第13話 露出
暑くなってきて火光さんがわりと薄着になってきた。
「暑かったわ。はい、これ」
「ありがとう」
アイスを彼女から受け取る。そのときに袋を覗き込んでかがんだ火光さんの胸元が少し見えてしまった。豊かな乳房を黒いブラが覆っていた。僕はすっと視線を逸らす。それは申し訳ないことだ。自分に誰かの女の部分を見る資格はない。
「サーバーの負荷は思ってたほど少ないわね」
「うん。新しいアルゴリズムが処理速度を軽減したからね。まあC超えてアセンブラまで弄る羽目になるとは思わなかったよ」
「GitHubに公開する?それとも特許?」
「特許かぁ……できるかな?」
リビングの床に胡坐で座る火光さんのホットパンツから白いパンツのデルタゾーンが見えている。僕はやっぱり目を反らす。誰かとそういう関係なんて僕は無理だ。……人生に伴侶なんて僕には得られないだろう。皆がそう言っていた。あの嘘告白が最初で最後。そう決まっている。
「出来るわよ。ライセンス料でお小遣い取れるんじゃないかしら?それに発明者名誉権も得られる!いいと思うわ!!」
「じゃあやってみようかな……」
自殺未遂者なんて不名誉な名称を少しでも打ち消せるならと思った。せめて死んだ後でも誰かが僕の名前に触れてくれればと思う。
例によってレッスン。最近はすみれの隣で踊ることが多い。メンバーから明らかに二人でセットみたいな扱いになってる。休憩時間も二人で可能な限り過ごして写メってSNSにアップしてたりしてた。こういうのを百合営業とかいうらしい。
「今度声優さんのお仕事貰えたんだぁ!るいかちゃんの御陰だよ!ありがとう!」
「そう。よかったね」
すみれはオタクさんらしい。ゲームやアニメとか漫画やライトノベルが好きだそうだ。でもファンはそういうのが好きっていうからあたしも勉強しておかないといけないかな。
「そういう言えば今度コスプレしに行くんだけどるいかちゃんも来る?」
「仕事じゃないの?」
「ううん。趣味だよー。合わせしようよー。るいかちゃんならクール系とか似合いそう!」
そう言ってコスプレしている写真を見せてくれた。スカートがびっくりするくらい短い。
「これパンツ見えちゃうんじゃないの?」
「家でやるときはそれでもいいんだぁ。むしろその方がいい!まあイベントの時は下にスパッツとか履かないとダメなんだけどね」
「ふーん……」
ふっと閃いた。万和さんに相談しよう。果たして蛇が出る鬼が出るか。
僕たちアイドルオタクは彼女たちのことがいつだって知りたいんです。そんな時にあのるいかちゃんの話題がスレに上がったんです。
:ふーん。ビッチそう。
:媚び売りがキモい。
:黒髪ロングとか狙いすぎてて逆に痛い。
:はぁ?!るいかちゃんまじで天使だし!
:あの子は膜から声出てるから(゜Д゜)ノ
:だけどグラビアで抜けるわけないっしょwww信者乙!
:見てねぇ奴が言うんじゃねぇよ!
:お前ら落ち着けよ。るいかと同じ学校だったけどなんでも答えるぞ
:おいおい。釣りか?
:証拠ぽい(写真→金髪ギャルでブレザー制服のるいかちゃんが顔に目線は言った男女に囲われてる)
:ビッチじゃんwww笑ったひーひー
:リア充(´・ω・`)
:これは何人も食ってるwww
:いや誰かと付き合ってたりはしなかったぞ。証拠(録音)
録音
るいか:彼氏いるってどんな感じ?
R:別に普通。デートしてエッチしてッて感じ。
るいか:キスとかって毎日するの?エッチも?
R:るいかってヴァージン?
るいか:だめ?
R:意外ー
るいか:だめなのか(;´・ω・)
:【朗報】るいかきれいきれい【処確】
:こんなごりごりぎゃるで処女とか……。童貞線が震えた。
:まじかよ!ファンになった。
:ここがユニコーンの牧場かぁ。イカクセェ地獄だな。
:あとこんなんとかある。写真(階段に座って喋るるいかと女子たち。女子には目線が入っている。るいかが油断してパンチラしてる)
:今日の政局はどうなってるんだっけ?
:少子化がやばいよね
:そう言えば六本木のラーメンって意外に激戦だよね
:なんでみんな話反らすんだよ!けっこうるいかって隙あるんだよね。これとか(写真:るいかのシャツが汗で湿ってブラジャーが透けてる背中)
:ラノベのワナビなんだけどPV増えない(;_;)
:ん?なんかおれまずいことやった?
(このスレは削除されました)
ってことがありました。あのパンチラとブラちら写真はみんな落としましたよ。ええ。スレも落ちたし迷宮入りですね。ええ。断じて悪いことはしてない。僕たちは見ちゃっただけ。ふぅ。そこから一瞬で燃えましたね。皆こぞってあの時のスレの写真を求めてダークウェブは炎上パーティーでした。そしてとどめです。池袋のイベントでるいかちゃんが登壇したんですが、その時ステージで座ったんですね。衣装のミニスカの下……アンスコもスパッツもなかったんです。清らかな白でした。汚れているのは彼女じゃない!僕たちだ!では僕はあの録音を聞きたいので失礼します。
こんなので知名度が上がるなんて思わなかった。万和さんに優秀なハッカーさんを雇ってもらい、口が堅いスタッフで撮ったパンチラ写真とブラ透け写真を学生時代の友達の振りでアップさせたら闇でバズった。とどめに実際のイベントでスパッツわざと忘れたらもうそのあとから仕事に男の人がまるでハイエナのように集まってきた。ハッカーさんのお陰でIP?なるものを誤魔化したので写真の出元は足がつかない。その上写真そのものは加工無しで撮ったのでパソコンで解析しても本物だという。弁護士先生には泣かれた。でもこれで人を集められるなら安いものだ。あたしは払える代価はすべて払う。出し惜しみはしない。




