第77話
「それで発注は出来たのかしら?」
「はい、母上。見積書は5日後に出来上がったものと一緒に持って来るそうです。後、スミス工房のベラさんですが…」
ウィルさんが例の鉄製のフィギュアを伯爵様の前に置いた。
伯爵様はフィギュアを手に取るとマジマジと観察をし始めた、出来栄えに目を見開いている。
横に控えていたアーロンさんも『ほう…』と驚きの声を上げている。
「これはあの娘が作ったのかしら?」
「はい、目の前でスキルを使い一瞬で鉄の塊が私の形となりました。本人が言うには鉄しか出来ないと言っていますが、この領のためにも確かめておきたいです。5日後に屋敷に来る際に鑑定の魔法陣で確認をしようかと。もちろん、本人が希望したらですが…」
「…そう、あの小さかったベラちゃんがねぇ。それで鑑定を受けさせる時に口外禁止の契約書を書いてもらうつもりね。」
「はい、そのつもりです。もし、鉄以外でもスキルを使えるとしたら工房がもっと盛り上がると考えています。この領がもっと活気付くと思います!」
「……そう。では5日後鑑定の魔法陣を使えるように契約書の準備をしておきなさい。報告は以上かしら?」
まぁ、他にはないな。
工房に発注と説明に行っただけだからなぁ。
「はい、以上です。」
「ではもう行っていいわよ。……柴田様、少し相談があるので残ってくださらない?」
あれ?
この話の中で僕は特にやらかしていないよな?
相談だから別の話か?
そう思っているとウィルさんとバリーさんが執務室を出て行った。
エディンさんはいつもの定位置である伯爵様の後ろの方へ移動した。
「…さて、少し仕事とは別件なのだけれども単刀直入に聞きます。柴田様から見てウィルとベラさんはどう見えました?」
「どうって…昔から知っている間柄という感じがしましたが…あ、でもウィルさんの鉄人形は精巧に出来ていたのでよく見ているのかなと。」
そう答えると伯爵様は深いため息をついた。
何だろうか?
…そういうことだろうか?
「今、柴田様が思われていることで合っていると思います。年は3つほど離れていますが小さい頃から知っている良い娘なんです。執務の合間にウィルの縁談を断る手紙を送るのにもそろそろ疲れてきたので親としても、手間を減らすという意味でも身を固めてほしいのです。」
あぁ、そうなのねぇ。
ウィルさんとベラさんかぁ。
「本人同士の気持ちだとは思いますがその内進展するのでは?」
「そう思って10年近くです、付かず離れずの幼馴染の間柄が続く感じで…」
「スミス親方は知っているのですか?」
「えぇ、それとなくは…はぁ、まだまだかかるかも知れないわ。」
「ま、まぁ結婚していない僕が言うのもアレですが本人に任せるのが1番良いのではないでしょうか?」
こういう話は縁遠かったから話を振られても答えられないなぁ。
恋愛は専門外だ、おじさんは見守ることしか出来ないな。
「では、今後何かあの2人に展開があれば教えてください。こちらも動く必要があるかも知れないので。」
何かねぇ…
5日後にいきなり進展するわけでもないだろうし伯爵様の苦難は続きそうだなぁ。
話は終わったので執務室を出た僕は厨房に寄った。
もしかしたら5日後にかき氷にかけるソースが必要かも知れないと伝えるとマッテオさんは『承知しました』と真剣な顔で一言だけ答えた。
色々実験中なのだろうから期待をしておこう。
その後『すぐやる課』部屋へ戻ると2人はお茶を飲んでいた。
何を話していたかを聞かれたがお茶を濁しておいた、まさか本人に言う訳にはいかないしなぁ。
2人とも何か納得したような顔になり『失敗は誰にでもありますから』と慰めてきた。
…まぁ、誤魔化せたのなら良いか。
親方が納品まで時間ができたので久しぶりにインデックス作成をしましょうかと提案すると異論は出なかった。
まだまだstdmagic.hの一覧作成完了までは道のりが長い。




