判別できる要素としては髪色と仮面くらいだろうか。

服装まで完璧に合わせていて、仮面をしていても美少年だとわかる。

オリヴィアは慌てて父とロベールを迎えるために玄関に走った。


(というより、もう来てしまったの……!?)


たしかに迎えに行くと言っていたが、意外にも早い到着に驚いていた。

どうやら無意識ではあったがジョセフィーヌといつもより時間をかけて領に帰ったことが原因のようだ。

父は急に現れたロベールに対応するためにジャケットを探していた。


母が体調を崩しオリヴィアが邸を開けていたことで、すごい状態になっていた。

ところどころに父が頑張ろうとした形跡はあるものの、物が散乱していた。

いつもならかろうじて整えてある廊下や応接室もひどいことになっているのかもしれない。

この状態をロベールに見られるわけにはいかないのだろう。


だが、ロベールはこの状態を気にすることはなかった。

まるで初めから知っていたといわんばかりの対応に驚くばかりだ。


父と挨拶をかわしたロベールと、隣には天使のように微笑んでいるアイナスの姿があった。

そんなアイナスが来た雰囲気を察知したのか、ジョセフィーヌが扉を蹴破って入ってくる。



「久しぶりですね、ジョセフィーヌさん」



ジョセフィーヌは大喜びでアイナスに擦り寄っているではないか。

アイナスは平然とジョセフィーヌを撫でているが、壊れた扉からは冷たい風が吹き込んでいた。

それからおいしいご飯を持ってこなかったオリヴィアには唾を吐きかけていた。



「思った以上にひどいな」



ロベールのその言葉に父もオリヴィアも何も返すことができなかった。

彼は近くにあった書類をペラペラとめくって確認している。



「ディルムーン辺境伯、こちらは……?」


「あ、新しい事業を立ち上げようと……」


「なるほど、これでは成功する確率は低いですね」


「「……!?」」



当然のようにそう言ったロベールに父は驚愕していた。

オリヴィアは父が事業に失敗すると言われたことではなく、成功率が低いと書類を見ただけで言いきったことにびっくりしたのだ。



「まず辺境という場所でこれは不可能。流通に時間がかかるのも問題です」


「た、たしかに……!」


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