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第89話

伯爵様達と合流して『すぐやる課』部屋で休憩兼報告会となった。


「それで検証はどうだったのかしら?」


「はい、母上。現時点で『加速』と『硬化』については一旦完了です。加速は動いているものについては効果がありました。内容としては加速の指定値を上げれば上げるほど加速をする段階が早まるという結果です。」


「生き物に対しての検証はしたのかしら?」


「いえ、今回はしておりません。次回検証する時はアクダクトデンデンを捕獲して実施する予定です。」


「…害はないと思いますが、なるべく屋敷へは近づけないようにお願いするわ。」


ん?


伯爵様の顔が少し引き攣ったように見えたがこの魔物が苦手なのかな?


「『加速』については分かりました。『硬化』については?」


「そちらについては私から報告いたします。木材に対して順々に魔法陣をかけ、斬りつけたところ指定値が上がるにつれて斬りにくくなることが判明しました。」


「…バリー、どれくらいの力で斬りつけた?」


「軽く素振りする程度です。魔法陣の効果とはいえ焦りました…鍛えている者なら力を出せば斬り落とせます。」


珍しい、アーロンさんが質問した。


バリーさんの回答を聞い何かを考えているようだ、警備に使えるかどうか検討しているのかな?


「あとこの検証には続きがありまして指定値を上げすぎると木材の手応えが変わりました。」


「…手応えとは?」


「そこについては柴田様ご説明をお願いします。」


あくまで専門ではないですよと前置きをしてから僕は改めて硬度と靱性の違いを説明した。


伯爵様、アーロンさん、エディンさんが真剣に聞いている。


話終わると伯爵様は椅子に深く座り直し息を吐いた。


「そうですか…『硬化』について魔物対策で使えるかと思いましたが脆くなるのでしたら意味がありませんね。その『靱性』とやらの魔法陣が見つかったら即報告をくださいね?」


「バリー、その『硬化』の魔法陣だが見習いの訓練には有効かもしれない。後でお前が斬りにくいと感じた魔法陣を共有してくれ。」


「承知いたしました。」


「では、その『硬化』については後日検証方法を検討し直して実施するのね?」


「はい、その予定です。」


「引き続き問題を起こさないように検証をお願いしますね。この後は何の検証をするのかしら?」


「『シミ取り』の魔法陣について検証を行います。…危険がないようにかなり考慮をした検証となりますが。」


「その『シミ取り』とは危険なのですか?言葉としては洗濯に使えそうな魔法陣ですが…」


「僕もそう思いましたが魔法陣を発動する名称がシミ取りとは思えません。簡単に言えば『取り除く』魔法陣です。シミだけでなく、他のものまで取り除ける可能性があります。」


「…柴田様、その何かというのは?」


「生物に対して生命に関わるものを取り除けるかもしれません…」


僕の一言で部屋がしんと静まり返ってしまった。


「……そうだとしたら暗殺に使えますね。」


「…エディンの言う通りね。柴田様、今日は生き物に対しては検証は行わないのですよね?」


「はい、今日は物に対してのみ検証を進めます。」


「では、今日の検証が終わり次第その『シミ取り』の魔法陣に関する資料は最重要機密情報として扱いますので一切の資料を複製せずに提出してください。屋敷の金庫は保管します。後、生命に対しては行うときはフリー王子が戻ってからにしましょう。いいですね?」


その方針は僕も賛成だ、危険があるモノについては慎重であるべきだ。


伯爵様が慎重な方で本当に良かった。


願わくばgod_api側で生命を奪うようなことが出来ないよう制御されていてほしいものだ。

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