↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『負けず嫌いを極めたらいつの間にか世界を救ってた件 ―俺と29人の仲間の物語―』  作者: まろじろう
第二章「証明」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/19

第15話「証明」

ソウメイにスカウトされた。


 《群雄割拠》。


 プロチーム《百花》。


 普通なら、喜ぶところなのかもしれない。


 でも。


 アキトは断った。


 理由は簡単だった。


 まだ――行けない。


     ◆


「四本?」


「はい」


「何が」


「ワイヤー」


「聞こえてる。なんで増えてんだって聞いてんだ」


 整備区画。


 《凪》の前で、アキトは両腕を広げた。


「二本で相手の逃げ道を減らせたんですよ」


「だから?」


「四本なら、もっと減らせる」


「…………」


「六本なら――」


「待て」


「はい」


「増やさねえぞ」


「なんで!?」


 鉄三は盛大に顔をしかめた。


「お前、二本まともに扱えてんのか?」


「…………」


「扱えてんのか?」


「……一回勝ちました」


「質問に答えろ」


 鉄三が無精髭を掻く。


 口元には、いつもの火のついていない煙草。


「機体ってのはな、付けりゃいいってもんじゃねえ。リール増やせば重量も増える。電力も食う。熱も出る。腕の中に入れる場所だって必要だ」


「じゃあ――」


「二本でやれ」


「…………」


「二本を使い切ってから言え」


 アキトは《凪》を見る。


 右腕に一本。


 左腕に一本。


「……分かりました」


「やけに素直だな」


「じゃあ、この二本が強い奴に通用するか試してきます」


「おう。そうしろ」


「四強とか」


「おう――」


 鉄三が止まった。


「…………」


 アキトも止まる。


「…………」


「今、なんつった?」


「四強」


「馬鹿かお前」


「なんで!?」


「六勝九敗だろうが!」


「でも六勝してます!」


「なんで勝った方だけ見るんだよ!」


「だって九敗見ても増えないし」


「何が!?」


「自信」


「当たり前だ!!」


 整備区画に、鉄三の怒声が響いた。


     ◆


 でも。


 アキトは本気だった。


 ソウメイに言われた。


『あなたは、自分の強さをまだ勘違いしています』


 意味は分からない。


 だったら。


 確かめればいい。


 俺は今、どれくらい強い?


 ワイヤーを手に入れた。


 負けた。


 負け続けた。


 それでも少しずつ使い方を覚えた。


 そして十五戦目。


 初めて、自分だけの勝ち筋を見つけた。


 だったら。


 次に試す相手は――。


     ◆


 アキトは端末を開いた。


 《一騎》ランキング。


 その上位。


 四人の名前。


 四強。


 ソウジ。


 ウル。


 シヴァ。


 そして――。


「ヒカル」


 一人ずつ眺める。


 ソウジ。


 あの突きは今でも覚えている。


 初撃を避けた。


 二撃目。


 三撃目。


 逃げるたびに速くなった。


 最後には、逃げる場所すらなくなった。


「ソウジさんは……」


 もう一度やる。


 絶対に。


 でも。


 最初じゃない。


 今のワイヤーがどこまで通用するのか。


 まずは。


 別の四強で試したい。


「ヒカル……」


 戦績を見る。


 当然。


 自分とは比べ物にならない。


「…………」


 アキトの指が止まる。


 対戦申請。


 《一騎》では年間三十試合。


 対戦は、自分から申請するか。


 相手から届いた申請を受けるか。


 申請すること自体はできる。


 問題は。


 相手が受けるかどうか。


 六勝九敗。


 新人。


 四強が、そんな相手と戦う理由なんて――。


「まあ」


 アキトは笑った。


「送るだけならタダだし」


 押した。


 ――対戦申請を送信しました。


「…………」


 送ってしまった。


「まあ、断られるか」


 端末を閉じようとする。


 ピコン。


 ――対戦申請が承認されました。


「…………」


 アキトが固まった。


「早くない?」


 送ってから。


 何秒だ?


 もう一度画面を見る。


 間違いない。


 対戦成立。


 対戦相手――ヒカル。


「…………」


 口元が、ゆっくり上がっていく。


「マジか」


 心臓が鳴る。


 怖くない。


 と言えば。


 嘘になる。


 四強。


 ソウジの強さを知っているからこそ、分かる。


 同じ場所に名前を並べる人間が。


 普通なわけがない。


 でも。


 それ以上に。


「やれる」


 試したい。


 二本のワイヤー。


 自分が見つけた勝ち筋。


 どこまで通用する?


 ソウメイに言われたからじゃない。


 誰かに認めてもらいたいわけでもない。


「証明してやる」


 自分に。


「俺が、どこまで強くなったのか」


     ◆


 数日後。


 試合会場。


『続いての対戦カードを発表します!』


 歓声が響く。


『まずは――現在六勝九敗! しかし前戦では、ワイヤーをフィールドへ残すという異色の戦術を披露!』


 《凪》がフィールドへ入る。


『アキト――!』


 歓声。


 以前より。


 少しだけ大きい。


「……増えたな」


 アキトは小さく笑った。


 十五戦。


 勝った。


 負けた。


 また負けた。


 それでも。


 見てくれる人間が、少しずつ増えている。


『そして――!』


 実況の声が変わった。


 会場の空気も。


 一瞬で変わる。


『対するは――!』


 歓声が爆発した。


『《一騎》四強が一人――ヒカル!!』


「……っ」


 アキトが入場口を見る。


 巨大な影。


 最初に見えたのは。


 機体ではなかった。


 武器。


「……何だ、あれ」


 巨大。


 長い。


 《凪》と比べても、明らかにおかしい。


 超重量ハンマー。


 しかも。


 その後部には。


「ブースター……?」


 付いている。


 そして。


 その巨大なハンマーを担ぎ、一機のキジンが姿を現した。


 《トール》。


 歓声がさらに大きくなる。


『ヒカル選手! まさか新人からの対戦申請を即座に承認! これはどういうことでしょうか!』


 公開通信。


 ヒカルの声が会場へ流れる。


『んー?』


 軽い。


 想像していた四強の声とは、全然違った。


『だってさ』


 《トール》が《凪》へ顔を向ける。


『こいつ、面白そうじゃん』


「…………」


 アキトが眉を寄せる。


『この前の試合、見てたよ』


「え?」


『ワイヤー二本で、相手の逃げ道なくしたやつ』


「…………」


 十五戦目。


『あれ、面白かった』


 ヒカルが笑う。


『だから申請来た時、ラッキーって思ってさ』


「ラッキー?」


『うん』


 四強。


 《一騎》トップクラスのファイター。


 新人からの挑戦。


 普通なら。


 胸を貸す。


 そんな言葉が出てもおかしくない。


 でも。


 ヒカルは違った。


『俺さ』


 《トール》が巨大なブースターハンマーを持ち上げる。


『面白い奴と戦うの、好きなんだよね』


 アキトの口元が上がった。


「奇遇ですね」


『ん?』


「俺もです」


『ははっ!』


 ヒカルが笑う。


『いいじゃん』


 《トール》がハンマーを構える。


 その瞬間。


 空気が変わった。


「…………っ」


 アキトの笑みが消える。


 ただ構えただけ。


 なのに。


 分かる。


 あれを。


 まともに受けたら――。


 まずい。


     ◆


『両者、準備完了!』


 アキトは《凪》の両腕を見る。


 右に一本。


 左に一本。


 たった二本。


 でも。


 これで勝った。


 これで。


 自分の戦い方を見つけた。


 なら。


 四強にも。


 どこまで届くのか。


 見せてやる。


「俺は――」


 刀を構える。


「強くなった」


 ヒカルが笑った。


『じゃあ』


 巨大なブースターハンマーを肩へ乗せる。


『見せてよ』


 アキトの目が細くなる。


『試合――開始!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。