第75話
「それではこの給水魔道具自体の重さに水を満杯にしても耐えられる台も依頼して良いでしょうか?」
「おう!あの冷たい水の為だ、いいぞ。…しかし、この間の設計図もそうだったがこっちが知りたい内容全部載っているから楽でいいな。新人には毒だがな。」
「スミス親方、どの辺が毒になるのですか?」
「ん?依頼者っていうのは自分の頭の中にあるやって欲しい要望を全部伝えきれねぇんだよ。それをな、俺らは聞き出さないといけないんだよ。」
「あぁ、そうですね。私も鍛冶ではありませんが製造をしていたのでお気持ちは分かります。」
「お、そうなのか異界人!?話がわかるじゃねぇか、じゃあ毒になる理由はわかったな?」
「…おそらくですが新人がそういったものに慣れてしまうと顧客の要望を汲み取る事が出来なくなる、からですかね?」
「まぁ、そういう事だ。ということはこの設計図の作成はお前が主導か?」
「いえ、設計図はウィルさんとバリーさんが主に作成して一度出来上がったものに対して3人で評価会をして修正をかけました。」
「はーん、3人がかりで粗探しして設計したのか?」
「粗探しというよりは改善探しですかね。」
「ふーむ、これは異界のやり方か?」
「通常の設計方法ではありませんがこういうやり方もありだとは思っています。」
僕は第一人者では無いが設計のやり方については色々ありすぎてどれが正解とは言えない。
ただ、作業毎のレビューと言う評価会は重要だとは思う。
今回はレビュー時に出た重さと言う情報を載せたから伯爵様もスミス親方も専用の台が必要ということを指摘してくれている。
「なるほどなぁ、異界人!この仕事が終わったらお前の所の製造のやり方を教えろ、この世界でも通用するものがあるかも知れねぇ。」
「はい、全然大丈夫ですよ。その代わりスミス親方たちのやり方も教えてくださいね。」
「おう!で、この大人数用の給水魔道具は30、台もつけるでいいな?」
「はい、お願いします。」
「んで次はこの間の氷を削るやつだな、早く見せろ。」
僕はスミス親方とベラさんに設計図を手渡した。
2人ともしばらくペラペラと設計図をめくり読んでいる、しばらくするとスミス親方が笑い出した。
なんか変なことでも書いたっけ?
「色々な設計図を見てきたがこんな部品ごとの設計図は初めてだ!これを寸法通り作って組めばいいんだな?」
「はい、中には鍛冶の事に明るく無いので確認させていただいている内容もありますがそちらはどうでしょうか?」
「ん?あぁ、このハンドルを回すとこの軸も回るとかだろ?出来るぞ。それとこの氷を固定する棘についてはベラが適任だな。」
「はい、こちらでしたら私が出来ます!」
ベラさん?事務方じゃないのか?
「あれ?じゃあ、ベラちゃんが小さい頃遊んでいた鉄の人形って…」
「あー、…私が作りました。」
小さい頃作ったって…
鍛冶の現場に入れてもらえたのか?
「ベラ見せてやれ。」
スミス親方に言われ、ベラさんは棚にあった小さい鉄の塊を取ると手で包むように持った。
すると指の隙間から一瞬光が漏れた。
まさか、スキルか?
包んでいた手を外しテーブルに鉄の塊であったものが置かれた。
「…凄い、これウィルさんですか?」
「はい、あの頃の人形よりは精巧に作れたと思いますよ。」
まさか異世界でフィギュアを見るとはなぁ。
それにしてもよく出来ているなこのウィルさん、髪型もそっくりだし心なしか艶まで…エディンさん、バリーさんも覗き込んで感嘆の声を上げている。
「最初に人形を見せてきた時は驚いたぞ、誰がベラを現場に入れたと犯人探しをしたな。そしたら今のように作って見せたから腰を抜かしてその日は仕事にならなかったな…」
小さい子が鍛冶仕事をする危険な場所に入ったかもとなると焦るよな…
それにあのスキルを見せられたら腰を抜かしても仕方がない。
「ベラちゃんのスキルは鉄以外にも使えるの?」
「…鉄以外の金属は上手くいかなくて、余ったもので練習をしてみたのですがそれも上達しなくて。」
うーん、何か条件があるのだろうか?
鑑定で見てあげればいいのだがどうなのだろうか?




