第五章第57話 二回戦が始まります
カシン! ゴン!
「がっ!?」
えっ? い、今一体何が……?
相手の選手の杖がヴィーシャさんの顔面に向かって振り下ろされたと思ったんですけど、なんだかよく分からない動きをして、気付いたら相手の選手のお腹にヴィーシャさんの膝が入っていました。
そのままの流れでヴィーシャさんと相手の選手は離れたんですが、相手の選手の体はくの字に曲げ、苦しそうにしています。
「ローザのお友達、やりますわねぇ。ああ、でもあそこまで綺麗なカウンターが入るってことは、相手の選手が弱いのかしら?」
「え? カーチャさん?」
「あら? 何?」
「えっと、カウンター? って……」
「あら? 見逃しちゃったんですの? 大事なところで瞬きしちゃったのね」
えっと……瞬きはしてないと思うんですけど……。
「相手の選手が振り下ろした杖を剣で受け流した。それで体勢を崩した相手の腹部に膝が直撃。自分の体重も乗っていたから、あれは効いたでしょうねぇ」
そ、そうだったんですね。
「勝負あり! 勝者! ヴィクトリア・コドルツィ君!」
カーチャさんの話を聞いている間にヴィーシャさんが勝ち名乗りを受けました。
あ、えっと、はい。ちゃんと見ていましたよ。ヴィーシャさんが単に剣を突きつけただけで、特に何かしたわけじゃないです。
「ねぇ、ローザ」
「はい」
「これ、魔術選手権ですわよね?」
「えっと、はい。そうですね」
「二人とも、ほとんど魔法を使っていないじゃない」
「えっと……はい」
「なんだか、なんでもありなんですのね」
「そ、そうですね……」
◆◇◆
それからも一回戦は続きました。剣術部のヴァシリオスさんとアイオネルさんもヴィーシャさんと同じような戦い方をしていたんですが、ヴァシリオスは勝ってアイオネルさんは負けてしまいました。
他の剣術部の人も同じ戦い方をして、剣術部の選手が近づけたら勝ち、近寄れずに魔術に当たると負けるっていう感じみたいです。
でも、よく考えたら当然ですよね。あたしも近づかれたらやられちゃいますもん。
あ! それとですね。コンラートさんも勝ったので、ヴィーシャさんの次の試合はコンラートさんとです。
えっと……はい。やっぱりテニス、していました。対戦相手の選手もすごく困っていたみたいです。
ヴィーシャさん、どうやって戦うつもりなんでしょうか……。
◆◇◆
そうこうしているうちに、ヴィーシャさんの二回戦が始まりました。
「二回戦、第二試合! 剣術部所属ヴィクトリア・コドルツィ君とテニス部所属、コンラート・バゼスク君の試合を始める」
審判の名乗りを受け、二人が前に出ます。ヴィーシャさんは剣を、コンラートさんはラケットとボールを持っています。
「ねぇ、ローザ。相手の選手のアレ、なんなんですの?」
「えっと……テニスらしいです」
「テニス? ……あれが?」
「はい……」
カーチャさんは眉間に皺を寄せています。
そうですよね。あたしも最初に見たとき、びっくりしましたもん。
「始め!」
すぐに試合が始まりました。ヴィーシャさんはすぐに突っ込むのではなく、剣を構えてじっとコンラートさんの動きを窺っています。
一方のコンラートさんは半身になり、左手にはボールを、右手にはラケットを持ってじっとヴィーシャさんのほうを見ています。
トーン、トーン。
コンラートさんは二回ボールをバウンドさせると、ボールを真上にトスしました。するとヴィーシャさんは右斜め前に向かって走りだします。
コンラートさんはヴィーシャさんの動きに合わせ、サーブを打ち込みます。
パコーン!
乾いた音と共にボールが放たれ、ヴィーシャさんに向かっていきます。ですがサーブが放たれた瞬間ヴィーシャさんは左へと進路を変えました。
ボールは少し外れたところに着弾し、地面が大きく盛り上がりました。そしてボールはなぜかコンラートさんのほうへと戻ってきます。
「はっ!」
コンラートさんが帰ってきたボールを力強く撃ち返しました。ボールはものすごいスピードで、まるで吸い込まれるようにヴィーシャさんの左肩に向かって飛んでいきます。
ヴィーシャさんは本当にギリギリのところで体をよじってボールを躱し、今度は一直線にコンラートさんとの距離を詰めます。
しかしコンラートさんは目の前に人の背丈ほどの土壁を作り、ヴィーシャさんの進路を塞ぎます。しかもボールの飛んでいった先にもいつの間にか岩の柱ができていて、そこにぶつかったボールがヴィーシャさんのほうへと飛んでいきます。
そうなんです。一回戦でも相手の選手はこの跳ね返ってきたボールに当たって先頭不能になっていました。
「ヴィーシャさん!」
思わず声を上げてしまいました。
あたしの声が届いたかどうかは分かりませんが、ヴィーシャさんは跳ね返ってくるボールに気付いたようで、なんとかギリギリのところで躱してくれました。
あ、危なかったです。
しかしコンラートさんの攻めはまだまだ続きます。
「はあっ!」
土壁が消え、コンラートさんは飛んできたボールを再び強く撃ち返しました。ヴィーシャさんはまたしてもギリギリのところで避けましたが、飛んでいった先に岩の柱が建ち、ボールはヴィーシャさんに向かって飛んできます。
それもなんとか避けたヴィーシャさんですが、その先に回り込んでいたコンラートさんはまたしても強打します。
ボールをなんとか避けたヴィーシャさんですが、やはり岩の柱が新しく建ち、返ってきたボールがヴィーシャさんを襲います。
ど、ど、どうしましょう。ヴィーシャさん、防戦一方です。
次回更新は通常どおり、2026/05/02 (土) 20:00 を予定しております。





