第88話
それからバリーさんの気が済むまで硬くした木材を斬りつける動作を眺めていた。
しばらくしてからこちらを向き口を開いた。
「柴田様!もっと硬度を上げたものでも斬れるか試したいのですがっ!?」
もう検証目的が違うのだが…
断っても後で頼んできそうだし今やってしまうかな。
ウィルさんを見ると苦笑いをしている。
こうなったバリーさんは珍しいのかな?
500……いや、思い切って1000で試すか?
紙にプログラムを書き魔法陣化をして用意するとバリーさんは紙を受け取り凝視している。
なんだか目が血走っていて怖いな…
「では!硬度1000で検証します!」
そうバリーさんが声をあげると同時に剣を振り上げ、勢いよく振り下ろした。
バコッ
…………粉々になった。
固くしたはずなのに、バリーさんすごいな…
しかし、当の本人のバリーさんは首を傾げている。どうかしたのだろうか?
「バリーどうしたの?」
「…いえ、先ほどまでは固かった木材ですがこちらはなんというか手応えがおかしいです。剣が当たってそのまま振り抜くつもりだったのですがそのまま粉々に…」
硬度を上げたはずなのに粉々になったのか…
何だろう?
…ダイヤモンドみたいなものか?
衝撃に弱いとしたら硬度のみ上がっていて靱性は上がっていない。
そうだとしたら説明がつくな。
2人に話してみよう。
「ウィルさん、バリーさんこの魔法陣についてですが、あくまで硬度だけかもしれません。」
「え?柴田さんどういうことですか?」
「詳しくはないのですが元の世界では硬度の他に靱性というものがあります。硬度は表面に傷がつきにくい、形状変化のしにくさを指します。それに対して靱性は衝撃を受けたときに破壊されずに衝撃を吸収する柔軟さ…ですかね。」
「その説明の通りだとしたら今やっている検証内容は誤りですね…衝撃を与えずに傷がつけられるかという検証方法に変更しないとですね。」
「なるほど、そのような特性があるのですね…今後、靱性の魔法陣が見つかったら是非私に検証をさせてください!」
バリーさんリベンジをしたいんだな。
テスト仕様書を修正しないといけないから『硬化』の魔法陣の検証はここまでだな。
次はあまり気が進まない『シミ取り』の魔法陣だ。
と思ったところで昼の鐘が鳴った。
「昼の鐘がなりましたし、終わった検証道具は片付けて休憩しましょうか。」
僕たちは『加速』と『硬化』で使用した道具を検証の結果を話しながら片付けをした。
「物での検証をしたので次は生きているモノで検証をしたいのですが『害虫』に対して行うのはどうですか?」
「『害虫』でしたら私もそこまで抵抗感はないので良いかと思います、ただ『加速』については動きが速くなるので捕まえやすいのが良いですかね?」
「それでしたらちょうど良い魔物がいます。アクダクトデンデンはいかがでしょうか?」
いかがでしょうかと言われても魔物は分からないからなぁ。
デンデンという響きはでんでん虫が思いつくがどうなんだ?
「良い案だと思うよ、バリー。今度検証をするときはアクダクトデンデンを捕獲してやってみよう。」
「私は魔物がわからないのでお二人の判断で問題なくて危険がないなら良いと思います。」
「では、後日検証する前に捕獲してきます。」
…魔物を捕獲って。
当たり前のように言っているがバリーさんがいうと何の変哲もなくなるようなことになってしまう。
僕も毒されてきているのかな?
「片付けも終わりましたので休憩しますか。」
片付けを終えたので僕たちは『すぐやる課』部屋に向かった。
向かう途中廊下の先から伯爵様達が歩いてきた。
「あら、検証は終わりですか?」
「いえ、昼の鐘がなったので休憩をするところです。『加速』と『硬化』についてはひと段落というところです。」
「…そうですか、ではその休憩について我々も混ぜてもらいましょうか。その検証結果をお聞かせくださいな。」




