在り来たりの朝?
薄らいでいた意識は鳥の囀り、柔らかな朝日により目を覚ます。
ぼんやりと見開いた先に一番に目に入るのは。
見知らぬ天井。
在り来たりの感想を在り来たりのシチュエーションで抱いてしまうのは、それだけその言葉が的を得ているということだろう。
思考の巡りの遅さに体も心も微睡んでいることを何となく自覚しつつ、あくびを漏らしながら起き上がる。
多数はまだ寝ているようだが、数人は起きているようで部屋を物色していた。
自分も起きて何かするかと思って体を動かそうとすると一気に冬の寒さが身を引き締めて意識が覚醒する。何時もなら布団にでもくるまっていたいが異世界と認識がそうはさせてくれなかった。
体を擦りながら、毛布を軽く畳んで枕の上に置いてから、起きている皆のところへいく。
起きていたのは五人であり、皇さんと宿木くんがソファーに座りなからテーブルに紙とペンを持って何かを話している様子。二人とも何気ない様子で、今後の予定を話しているようだ。
この世界で諦めずに元の世界に帰還するために何をするべきかを話し合っている。そんな二人を静かに見守っているのは山住 狼華さん。
特に会話に参加するようなことはないが話を聞いている見たいで、たまに頷いている。それを見て、自分も後で話を聞こうと思いつつ。
部屋を物色している残りの二人である幼馴染みの緑朗と風音のもとへといって挨拶をする。
「二人とも、おはよう」
二人はこちらへと振り返り、挨拶を返してくれる。
「ああ、起きたか信勇」
「おはようございます、信勇くん」
緑朗は何時もと変わらない笑顔であるが、風音は少し浮かれない顔。
やはり、異世界に転移したことにどうしたらいいのか分からないのだろう。それもよく知らない人が多く。このクラスは一年半以上を共にしているために疎外感はつきまとう。
人見知りではないが、友達が多いタイプでもない。社交性が低いわけでもないが高いわけでもないから、なれて交じるまで大変精神的に辛く感じてしまうかもしれない。内のクラスに限っていじめなどは考えられないけれど、空回りしてしまうかもな。
まあ一番の問題は風音よりも遍のほうだが、そちらは後回し。
て、言うか。遍はどうし……まあ、寝ているか。
一応確認だけはしとくか。
「一応だけど、遍はまだ寝ているの?」
「ぐっすりと寝ていますよ、遍ちゃんは……でも皆さん精神的に疲れていた様子なのでぐっすりと寝ていますので、遍ちゃんにかしても何時ものと言えるかは分からないですね」
「まあ、遍が寝坊するのは何時ものことだろ? 基本的に時間厳守なのに寝坊だけは治らないという閉まらないのが遍だろ?」
「まあ何時もどうりか、それにいま起きているのが自分を含めて六人だけだからな」
二人の言葉に同感を示しつつ、風音の方へ視線を移す。顔色は悪くはないがその浮かれなさを見ては、あまり寝ていないことが分かる。
心配ごとで色々と考え込んであまり寝ていなくて切り替えがうまくいっていないのだろう。
ここは幼馴染みしかり親友しかりお兄ちゃんしかりと、気を反らしてやるのがお兄ちゃんという存在だろう。
「風音、あまり寝ていないだろ」
「うっ……そんな、ことはないです。少し皆より早く起きてしまいましたが充分寝ました」
「はぁ、別に隠さなくてもいいんだよ、風音。色々と考え込んでしまうのは仕方ない、遍はあれだが、寝れなくてもしかないし強がりたい気持ちも分かるが……別に俺や緑朗の前で隠す必要はない。だからまあ少しでもいいから寝とけ、なっ緑朗」
「そうだな、寝れていないなら寝た方がいいだろうしな今日は特に」
緑朗と二人で寝ろと言われては、嘘ついて罰が悪いのか。
「うっ」
少しうねるような声を上げて落ち込んでいるようで顔を下に向けて、反省しているのを感じる。べつに怒っているわけではないから、そこまで思う必要はない。
ただ風音は辛いことや苦しいことなどを思い詰めて溜め込んでしまうタイプ。それを吐き出せるようにしてやらないと、この異世界じゃどうなるか分からない。
いつまでも下を向いている妹を元気にさせよう。
「まあ、べつに怒っているわけじゃないしそんな落ち込むなよ風音。それとも一人で寝れないなら、膝枕でもしてやろうか?」
からかうように昔のことをいじりつついえば、恥ずかしがるにしろ怒るにしろ嫌がるにしろ、気分は変わるだろう。
と思って風音をよく見れば、こちらの顔をじっと見てほんのりと頬を赤らめている。
「信勇くん、本当に膝枕してくれるですか?」
「え? ああ、ままいいけど? えっ? しては欲しいの? なんか羞恥心とかは? 一応クラスメイトがいっぱいいるんだけど?」
「えっ……はい、わかってますわかってますからね信勇くん」
何を分かっているのがこちらは分からないが、目をつぶって頭を傾けさせる、ああ悩んでいる。すこし悩んでいる、いや普通に悩んでいる、結構悩んでいるな。
遍ならこんなこと言ったら怒るているだろうが、風音は少し甘えん坊のところがあるから普通に乗ってくるか……これは膝枕させたら自分もダメージ食らうのではないか、クラスメイトのからかいで。特に緑朗と遍の二人に。
まだ他に起きている人はいないが、そろそろ皆起きて来ても仕方ないだろう。
緑朗のほうを見てみれば何時も通りの笑顔知っていたよ。おまえは助けてくれないと。これは自業自得だけどね!
決まったのか、風音は目を開いて少しいい淀みながら言葉をまつ。ここで風音の要求を否定しては、今後相談はしてくれなくなるかもしれない。だから、何でも受けいれられるような心構えで挑む。
「し、信勇くん、膝枕はあれですけど、手を握ってもいいですか……それと肩もお借りしても……」
おお、これは耐えたか。耐え抜いたのか。さすがに風音も皆の前で膝枕のまま寝るののは恥ずかしいようだ。
それならと快く受け入れる。
「大丈夫だぞ、ソファーがあるところにいくか」
「は、はい」
顔を少しうつむかせ、髪からて出ている耳がすこし赤らんでいるのを見えたが気のせいだとしつつ、チラリと緑朗を見れば愉しそうな顔をしている。まるでこれから面白いことが起きるのを知っているかのように。
自分達以外の起きている三人である山住さんや皇さん、宿木くんが話しているソファーに自分達も座る。
風音が寝ているの最中に色々と聞きたいこともあるからちょうどよい。
風音が自分の右に座ったので右手を差し出し、右肩もいつでももたれ掛かれる準備をしてまつ。
差し出した右手は中々握られず、寝ようともしない。風音をじっとした目を向ければ、急ぐように手を握る。
ああ、大きくなったな。もっと小さかったイメージがあったが昔のそれとは違って優しい手である。
中学生になってから手を握ることなんてなかったが、こんなになんか恥ずかしいものだったか。
風音の手はひんやりとしたイメージもあったが。暖かい、いや熱いような気もしてきた。
なぜかドキドキとした気持ちを抱いている。それを誤魔化すように咳払いをする。
ただそっと肩に、というか腕にもたれ掛かった風音の頭に。視線を向ける。
綺麗な淡い茶色髪に何時もは長い髪を団子状にして纏めているが解かれている綺麗な髪。そして赤面している顔を見てしまえば。
誤魔化しなど通じなくこちらも赤面してしまう。
だけどそれも長くは続くことはなかった。
「すーすー」
隣から寝息が聞こえて来て、安らかにただ安心した寝顔を見て自然と微笑んでしまう。
「ごほん、ごほん」
咳払いをいきなりされてびくりとして、咳払いをした人の方を見てみればこちらをジト目で見てくる皇さんだった。
先の反応を一部始終見られていたことに恥ずかしさを覚える。何がギリ助かった、だ。全然助かってない。膝枕よりも恥ずかしかったかもしれない。
初々しい恋人同士のいちゃつきを見せたようで恥ずかすぎる。
ていうかそんな目で見ないで、なんか喋ってよ。
そんなこともありつつ、皇さんと宿木くん、あと緑朗を交えて軽く今後のことを話していると続々と皆も起き出して。
皆に自分と風音の状態を見られ、生易しい目で見られるという辱しめ受けつつ。
最後に起きたのは遍であった。




