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札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~  作者: やきいもほくほく
一章 札束ビンタ

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10/32

①⓪ ロベールside2

そんな復讐に巻き込む女は、利害関係が一致していたほうがいいと思っていた。

そのほうが心が傷まないからだ。

だからこそ金を積んで妻を選ぼうと思っていた。

そうすれば最悪、亡き者にしても惜しくはない。


金目的の結婚ならば、ロベールを裏切ることもあるだろう。

ただでさえエンバルト公爵家に嫁ごうと思う令嬢などいない。

好き好んでロベールの近くにいて嫁ぎたいと思っているのは、アリスのような余ほどの物好きくらいだ。


エンバルト公爵家に大体が訳ありの令嬢ばかりだ。

毎回、売られるようにして嫁いでくる。

そして跡継ぎを選ぶ際に、振るい落とされるのだから血筋など関係ない。

亡くなれば次が選ばれる。

誰か一人を愛し抜くというロマンス小説のような展開などエンバルト公爵家には不要だった。

当主の血が混じる強い個体さえいればいい。

より強いものが生き残るように作られている制度のようなものだ。


今回、ロベールは結婚相手を大々的に呼び込んでエンバルト公爵家にふさわしい嫁選びが始まった。

血筋も関係なく大金を積むとわかれば多少のリスクがあっても女たちがわらわらと集まってくる。

それには失笑するしかなかった。


けれどプライドだけは高く、すぐに泣き出すか怒り出してしまう。

見た目だけで判断して踵をかえすものもいた。


中には上から目線で嫁いでやると意気込んできた貴族の令嬢もいたが、ロベールの容姿や発言で怒り帰っていった。

それがサンドラ・グミーダだった。


(……グミーダ伯爵家もそろそろ限界か)


裏事情を知っているロベールは彼女がここに来た背景が想像できた。

本当は子どもさえ産めるならどんな人物でも構わない。

そう言い聞かせていたが、子どもの頃の自分が袖を引くように引き止めてくる。


どうせ死ぬのだから誰でもいいという思いと、できるならこれ以上自分のような不幸な子どもを増やしたくないという思いがせめぎ合っていた。

幸せな結婚を夢見ているわけではないけれど、幸せでありたかったという気持ちは消えはしない。


(俺は愚かなのだろうか……運命に抗うことなど不可能とでも?)


そう思うと笑いが込み上げてくる。

自分で矛盾していることをしているのはわかっていた。

こんなことをしても悪評を広げるだけで意味がないこともだ。


だけど覚悟を持って自分から手を伸ばして欲しかった。

なるべく生きてほしいと思ってしまうのは汚いエゴなのだろう。


何百人彼女たちを煽るだけ煽り選別していくが、正直なところ理想は理想でしかないと見せつけられているようだった。

やはり相応しい相手は見つからないと思っていると、突然現れたのはこの場にそぐわない格好をした快活そうな少女だった。

興味深そうに辺りを見回して、望んでここに来たのかも疑わしい。

迷い込んでしまった……そんな感覚さえも覚えた。


そして彼女は何もかもが規格外だった。

一つ目の違和感はマルセルとアイナスが双子だとすぐに気づいたこと。

それだけでも驚きなのに、ロベールに向ける視線にも違和感を覚えた。

今までは明らかな嫌悪感を全面に出すか、それを隠すために苦笑いを浮かべるかどちらかだ。

なのにオリヴィアは不思議そうに首を傾げるばかりだ。


今までのように煽ってみるものの、ところどころ会話が噛み合っていない。

明らかにペースを乱されている。


わかるのは金に困っているもいうことだけだ。

しかし理不尽な命令を繰り返していると、その顔はだんだんと険しくなっていく。


一年、生き残ればいい。そうすれば解放するつもりでいた。

それが互いのためだし、子が成せないとわかれば祖父も納得せざるを得ないと思っていた。

札束でビンタしたのも、彼女にサインするように追い立てたのも、もしかして……そう思ったからだ。


だが、書類にサインさせてから驚愕した。

まさかディルムーン辺境伯の娘だとは思わなかったからだ。


表舞台には一切出てこない謎の令嬢。

兄は隣国へ留学していることは知っていたが、興味すら持ったことがなかった。


これ以上ないほどのいい人物を手に入れられたと思った。

王家の血筋を引き、英雄と呼ばれるディルムーン辺境伯の娘だ。

ロベールは彼女を〝妻〟として迎え入れることを決めた。

しかし彼女はなぜか驚いている。

まるで自分の価値をわかっていないかのようだ。


(自分の足でここに来たはずだ。金欲しさにここに来たわけではないのか?)


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