↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『負けず嫌いを極めたらいつの間にか世界を救ってた件 ―俺と29人の仲間の物語―』  作者: まろじろう
第一章「自分の戦い方」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/16

第8話「快進撃」

勝てる。


 一度そう思えるようになると、不思議なものだった。


     ◆


 三戦目。


 相手は大型の《キジン》。


 重い。


 硬い。


 そして、一撃がでかい。


『潰す!』


 巨大な戦槌が振り下ろされる。


 以前のアキトなら、肩、腰、重心から軌道を予測し、先に避けていた。


 でも今は違う。


「まだ」


 動かない。


 戦槌が加速する。


「まだ」


 距離が詰まる。


 ――ここ。


 アキトが横へ踏み出す。


 《凪》がその動きをなぞった。


 ズドォン!


 戦槌が地面を叩く。


 衝撃が足元を走った。


 だが、そこに《凪》はいない。


 すでに相手の横。


「遅い」


『なっ――』


 一閃。


 キィン!


 《角》が飛んだ。


     ◆


『勝負あり! 勝者――アキト!』


 二勝一敗。


     ◆


 四戦目。


 相手は槍。


 長い間合い。


 正面から近づけば、アキトの刀より先に届く。


『入れると思うなよ!』


 鋭い突き。


 アキトは下がる。


 もう一度。


 下がる。


 さらに。


『どうした! 逃げてるだけか!』


「いや」


 見ていた。


 相手。


 自分。


 距離。


 そして。


 背後の壁。


 あと三メートル。


 相手が踏み込む。


 下がる。


 あと二メートル。


 もう一度。


 あと一メートル。


『終わりだ!』


 槍が伸びた。


「うん」


 アキトは笑った。


「そっちはね」


『――?』


 大きく横へ踏み出す。


 《凪》が槍の軸線から外れた。


 相手が追おうとする。


 だが、深く踏み込みすぎていた。


 長い槍。


 伸びきった腕。


 前へ流れた重心。


 アキトは、もう懐にいる。


『しまっ――』


 一閃。


 角が落ちた。


     ◆


 三勝一敗。


     ◆


 五戦目。


『新人アキト! 現在二連勝!』


 実況の声が響く。


「……新人アキト」


 アキトは小さく呟いた。


 悪くない。


『対するは高速戦を得意とする――』


 相手が走り出した。


 速い。


 だが。


 テツとは違う。


 動きに筋道がある。


 なら。


 読める。


 踏み込み。


 重心。


 進路。


「左」


 アキトが動く。


 《凪》も左へ。


 相手が来る。


 予測通り。


 かわす。


 追う。


 相手が切り返す。


「次、右」


 ――当たる。


 アキトは笑った。


 未来を読む。


 今を見る。


 どちらか一つじゃない。


 読めるなら読む。


 読めないなら待つ。


 その時、その場所で。


 使える方を選べばいい。


「こっち」


『なっ!?』


 相手が進路を変えた先。


 そこに《凪》がいる。


 刀。


 受けられた。


 なら、次。


 相手が下がる。


 追う。


 右へ。


 読める。


「そこ」


 踏み込む。


 相手が逃げる。


 だが。


 遅い。


 刀が走った。


 キィィン――!


 角が宙を舞う。


     ◆


『勝負あり!』


『勝者――アキト!』


 歓声が上がる。


『三連勝! デビュー戦で黒星を喫した新人が、その後まさかの三連勝です!』


「…………」


 アキトは呼吸を整えながら、会場を見渡した。


 前より。


 明らかに歓声が大きい。


『アキトー!』


「…………?」


 今。


 誰か。


 俺の名前を呼んだ?


『アキト!』


 また。


 今度は、はっきり聞こえた。


「…………」


 アキトは思わず笑った。


     ◆


「最近、楽しそうだね」


 試合後。


 アンが端末を見ながら言った。


「そう?」


「そう」


「三連勝だからかな」


「自分で言う?」


「事実だろ?」


「うわ」


「何」


「なんか腹立つ」


「なんでだよ」


 アンが端末をアキトへ向けた。


「ほら」


「何?」


「記事」


 画面には《凪》の姿。


 その横に、大きな文字。


 ――新人アキト、三連勝。


 ――デビュー戦の敗北から快進撃。


 ――異例の新人現る?


「異例だって」


「嬉しそう」


「別に」


「口元」


「何?」


「めちゃくちゃ上がってる」


 アキトは慌てて口元を触った。


 アンが吹き出す。


「嘘」


「お前!」


「でも、嬉しいんでしょ?」


「…………」


 もう一度、記事を見る。


 三連勝。


 通算五戦。


 四勝一敗。


 勝率八割。


「まあ」


 悪くない。


 いや。


 かなりいい。


「思ったより」


「うん?」


「プロでもやれるかも」


「おお」


「養成施設とは全然違うと思ってたけど」


「違うでしょ」


「違うけどさ」


 アキトは戦績を眺める。


「なんか、分かってきた」


「何が?」


「勝ち方」


 予測。


 観察。


 位置。


 距離。


 地形。


 テツに負けたことで、使えるものが増えた。


 そして。


 それで勝っている。


「俺、結構強いのかも」


 アンの目が細くなった。


「……調子乗ってない?」


「乗ってない」


「今の発言で?」


「結果出してるし」


「うわぁ」


「なんだよ」


「五戦しかしてない新人が言っております」


「四勝してる新人な」


「めんどくさ!」


 アキトは笑った。


 その時。


 端末が鳴る。


 新しい通知。


 対戦申請。


「また来た」


「最近増えたね」


「まあね」


 アキトは一覧を流す。


 知らない名前。


 知っている名前。


 自分より戦績のいい選手もいる。


 以前なら、一人ずつ映像を確認した。


 勝てそうか。


 相性はどうか。


 慎重に考えた。


 でも今は――。


「…………」


 指が止まった。


 《一騎》ランキング。


 その上位。


 四つの名前だけが、他とは別の表示になっている。


「アン」


「ん?」


「四強ってさ」


 アンの顔が上がった。


「……何?」


「どれくらい強いの?」


「待って」


「まだ何も言ってない」


「その顔は駄目」


「どんな顔だよ」


「ろくでもないこと考えてる顔」


「失礼だな」


 アキトはランキングを見る。


 その中の一人。


 ――ソウジ。


 試合映像を開く。


 構える。


 踏み込む。


 突く。


「速っ」


 確かに速い。


 もう一度。


 構える。


 踏み込む。


 突く。


「…………」


 もう一度。


 同じ。


 突き。


「やること、分かりやすくない?」


「は?」


「突きだろ?」


「いやいやいや」


「テツより全然読みやすそう」


「比較対象がおかしい!」


 アキトは映像を止めた。


 四強。


 《一騎》の頂点にいる四人。


 その一人に勝てたら。


 本当に。


 自分がどれくらい強いのか分かる。


「…………」


 アキトは笑った。


「ちょっと戦ってみたい」


「やめなさい」


「まだ申請してない」


「『まだ』って言った!」


 アンの声を聞きながら、アキトはもう一度ソウジの映像を見る。


 構える。


 踏み込む。


 突く。


 何度見ても。


 やることは同じだった。


「……これなら」


 読める。


 そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。