↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『負けず嫌いを極めたらいつの間にか世界を救ってた件 ―俺と29人の仲間の物語―』  作者: まろじろう
第一章「自分の戦い方」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/16

第4話「見えるなら、負けない」

「右上」


 来る。


 アキトは半歩だけ下がった。


 ブンッ!


 模擬刀が鼻先を通過する。


『クソッ!』


「次、左」


『はあ!?』


 相手が刀を返す。


 その前に、アキトは動いていた。


 左へ。


 刀が空を斬る。


「それから――突き」


『なんで分かるんだよ!』


 切っ先を身体をひねってかわす。


 三回。


 全部、見えた。


「次は……」


 相手の右足が、わずかに後ろへ。


 重心が沈む。


「踏み込んで、袈裟」


『だったら!』


 相手が強引に踏み込んだ。


 速い。


 でも。


「そこ」


『え?』


 アキトは避けなかった。


 一歩。


 前へ。


 相手の懐に入る。


 振り下ろされる刀より早く。


 アキトの模擬刀が走った。


 カンッ。


『勝負あり』


 相手の《角》が、宙を舞った。


     ◆


『……気持ち悪い』


「勝った相手に最初に言うこと、それ?」


 視界の端。


 インカメラには、同期のカイが映っていた。


『だって気持ち悪いだろ! 俺が何するか全部知ってんじゃん!』


「知ってるわけないだろ」


『じゃあなんで全部避けられるんだよ!』


「見てるから」


『俺も見てるわ!』


「見てる場所が違うんじゃない?」


『腹立つな、お前!』


「褒め言葉として受け取っとく」


『褒めてねえ!』


 通信が切れた。


「あ、逃げた」


『アキト』


 今度は教官だ。


「はい」


『訓練終了。降りろ』


「もう一戦やりたいんですけど」


『駄目だ』


「じゃあ最後に一回だけ」


『次の訓練生が待っている』


「一回」


『降りろ』


「ケチ」


『聞こえてるぞ』


「聞こえるように言いました」


『早く降りろ』


「はいはい」


 アキトは名残惜しそうに模擬刀を下ろした。


     ◆


「で、どうやってんだ?」


 訓練後。


 カイが聞いてきた。


「何が?」


「さっきの予知みたいなやつ」


「予知なんかできるわけないだろ」


「じゃあなんで俺の攻撃、全部分かったんだよ」


「だから、見てるだけ」


「どこを?」


「肩とか」


「肩?」


「腰。足。視線。重心」


「…………」


「刀を振るなら、その前に身体が動くだろ?」


「まあ……」


「踏み込むなら重心が変わる。斬るなら肩や腰が動く」


「…………」


「人間って、いきなり動けないんだよ」


 カイが自分の肩を動かす。


 右。


 左。


「こんなの見てんの?」


「見てる」


「戦いながら?」


「うん」


「全部?」


「できるだけ」


「…………」


 カイがアキトを見る。


「やっぱ気持ち悪い」


「なんでだよ」


「だが、間違ってはいない」


 後ろから声がした。


 教官だ。


「ほら」


 アキトが笑う。


「教官もそう言ってる」


「調子に乗るな」


「どっちですか」


 教官が端末を操作した。


 先ほどの模擬戦が映し出される。


「ここだ」


 カイが踏み込む。


 その瞬間には、アキトはもう動き始めていた。


「相手が攻撃してから避けているわけじゃない」


「はい」


「攻撃が始まる前に、次の行動を予測している」


 映像が進む。


 カイが袈裟斬りを放つ。


 アキトは懐へ入り、角を斬る。


「攻撃が外れた後、どこに隙ができるかも読んでいるな」


「まあ」


「『まあ』じゃねえよ!」


 カイが横から割り込んだ。


「なんでそんなことできんだよ!」


「分かんない」


「は?」


「見てたら分かる」


「だからそれが分かんねえんだよ!」


 教官が小さく息を吐いた。


「アキト」


「はい」


「それは、お前の武器だ」


「武器?」


「相手を見る力だ」


 アキトは画面を見る。


 そこには、自分より先に動いたはずのカイと。


 その先を行く自分が映っていた。


     ◆


 半年。


『勝負あり!』


 カンッ。


     ◆


 一年。


「そこ!」


『うわっ!』


 カンッ。


     ◆


 一年半。


『今度こそ――!』


「遅い」


 カンッ。


     ◆


 相手が変わる。


 武器が変わる。


 戦い方が変わる。


 それでも。


 見る。


 考える。


 予測する。


 避ける。


 そして。


 相手が崩れる場所へ、一撃。


 それが。


 アキトの戦い方になっていった。


     ◆


 二年後。


「出たぞ!」


 カイが端末を持って走ってきた。


「何が?」


「卒業成績!」


「ああ」


「反応薄っ!」


「どうせ後で見られるだろ」


「気にならねえの?」


「それなりには」


「嘘つけ」


 カイが端末を押しつけてくる。


「近いって」


「いいから見ろ!」


 アキトは画面を見る。


「…………」


 二年間の訓練記録。


 模擬戦。


 身体操作。


 戦術判断。


 状況認識。


 いくつもの評価が並んでいる。


 そして。


 総合成績――上位。


「おお」


「『おお』じゃねえよ!」


「いや、嬉しいよ」


「もっと喜べ!」


「予想より良かった」


「絶対嘘だろ!」


 アキトはもう一度、画面を見る。


 二年間。


 いろんな相手と戦った。


 速い奴。


 力の強い奴。


 変な癖のある奴。


 最初は分からなくても。


 見て。


 考えて。


 何度か戦えば。


 だんだん分かるようになった。


「やっぱり」


「ん?」


「ちゃんと見れば、分かるんだよ」


 カイが首を傾げる。


「何が?」


「相手が何するか」


 アキトは端末を閉じた。


「分かれば、負けない」


「言うねえ、優等生」


「事実だろ?」


「ムカつく」


「なんでだよ」


 二人は笑った。


 この二年間。


 アキトは自分の戦い方を疑ったことがなかった。


 疑う理由もなかった。


 実際。


 それで結果を出してきたのだから。


     ◆


 そして。


 プロデビュー戦。


 アキトは対戦相手の《キジン》を見ていた。


 細い。


 通常型より明らかに軽量。


 両手には、小型の手斧が一本ずつ。


「二刀流か……」


 まず見る。


 武器。


 構え。


 重心。


 癖。


 いつも通り。


 相手を理解すればいい。


 理解できれば。


 負けない。


 インカメラが接続された。


 対戦相手の顔が映る。


「…………」


 モヒカンだった。


『ヒャッハァァァ! 新人! 楽しもうぜぇぇぇ!』


「…………なんだこいつ」


 アキトはまだ知らない。


 この男が。


 二年間で初めて出会う。


 まるで読めない相手だということを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。