第76話
昔から知っているウィルさんが言い出せばいいのだがと思っていると親方が口を開いた。
「それで氷はどうする?実物を使って動作を見て調整の必要があるが…」
おっと、まずはかき氷機の話を終わらせるか。
「動作確認をする時は少し手間ですが伯爵邸に来ていただくか我々が工房に伺います。氷を出す魔道具を作って工房に置いておくと狙われる危険がありますので。」
「あぁ…そうなるか、仕方ねぇ。図面通り作って屋敷へ持って行く。5日後でどうだ?その時に出来上がったものも持って行く。」
「ではかき氷機は1つでお願いします。…ベラちゃん、スキルのこと知りたくない?」
お、ウィルさん切り出したな。
鉄だけ加工できるのか、それとも条件があるのか気になるよな。
「…気になりますが出来るのですか?」
「出来るよ、ただ口外出来ない方法だからもし知りたかったら次に屋敷に来る時までに考えておいて。」
「…承知しました。」
「おい、ウィル!それは合法なんだろうな?」
「えぇ、この間私が発表した魔法陣です。ただその後に公にする事が出来ない事態が発生しまして…」
詳細情報が出る鑑定の魔法陣はまだ公に出来ないからなぁ、屋敷で口外しない旨の契約書を書いて貰えば大丈夫かな。
それに僕も純粋にベラさんのスキルを知りたい、鉄以外も加工できるならこの先作ってもらいたいものが出てくると思う。
「合法で危険じゃなければいい、それじゃあ5日後に屋敷へ持って行くから楽しみにしておけ。ベラ、あとは頼んだ。」
そう言うとスミス親方は立ち上がり部屋を出ていってしまった。
「すいません、うちの父が。それで今回は見積もりより先に製造に入りましたが見積もりはどうします?」
「先ほどの数で作成してもらえるかな?製造については止めなくていいから。」
「では、5日後にそれぞれの見積書を持って行きますね。スキルのことも考えておきます。」
こうして無事発注は済んだ、屋敷に帰って伯爵様に報告だな。
工房の事務所を出てベラさんに挨拶を済ませ家路に着く。
「それにしてもあの工房の魔法陣は凄いですね。」
「そうですよね!?あれで各地の工房から問い合わせがあったのですがそれから間もなくして…」
「そうですか…あの魔法陣って音だけでなく熱も和らげる効果があります?」
「そうなんですよ!それで各地の工房から是非うちにもと言う問い合わせが殺到したんですよ。工房はどうしても熱がこもりますし。」
「凄い方だったんですね…」
「はい、自慢の父です!」
注文依頼に行っただけだったが色々あったな、今度はゆっくり街中や工房を見て回りたいな。
帰り道では監視の気配もなく屋敷へ帰れた。
そのまま伯爵様がいる執務室へ向かい、部屋へ入っていった。
「ご苦労様、問題はなかったかしら?」
「行きの道中に監視をする目がありましたがすぐに無くなりましたので他領の者で目的は柴田様の所在と容姿の確認かと…」
「…あの夜に参加をしていない領となると限られるわね、他国の可能性は?」
「可能性はありますが、私のスキルで確認しましたのでこの国の者ですね。」
エディンさんのスキルか、気になるが聞いてもいいのだろうか?
「それなら他領の者ですね…柴田様、念の為しばらくは外出を控えてください。行動を制限したくありませんが柴田様に危険が及ばないようにするための処置です、ご理解ください。」
「えぇ、今日いきなり監視をされていると言われて焦りました。外出もやめておきます。ただ、危険性がなくなったら改めて町の観光をさせてください。とても綺麗でしたので。」
「ご理解いただいて助かります。異界から来た柴田様にも綺麗な街並みに見えるのでしたら良かったですわ。景観については苦労しましたわ、ゴミ捨て場の集約とか街中の清掃をどうするか。数年かけてやっと根付かせたものです。」
他にも仕事があるだろうに、夫婦揃って仕事ができる人だなぁ。
召喚された先が伯爵様の屋敷で良かった…




