ナーロッパ歴二年『ナロウシュ、死に戻り〈リスポン〉し続けてみる』
「さて、何をしたらいいか分からないぞ? おらナーロッパ人ども!」
ナロウシュ様が声を荒げられると、ナーロッパの方々は一斉にひざまづいて、
「はい! ナロウシュ様! ロードオブナロウシュ! ナロウシュ様万歳!」
「ええい! 聞き飽きたわ! お前らは俺の世話しかする気が無いのか! 退屈だわ!」
ナロウシュ様に対するナーロッパの方々の視線はまさにくぎ付け、
無理もありません、何せここはナーロッパ城であり、
数多くのナロウシュ様の異性体に値する方々が召し使ってるしだいで、
更に言うとナーロッパ世界では比較的高貴なお嬢様方や、
さらには奴隷身分のかたをそのまま覚醒させてナロウシュ様にめろめろにさせてしまったり、
とにかくみんな、ナロウシュ様のために生きているのですから!
「よいか! 吾輩はこの異世界で熱烈満足するために生きておる! 現実世界にはない超越した果てしない、欲求を満たすための力を、そうだ! 普通ではない力を求めている! 分かったか!? わかったのなら、いまこのナーロッパで流行っている力を吾輩に授けて見せよ!」
「では、ナロウシュ様、この道化めが、ナロウシュ様の新たなる力を引き出して差し上げましょう! ナーロッパナロナロナロウシュナーロウシュ、ナローシュナロナロナーロナロ! ナロウシュ様! 覚醒!」
「う、うむうううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!」
なんということでしょう!
ナロウシュ様の体が光り輝き、どこまでも照らし出す太陽のように、
そう真夜中の太陽のように燦燦と輝くそのお姿は勇ましく、
まさしくナーロッパの主、ナロウシュ様であられるのです!
「召使! わが新たに目覚めし能力をとくとみるがいい!」
「はい! ナロウシュ様! 素敵です!」
が、分からないことがある。
「というかそもそもこのナーロッパ城の玉座に座る私が手に入れた新たなる能力とはいったい?」
「ふははは! それはこの道化めが教えて差し上げますよ!」
道化の懐から取り出された一本のナイフが光り輝いて、
ナロウシュの首に斬りかかれば、鮮血が噴き出す!
「い、いてえじゃ、すまない!? ガバゴボグブグベグバ?!
血が! 血が! 口から湧き出すし、意識が! 寒い、痛い、死んじまう、
死んじまう! 死ぬ! 苦しい! 助けて! 助け、たすけてくれ」
地面に突っ伏すナロウシュ様を見て道化師は笑い、
そして周りにいるナーロッパの方々は怯え、この世界の終わりを見ているような、
そんな光景が、血の海に沈んだナロウシュ様という劇的な絵面が、広がっていたのです!
「ん、む?」
「お目覚めですかナロウシュ様?」
「ん、さて、たしか吾輩は?」
そう、ナロウシュは死んだ、はずだが、首は?
「つながってる、だが覚えている、痛いということを覚えている!
そしてこれ、この能力を知ってる! これって死に戻りっていうらしいよ! 召使!」
「あ、それいっちゃダメな奴ですよ、ナロウシュ様、言うとナロウシュ様殺しても、
どうせよみがえるし、悲惨な死に方させたほうが面白いって召使思ってしまったもの」
「はっ!?」
あつい! 召使のくせに! ナロウシュ様にあつあつの紅茶をかけるなんて!
あつあつの紅茶? なんだ! あついどころか肌が溶けるぞ!?
顔が溶けて、もっと熱い! 服も焼けたみたいになって、いやどんどんあふれてくる!
やばい! 溶ける、死ぬ!?
「今はやりの濃硫酸ティーです、ナロウシュ様、立派に死に戻ってくださいね!」
いやだ! いやだ! 熱いのいやだ! 怖いし、溶ける! 脳みそが沸騰する!
沸騰? 沸騰だ! うわああああああ!!!!!!!
「はっ!?」
「お目覚めですかナロウシュ様?」
動揺が消えないが、なんとなく、分かった、とりあえず死に戻ることを話すと、
もれなく死に戻りが流行ってるこのナーロッパにおいて、
ナーロッパ人たちが全力で殺し方を模索してこのナロウシュを殺そうというのだ、
しかもなんどでもいろんな死に方が出来るというから、
とにかく死に戻りのことを把握されてはならないし、私がしゃべったらその時点で、
死に戻らされる、なんというナーロッパに生まれてしまったのだこの私は!
「ナロウシュ様? お加減がすぐれないのですか?」
「いんや、うん、目覚めた、とりあえず、
着替えるの手伝って」
「はい、ナロウシュ様、お召し物はこちらにございます」
「吾輩にぴったりな服だといいが、あれ、これ、何?」
「――――――ナロウシュ様にぴったりのギロチン、断頭台でございますわ」
「え、これ、外れない! 首と手首ががっちりセットされてて動けない!
しかも上向けないけど、明らかにでっかい刃が吾輩のほう向いてる?
ちょっとまって!? 俺、話した覚えないし、なんでお前、
ナロウシュ相手にいきなり殺しにかかろうとしてるわけ?!
吾輩はナロウシュ様だぞ! こんなことが許されるわけがあると思ってるのか!?」
「許されますわ、だってそうでしょうナロウシュ様、
召使はいつだってナロウシュ様の気持ちを第一に察するために、
ナロウシュ様の心を読むことが出来るのですから、ああなんて素晴らしい、
死に戻り生活! ではナロウシュ様! すぱっといってみましょう!」
断頭台のレバーに両手を添える召使、そういえばこいつ、
所詮ナーロッパ人だと思って特に名前もないし、思い入れもないのに、
何、勝手に思い上がって、吾輩を殺そうとしてるんだ!? やめろ!
そのレバーには何前何万ものナーロッパ人の未来!
ナーロッパの栄華がかかってるんだぞ!?
ここで終らせていいわけがないだろう!
「ま、待て!?」
「さようならナロウシュ様、また死に戻ったらお会いしましょう!」
ギロチンの刃がストンと落ちると、吾輩の首は飛び、意識もまた吹き飛んだ。
「はっ!?」
キングサイズのベッドの上で目覚めると、
なんだか嫌な予感しかしない。
「お目覚めですかナロウシュ様?」
「き、き、貴様!? 貴様は! 貴様!?」
「――――――ナロウシュ様、何もおっしゃらないで、私にはすべてが分かっていますわ」
召使は医療キットからメスを取り出すと、その鋭い刃を輝かせて、
こちらに近づいてくる! 怖い! けど動けない!? なんで!?
「それはナロウシュ様が目覚める前にナロウシュ様の深層心理を読んで、
どうやら死に戻りの能力を得たことが分かったので、
心身を硬直させる薬剤を注射器で投与させていただいたのです、
そして、これからナロウシュ様は素晴らしい死にざまを晒して、
ナーロッパに新たなる金字塔を打ち立てるのですよ!」
「ま、待ってくれ! お前は勘違いをしている!
既にナーロッパにおいて死に戻りは飽和状態にある、
これ以上、死に戻りしたところで需要はないし、
面白いことも何もない! だれも浮かばれないし、
っていてえ! いてえよ! いてえええ!
ゆっくり、ゆっくり切るなよぉおぉぉぉぉ!!!」
召使のメスは神体であるナロウシュの肉体を切り裂いて、
白く輝いてぼかされるであろうかずかずの五臓六腑が、
「素敵、ナロウシュ様、すっかり人体模型になられたのね」
はあ、はあ! はあ! はあ! 死ぬ! 死んでしまう! 死ぬのいやだ!
いやだ、もう、もう死にすぎると、死ぬと、心を読んでくるこいつらに、
死に戻りが分かって、うああああああああああ!!!!!!!!!
「はっ!?」
「お目覚めですかナロウシュ様?」
なんだ? なんなんだここは!?
ここは、集会所? なんだ!
ナーロッパの連中が何万も集まって、
俺のほうを見ている!?
「ナロウシュ様も人が悪いですわ、
まさか死に戻りが流行っているから、
さっそくナーロッパ人の手本となるために、
自ら実験体になられるだなんて」
か、体が動かない! なんだ!? 柱に縛り付けられて、
それに周りにはたくさんの枯れ枝が山になって、
あ、あれはおれが大好きなラノベがきれいに積まれて、
あー火が付くときれいに燃えるんだって!
おれ、焼かれるの!?
「ナロウシュ様、火あぶりはお好きですか?
ナーロッパの歴史においてなろうなろうと思ったヨーロッパには、
火あぶりというものがあるというお話でして、
ええ、死に戻りというたぐいまれなる能力をお持ちの、
ナロウシュ様にはぜひ、火あぶりの刑を経験していただいて、
われらナーロッパ人にお示しいただきたいのです」
「おお! ナロウシュ様! われらに死に戻りの儀をお授けください!」
「「「「お授けください! お授けください! ナロウシュ様!」」」」
「やめろ! やめて! 煙がしんどい! 熱い! 息が、ゲホッゴホグホッ!?
ゲハゲフグハ!?」
あついあついあつい! 目が焼ける、しんどい助けて!
理不尽だ! こんなの聞いてない! やめろ! やめろ! やめろ! ください!
「くあああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」
「はっ!?」
「お目覚めですかナロウシュ様?」
「お、おれに」
「どうなされたのですかナロウシュ様!」
「おれに触るなあああああああああああ!!!」
このあとめちゃくちゃリスポンした。
さて、かくしてナロウシュ様が死に戻りし続けたことによって、
この世界にリスポンという概念が誕生した、
そして、それは都の名前となり、
ナーロッパにリスポンという都市が栄えたというから、
世にリスポンの栄えた試しありという具合、
我々は死に戻る運命なのですね。
キラキラ!




