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テイマー少女の逃亡日記【コミカライズ連載中】  作者: 一色孝太郎
第五章

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第五章第59話 準々決勝です

「始め!」


 審判の先生の合図で試合が始まりました。ですが二人ともすぐには動きません。ヴィーシャさんは剣を構え、相手の選手をじっと見ています。相手の選手も腰を低く落とし、同じようにヴィーシャさんのほうを見ています。


 これ、タックルをする隙を(うかが)っているんですよね?


 ヴィーシャさん、大丈夫でしょうか?


「剣と格闘、普通なら相手にならないはずですわねぇ。どうするつもりかしら」


 カーチャさんがぼそりと(つぶや)きました。


「えっと、それって……?」

「だって、間合いが違い過ぎますもの。剣の間合いに入れば一撃でしょう?」

「それは……でも魔術のほうが遠くまで攻撃できると思うんですけど……」

「あら、それは別よ。魔術師相手なら格闘家はステップで翻弄できる。でも剣士相手ならそうはいかないわ」

「そ、そうなんですね」

「ええ。だから前の試合でも魔術師が懐に入られて負けていたでしょう?」

「はい。そうでしたね」


 パヴェルさんは実戦魔術部の人ですし、一回戦の相手も剣術部の選手じゃなかったです。予選は見てないからわかりませんけど……。


「あの、ということはもしかして、今回の相手はヴィーシャさんにとって相性がいいってことですか?」

「ええ。普通はそうね。ただ、試合となるとどうなのかしら? 殺したら失格ですわよね?」

「えっと……はい」


 そういうことですね。たしかに本気で剣を振るったら相手を死なせちゃうかもしれませんし、上手く加減するのは大変そうです。


 さて、試合のほうですけど、開始の合図からずっと(にら)み合っていて、二人とも全然動いていません。


 あ、いえ、そうじゃないですね。ヴィーシャさんがほんの少しずつですけど、じりじりと距離を詰めていっています。


 あれ? 相手の選手がステップを踏んで距離を取りました。


「あら、間合いが読まれていますわね」

「えっ?」


 それってどういう……?


「そう。ローザは詳しくないのね。ローザのお友達の間合いは、あそこから一歩の距離ということよ」

「えっと……」

「つまり、あの距離からもう一歩踏み込むと、剣が届くということですわ。でも彼の攻撃は届かない。そんな間合いで睨み合いを続けるのは分が悪いから、距離を取ったということですわね」

「そうなんですね……」


 結構離れていると思うのですが、ヴィーシャさんにとってはそうじゃないんですね。


「それにしても、魔法学園の生徒はさすがですわね。魔術だけでなく、剣も格闘技も、さらにテニスまで」


 カーチャさんはそう言いつつ、ヴィーシャさんの試合を真剣な目で見ています。


 と、そのときでした。相手の選手が横にステップすると、小さな火球をヴィーシャさんのほうへと飛ばしました。


 これ、前の試合でパヴェルさんに近づくために使っていた作戦と同じですね。


 ただ、ヴィーシャさんはそれに動じることなく、的確に小さな水球を飛ばしてそれを迎撃しました。


「やはり火には水ですわねぇ」


 カーチャさんがぼそりと呟きます。


 そうですよね。火を消すには水ですもんね。


 相手の選手、どうするつもりでしょうか?


 打つ手がなさそうな気がしますけど……ヴィーシャさんが攻撃に転じるのを待つとか?


 そんなことを考えている間もヴィーシャさんはじりじりと距離を詰めようとしていて、相手の選手は一定の距離を保つようにステップしつつ、右へ右へと移動しています。


 その途中で小さな火球を飛ばしてはヴィーシャさんがそれを水球で迎撃し、また睨み合いに戻ります。


 派手な打ち合いがあるわけではありません。ですが、ものすごくピリピリとした空気が闘技場を支配しています。


 そうして五度ほど繰り返したそのとき、突如相手の選手のステップが早くなりました。右へとステップしたかと思うと左へと切り返し、さらに大量の火球がヴィーシャさんの視界を奪うように放たれます。


 対するヴィーシャさんは……!


 バシャア!


 水の壁のようなものを作り出していて、その壁で無数の火球をすべて受け止めました。ですが水煙で立ち昇り、霧のようなものが二人の間に立ちこめます。


 きっと相手の選手はそれを狙っていたのでしょう。霧のようなものの中を一直線に突っ切り、低い姿勢でヴィーシャさん足を狙ったタックルを――


 グサッ!


 あ……。


「そこまで!」


 審判の先生が慌てて止めに入りました。


 それもそのはずで、ヴィーシャさんの突き出した剣が相手の選手の右肩に刺さっているんです。


「勝者! ヴィクトリア・コドルツィ君!」


 ヴィーシャさんは心配そうに相手の選手に声を掛けています。一方の相手選手は痛そうにしていますが、その表情はすごく悔しそうです。


 あ、医療班がやってきました。すぐに相手の選手を担架に乗せて運んでいきます。


 その後を追うようにヴィーシャさんも退場していきました。


「今回ばかりはあの彼に同情しますわ。相性が悪すぎましたもの」

「そうですね……」


 でも、このルールってどうなんでしょうか?


 もうちょっと怪我人の出ないやり方にしたほうがいい気がします。


 それに、相手の選手の怪我は大丈夫でしょうか?


 ツェツィーリエ先生がいるから大丈夫だとは思いますけど……。

 次回更新は通常どおり、2026/05/16 (土) 20:00 を予定しております。

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― 新着の感想 ―
主人公は鬼ごっこかかくれんぼ部に…… いや、揺れ部に監視されるからだめか……
後2回で優勝か どちらにしろベスト4とは凄い お祝いは何にするんだろ
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