第84話
検証を終えた僕達はそろそろ昼頃ということでそのまま執務室へ向かうことになった。
今日はウィルさんがいるから木箱を1つ運ぶだけで済んでよかった。
1つ1つは重くなくても10、20と増えればそれなりに重くなるんだよなぁ。
執務室前に着いたのでウィルさんが伯爵様へ声をかけるとドアが開いた。
エディンさんが開けてくれたようだ。
僕達は部屋に入り伯爵様へ納品された品について全て魔道具化した旨を伝えた。
あとウィルさんが作った各魔道具の仕様書兼説明資料も渡した。
伯爵様は資料を一読し、口を開いた。
「魔道具化をする作業と検収ご苦労様。それで後はこの魔道具の名前だったかしらね、あれから案は出なかったのかしら?」
僕はウィルさん、バリーさんと見たが首を横に振るだけだった。
あの時は言えなかったがゲームに出てくるような名前を提案してみようかな。
「…1つ出していなかったのですが『氷水晶器』というのはいかがですか?」
それを聞いた伯爵様は少し考えてから席を立ち大人数用の魔道具へ近づき手を置いた。
「ではこれらの魔道具を『氷水晶器』と呼ぶことにします。大きさに合わせて大型、小型とします。」
おぉ、今度は案が通った。
フリー王子がいたら『却下』と言われそうだけども…
「後こちらの『氷水晶器』ついては王宮に献上します。小型の『氷水晶器』も何個か同封しましょう。」
王宮に献上をすればフリー王子も『魔法陣すぐやる課』の活動について説明しやすいだろうし、国王陛下からお墨付きがもらえればトラブル防止になるだろう。
後は領内に行き渡らせるためにはスミス親方達と僕達の頑張り次第だな。
「それで柴田様、かき氷を街へ提供するときに屋台を出そうかと思います。儲けもある程度は考えないといけませんが柴田様の世界ではどれほどの価格でしたか?」
「いや、それは一概には言えませんが安いかき氷だと200円程度…えぇっとこの世界だと銅貨1、2枚程度になるのかなと。高級なものはマッテオさんが作るような果実などをふんだんに使ったものですね、それだと10倍の価格になるのかなぁと。」
この世界の貨幣価値を正確に把握していないから以前バリーさんに聞いた貨幣で答えてみたが大きな違いはないはずだ。
「なるほど…銅貨1、2枚は庶民でも簡単に出せるわね。では料理長に安価で出来るソースを開発するように言っておきましょう。かき氷の容器やスプーンは木製にするからカッター親方のところに頼みましょうか。」
木工工房のカッター親方か…そのうち会うことになるかな?
しかし、かき氷は売れるのかな?
「あの、伯爵様…今更ですがかき氷が売れるか心配になってきました。あまり数は頼まない方がいいかも知れ…」
「いいえ、売れますわ!異界の甘味を再現と謳い文句で掲げれば興味を引きます。それに街中は召喚された異界の柴田様の話題で持ちきりですもの。」
「はぁ、そんなものですか?」
「えぇ、そういうものです。売れない心配はしなくても問題ありませんわ。」
それじゃあ、気にしないことにしよう。
魔道具の名称も決まったことだし、部屋を出ようかな。
「あ、柴田様には個人的なお話がありますのでまた残っていただけませんか?」
……またということはあれかな?
ウィルさんとバリーさんが部屋を出ていく。
「さて、柴田様に残っていただいたのはウィルとベラちゃんのことです。」
「そんな予感はしましたが、昨日の今日ですよ。進展も何もないと思いますが…」
「接点を多くすればいいと思いました。ですのでスミス親方の工房を『魔法陣すぐやる課』の外部協力の工房として指定しようと考えております。これからも魔道具の素材や柴田様が作りたいもの等はスミス親方の工房で一括して引き受けをすれば機密情報なども漏れにくいですし漏れても原因の特定が容易いです。もちろん親方の腕も信頼しているわ。」
…なんかそれとなくもっともらしいこと言っているけど私利私欲が混同していないか?
アーロンさん、エディンさんどうなの?
2人を見るとアーロンさんは目を瞑って上の方を見ているしエディンさんは目を瞑って首を振った。
まぁ、日頃迷惑をかけているから伯爵様にこれくらいの役得があってもいいか。
「分かりました、鍛冶関係についてはスミス親方のところで問題ないと思います。」
「そう!分かってくれて良かったわ。それでベラちゃんのスキルは分かったのかしら?」
「え?、あ、はい。昨日から試しているはずです、そのうち結果が出るかもしれません。」
「そう、結果が出ればいいわね。その時は私も目の前でベラちゃんのスキルを見せてもらおうかしら。」
そうだ、さっきバリーさんが言い忘れていたことを聞いておこう。
「スキルといえば昨日『すぐやる課』でスキル一覧を作ろうかと意見が出ました。伯爵様としてはこのような資料を作るのは問題ないでしょうか?」
「そうね、スキル一覧についてはこれから必要になってくるわ、フリー王子としてもその資料は欲しいはずよ。」
この世界に個人情報保護法はあるかは分からないが鑑定の魔法陣がインフラになっていたことを考えると大丈夫だよな?
「スキル一覧にはその所有している個人名は載せますか?」
「そうね…一応記載しておいて頂戴。ただ保管に関してはこの屋敷の金庫に保管させていただきます。」
それなら僕としても問題はない。
フォーマットは後でウィルさんとバリーさんとで考えておくか。
…やることが増えたな。




