第74話
…あれ?
魔道具職人と言うことは平民ということになるが…
「てっきり僕は貴族同士で婚姻を結ぶものだと思っていましたがそのような制度はないのですね?」
「あぁ、階級に見合う婚姻制度ですね?昔はありましたが今は無いですね。」
「補足ですが一部古い考えの貴族や成り上がりの商人はまだその考えをしているようです。王族については外交の問題も関わって来ますのでまた少し違って来ますが…」
「あと父は侯爵家の3男だったそうです。3男ですので家督を継げないならと魔道具職人になったそうです。どうして母上と結婚することになったとかは教えてくれなかったんですよね。」
なるほどなぁ、その制度は廃れていったが一部にはあると。
王族は外交問題かぁ、物語のような世界だなぁ。
王族といえばフリー王子は色々無視してやりたいようにしそうだなぁ。
「それで父が協力した内容ですが、工房が近いのに音が聞こえないと思いませんか?」
「そう言えば鍛冶ですよね?鉄を打つ音とか聞こえないですね?」
「そうですよね!?火災や鍛冶音の事情から外れにありますが音に関しては一切無いですよね?その秘密は工房の中にあるんです!」
工房の中に音を漏らさないという仕組み、ウィルさんの父親の成果があるのだな。
エディンさんが工房のドアを開ける。
ノックはいいのだろうか?
工房の中に入ると鉄の匂いが鼻につくが、ものすごく静かだった。
しかし、人はいるし大きな炉の前で鍛冶をしている。
赤く熱せられた鉄、打ち付けられて火花が散っている様子が見える。
だが音がしない、凄いな…
……そう言えば思ったほど暑く無いな、何だここは?
ウィルさんが僕の肩を叩き壁の方を指差す。
あれは魔法陣か?
それも巨大な…
これがウィルさんの父親の仕事の成果か。
「(すごいですね。)」
あれ?
言葉を発したはずだが僕の声が無い。
そうか、あれが魔法陣の効果か!?
耳がおかしくなったのかと思った。
エディンさんがスミス親方とベラさんを連れてこちらへ来た。
ん?
あぁ、一回外に出るんだな。
僕達は工房の外へ出ると音が生き返った。
すごいな、ここまでの防音設備なのか。
自分たちの声が聞こえなくなるのが欠点だが…
「それで今日はどうした?まだ小型の魔道具にする入れ物はできていないぞ!」
「いえ、今日は大人数用の給水の魔道具の設計書とかき氷機の設計図が出来ましたので正式に発注依頼に来ました。」
「何!?出来たのか、見せてみろ!」
「お父さん!ここじゃなくて皆さんを事務所に通してから!」
ベラさんに一喝されたスミス親方はシュンとなり、『こっちだ』と小さい声で事務所に案内をしてくれた。
力関係的に娘さんの方が強いのか…
事務所は質素な机と椅子がある、4人分だな。
2人は立たないといけないから僕は立っていよう。
「柴田様は座ってください、かき氷機の説明がありますので。」
「そうですよ、1番構造について詳しいんですから。」
僕とウィルさんが並んで座り、正面にスミス親方とベラさんだ。
僕らの後ろにはエディンさんとバリーさんがいる。
さて、設計図の説明をしつつ発注依頼だ。
ウィルさんが大人数用の給水魔道具の説明をしていく、スミス親方は睨むように、ベラさんが真剣な顔で設計図を見ている。
時折『細けぇな』や『綺麗な図面…』と感想が漏れている。
「それで、この大人数用の給水魔道具ですが30発注を考えています。まずはこちらの制作は可能でしょうか?」
「問題はねぇ、これほど細かく書いてりゃ若手1人でも作れるだろ。ただなぁ…」
「…重さでしょうか?」
「何だ、分かってるのか?この設計図に記載されている重さなら台を作っちまった方が早いがどうする?」
「そうですね、金額次第ですが頑丈な素材になると価格は上がりますよね?」
「そうなるな。…と言いたいところだが今製作依頼を中止されて行き場の無い素材がたんまりある。それを使わせて貰えば手間賃だけでいいぞ。」
「素材代もお支払いしますよ。」
「いえ、大丈夫です!この余っている素材ですがタダで貰ったようなものなので。」
ベラさんにどういうことなのか聞いてみたところ、とある貴族が素材を持ち込んで銅像の製作依頼をして来たのだが突然連絡が途絶えてしまったらしい。
詳しく調べてみたらお家取り潰しになったとのことで素材を返却することもできないので貰ってしまおうとなったらしい。
…まさかね、フリー王子の行動じゃないよね?




