在り来たりの会議?
質疑応答はその後も続いていき、夜も深まった頃には終わり。そして静けさが寂しさともに寒気を引き連れてきた。
時間的に一、二時間の質疑応答。皇さんと宿木くんの二人がテニアィヌアさんとペアナクェルさんに質問して、それを答えてもらっての繰り返しであったが。そのお陰で、だいぶこの世界と自分達のいた世界の差異を認識できた気がする。
差を理解したからこそ、テニアィヌアさんとペアナクェルさんが退出してから誰もが会話をすることなく重苦しい空気が漂う。
だれもどうしたらいいのか分からないと、この世界に召還された理由は魔族との魔王との戦争に勝つため。私達は戦争に参加しなければならないのか、それとも逃げるのか。
どこにどこへ、私達はどこへいけるのか。
ひしひしと伝わってくる悲壮感は、本来ならなかったはず。今頃は授業を受けている頃であるのに。
こんな重苦しい空気は元の世界なら太陽くんや張登くんが吹き飛ばしているのに今はなりを潜めている。彼らなりに気を遣っているのか、今はその元気が欲しかった
そんなセンチ気分を晴らすかのようにーー
ーーパンパン。
と手を叩いて注目を集めたのは皇さんだった。
「皆の不安な気持ち、悲しい気持ちは分かります。ただ決めるべきことは決めるべきです」
「決めるべきことですか?」
不安と悲しみに泣いてしまった女の子達を優しく包容していた先生が皇さんをみる。
「はい、先生。私達は決めなくちゃいけない。元の世界に帰るか、帰らないかを」
「帰る方法はないって先の質問でありましたよね、それにあっても難しいって」
「その通りです、が。それでも帰還方法を模索することを諦めることにはなりません。今決めるべきこと、指針は私達がこの世界に生きるか、それとも元の世界に帰還するかを決めて行動すべき、皆の共通事項として一丸となって頑張らなくては帰る方法なんて多分見つからないからないでしょう」
力強く、皆に伝わるように真剣な眼差しで皆を見渡す。
一人一人に顔を瞳を合わせるように、自分にも当然顔が合い瞳が合う。
その一瞬に彼女の瞳がほの少し揺れたような気がしたそれは次の人へと移るときにはなく、決意が漲るような瞳でしかなった。
皆を守ろうとしている。矢面に立とうとしている皇さんに自分はどうしたいかを考える。
帰るためにその方法を探すか、この世界に生きるか。
あちらの世界には父と母がいる、こちらの世界に来てはいない友達がいる。置いていってしまったありふれた日常がある。
この世界で自分達は戦争で戦うことを求められている、それも死ぬかも知れない殺し合い。
自分が死ぬかも知れない、幼馴染みが友達が死ぬかも知れない。そんな世界で生きていくには自分達はあまりにも世界が違いすぎる。
何よりも自分より友達が死ぬことが何よりも許せないかもしれない。
自分の傍らにいる幼馴染み三人を見る。自分達になりに考えている三人を見て、クラスメイト達を見て、今クラスを引っ張っていこうとしている皇さんをみて自分は元の世界に帰るべきだと強く思う。
「皆はどちらがいいですか、この世界で生き続けるか、それとも元の世界に帰るか……この世界に生き続けるに賛成の人は挙手を」
空気が微動だにもしなく、全員が皇さんを見続ける。
誰も手を挙げなかったことにホッとしつつ、同調圧力に負けたのではないかという心配もあった。それに負けるような人はこのクラスにはいないなと直ぐに考え直す。
「続いて、元の世界に帰るに賛成のかたは挙手を」
全員が一斉に手を上げる。
クラスメイトも、幼馴染みの学年が違う遍と風音も、担任の卯耳 春乃先生ももちろん自分も。
何の揺らぎもなく、帰ることに賛成であった。
ここで初めて皇さんは微笑む。
「決定ですね、私達は今から元の世界に帰ることを目的として行動していきます。それで元の世界に帰るために絶対にこの世界で絶対に守るべき三か条をいいます」
疑問符が浮かぶ。皆も分からないのか、首をかしげている者もいたり、聞いたりと。
「皇さん、そのこの世界で守るべきことて?」
明るい茶髪で後ろ髪に1本に纏められていて、優しげでありパッチりとした目をしたクラスのオカン的な存在である鬼相 桜奈さん。
それに答えたのは皇さんではなく、一緒にこの世界について質問していた宿木くんであった。
「ううん、違うよ鬼相さん。この世界で守るべきことではなく、この世界で〝絶対〟に守るべきこと、絶体厳守な条件というべきこと」
何でもないかのようにいいながら、有無をいわせない迫力をもっていう。
普段の彼はいつも皆と楽しそうに笑っている姿をみるがたまに見せる真剣な目であった。
皇さんが同意を示すように頷いて、続けて話す。
「守るのでは絶体に守るべき三ヶ条。一つ目、人を殺さないこと。二つ目、この世界の人物と恋愛をしないこと。三つ目、この世界を壊さないこと。この三ヶ条を絶体厳守の守るべきことです……なにか質問がある場合は挙手を」
皇さんが告げた三ヶ条。その内の二つは理由が分かるが、三つ目の『この世界を壊さないこと』がよく分からない、それは力的なこと? 国を滅ぼすとか? それなら一つ目の殺人をしないってことで包含できるはずだけど。
疑問に思ったので聞いてみることにした。
「皇さん、分からなかったことがあるのだけど聞いていい?」
「はい、大友くん、どうぞ」
「三ヶ条の一つ目、二つ目などは何となく理由は分かったのけど三つ目の『世界を壊さないこと』ってどいう意味? それは単純に国を滅ぼすとか、人類滅亡とかの意味?」
「それ私も聞きたかった! さすが大友分かってる」
アハハと楽しそうに笑う。ド派手なピンクの髪に後ろ髪の毛先あたりから、うねりるようにしてふんわりとしている。ギャルというべき感じでメイクはほんのりとしていてネイルもし、制服とかも軽くいっじているようで卯耳先生が抜き打ちの服装や頭髪検査するとだいたい注意されている。
その後、友達と笑って流している強メンタルであり、先生も呆れていた。
強メンタルではあるが、先ほどまではそんな明るい顔をしていなかったが。色々と踏ん切りでもついたのかいつも明るい笑顔であった。
あまり話したことはないけど、クラス問わず学校でオタクに優しいギャルとしてクラスの女子が慄いていたのを覚えている。
「いえ、大友くん。そういう物理的な破壊ではなくて、これは文明的な破壊。私達が持つ知識を使った時に出る文明への影響であり、その影響によるテロリスト扱いや緊張な異世界の知識を持つ者としての誘拐に繋がる知識を安易に教えたり使ったりしては駄目てことよ」
つまり、某小説サイト小説家になろうである異世界転生や転移でみられる元の世界の知識を利用した商売や発明、それも世界を変えるようなことをしてはならないと。
世界を変えるような知識を持つことは変化を嫌う者にとっては邪魔で暗殺や殺害を狙われる危険性、逆にその価値を知るものには金のなる木または国を強くするための物として誘拐される危険性があると。
「それはさすがに嫌だな、異世界に誘拐されたのにまた誘拐とか。さすがに笑えない」
「ええだけど、それだけではないの、大友くん」
「それだけではない?」
それ以外に真意があるように。自分の顔を捉える皇さんを見つめ返す。
だがそれを教えてくれたのは皇さんではなくて、宿木くん。
「これは三ヶ条全てにいえることだけど、俺達は元の世界に帰る以上。これらに対して責任を持てない。元の世界に帰ってしまえば、もう関わりがないこと。それはね、元の世界に戻ったときにそれらに後ろ髪を引かれるようなことになる、せっかく自分達の世界に戻ってきたのに。それじゃあ、また異世界に召還されてしまう」
世界を変えてしまえば。それに対して責任を持つが、それは異世界だからで元の世界ではその責任を果たすことはないし、宿木くんがいうように関係ない世界を思い続けてしまう。心が捕らわれてしまう可能性がある。
それを無責任できるなら、問題はないかもしれないがここにいる者でそれが出来る人はどれだけ入るか。少なくとも少数だし、思い悩み続けて精神が病んでしまう可能性だってある。
考慮しての三ヶ条であることから、皇さんがいつから考えていたのかに驚愕する。平然とこれに理解を示し説明をする宿木くんは宿木くんだと言うしかない。
皇さんは皆が理解できているのか確認するように見渡してから、話し出す。
「三か条について理解して貰えたなら嬉しいですけど、絶体厳守の約束といってますが、一つ目の殺人については、自身や仲間を守るためなら容赦なく破って良いことです。でもそれ以外ではしてはいけない、個人的動機や損得ではしちゃいけない。これこそ心に刻んでいてほしい絶体厳守の約束です。皆、分かりましたか」
それに頷く。人を殺せば。人の何かが決定的に変わることをしているから、それを皆に強いた。
優しい。皇さんは優しいすぎる。
どうしてそんなにも頑張っているのか、それを皆に強いる立場にいることは、もしものことが起きた時皆から責められる立場にいる。それを分かっていないなんてことは皇さんが理解できていないはずかない。
自分ならそんな可能性があるなら、自分は皇さんのようにはできない。彼ら彼女らはそんなことは言わないかもしれないが、言われてしまったなら自分は多分……何も出来なくなってしまうだろう。
皇さんを見る。その瞳に宿る覚悟は先ほど見た時から揺るぎなく結ばれているのが分かってしまう。
そんな強さを目の当たりにして目を背けるように窓へと視線を向ける。
暗く黒く夜空が見える景色をみる。それは全てを吸い込むように視線を固定して、ただ心にある自分の弱さを不甲斐なさを捨てるように見続ける。
すると近くから声が聞こえた気がした。それは眩しすぎる光であり、でも暖かな日差で心配するような声であった。
「聞いてますか大友くん」
「えっ?」
振り向くとかわいい顔が至近距離にあり、いつの間にか自分の前へと来ていた皇さんの顔だった。
「え、じゃないです。大事な話をしているですよ」
注意をしにきたようであるが、心配をするような顔であった。
ああ、自分は彼女を不安にさせしまったのだ、こんな頑張り屋で優しい彼女を不安にさせてしまった。こんな彼女と自分は曲がり曲がっても友達なのに。
自分の弱さに情けないに浸る暇があったら、彼女を笑顔に知ろうよ信勇。
「ごめん、ちょっとぼんやりしていた」
「本当に大事な話をしていたから聞いて欲しかったですが……まあそうですね」
視線を自分が先ほどまでは見ていた外へ向けるた皇さんは考えるように言葉を止めて。
自分から顔を離して、皆を見回してから。
もう一度考えて込み。
「今日はもう終わりしましょうか。この世界はもう夜ですし、私達は起きて数時間程度ですけど。明日の夜までオールするには不安もありますから。先ほどの話しは朝に行って今から寝ます」
就寝宣言した皇さんを見ていた皆の視線がゆっくりと自分の方へと向いて、視線が物語る。
なにやってんだと。
特に自分の傍らにいる幼馴染み三人の視線が特に刺さる。
「も、申し訳ね」
と小言と言う自分の矮小さに呆れるが、自分の頬を摘まんで自分だけに聞こえるように「本当ね」といった遍にがくりとうなだれる。
クスクスと笑う緑朗と風音に文句もいえずに甘んじて受け入れる。
「皆、じっとしてないで寝具の確認をして」
手を叩いて皆に動かしていく。
皆が動いてこの大きな部屋で寝具を探すが、それらしきものはなく。
誰かがこの城に誰かに寝具をそれも人数分借りてくることになった。いまの時期はさすがにこのまま寝てしまえば寒くて凍えてしまうために必然的だった。寝ないという選択肢はどうやらないようで。
さすがに申し訳ないので自分が行くことにして、一人は駄目だとことで皇さんと緑朗がついてくることに。
自分が部屋の扉を開けて、誰かに寝具を借りねないか誰かに聞きに行こうと廊下の外を見る。
廊下の外は暗く夜の学校の比ではないレベルで怖がりではないのに恐怖がマックス。もちろん誰かいないかと横を見れば。
部屋の扉の横に人がいた。
「ふぇ!?」
驚き声を上げる自分にとっさに皇さんが自分よりも前に出て。外を見渡す。
そして視線が扉の横にいた人に視線が止まる。
緑朗もなんだとばかりに部屋の外を見る。
部屋の外にいたのは一時間ぐらい前に退室したはずのメイドのペアナクェルさんだった。
いる筈がないと思っていたと想像以上の怖さを放つ夜の城というので情けなく驚いてしまったけど。なぜ、メイドさんが?
「どうしましたか? 幽霊にであった女の子のような悲鳴をあげて、お客様?」
「いや! 女の子のような悲鳴はだしていないから、いやだせないから!」
「それは失礼しました。健気に眠り眼を擦りながら皆様が何か用事あった場合に待機していたメイドに情けなく驚いた声をあげたなんてことはありませんよね、お客様?」
「なにこの子、滅茶苦茶毒舌なんだけど」
幼くツンとした表情で毒舌を吐く、メイドにドン引きをしていると。
皇さんが鋭い目付き、人でも殺すんかという射貫く眼光でメイドを見つめていた。
「私達の話を聞いていましたか?」
だけどペアナクェルさんの方は悠然と受け止め、自分とは比べなれないほどに丁寧に言葉を返していく。
「大丈夫ですよ、ここは国の重鎮も使う客室です。音漏れも盗み聞きも、行えないようになっている部屋です。もし、あなたの懸念されるようなことがあっても私を通すことはありませんので……もし、ご不快になられたのなら、こちらの不徳の致すことろ。申し訳ないありません」
鋭い眼光は変わることなくペアナクェルさんを見つめて、珍しくため息をついてから。
「いえ、少し神経質になりすぎました。こちらも避難するような目で見てしまったことに、ごめんなさい」
「いえいえ、そのような謝罪は大丈夫ですよ。それでご用件は」
少しヒヤリとしたがなんとか落ち着いてくれた様子、部屋の中にいる皆はこちらの様子が気になるのかにじり寄るように近づいてくる。
ただちょうどペアナクェルさんがいることは、こちらとして都合がよく用件を伝える。
「寝具を人数分借りたいんだけど、大丈夫ですかね」
「ええ、大丈夫ですよ。ただ足りるか分からないために何人必要なのか教えていただいてもよろしいでしょうか……ああ、あなた様は夜空の下で眠るのですね、分かりました」
「いや、なんで自分だけ夜空の下で寝なきゃいけないの、それに夜空の下でも毛布ぐらいほしいけど……はぁ、三十人の寝具があるとありがたいだけど?」
「それはあなた様の分を抜いて?」
「いや、入れてだよ」
「冗談ですよ、それじゃあ、二十九人分ですね」
そのまま寝具を持ってきてくれるのか、立ち去っていった。
「ねぇ、緑朗。なんでこの子はこんなに自分に毒舌なの、何かしたかな」
「ほらあれだ、子供特有の意地悪したくなるやつだろ」
好きな子には意地悪したくなるってやつ、違うだろ。あれ、だいたいは男の子が行うやつだろ。
はぁ、ため息をついてペアナクェルさんが戻ってくるのを待っていると。ペアナクェルさんだけではなく、他のメイドや執事も連れて寝具を持ってきてくれた。
ただ問題があったようで、数が足りないそうだ。
「申し訳ありませんが二十九人分しかなくて、そこの平均的ないじりやすあなた様に我慢して貰うしかありませんね」
「いや、なんでよ」
とありつつも。
女の子同士でシェアしてくれるそうで、男女で当然離れて寝ることに。女の子同士は華やかで明るくくっついて寝るようだが。
こっちはむさ苦しい男同士で寝ることに。
「なあ、枕投げしようぜ」
「いいな、それ、するか!」
とバカ二人に他の男全員で枕をぶん投げて寝る。
雑魚寝である。
寝るには早い就寝。だけど生活リズムを会わせるために眠たくもないのに目蓋を閉じ続けていると。
意識が薄らいでいくのをぼんやりと感じて、流されるように意識を委ねる。




