第73話
発注依頼も決まり、エディンさんも戻ってきたので早速スミス親方の工房へ向かうことになった。
歩きで30分ほどと言うことなので領内の案内もすると言うことで歩きで行くことになった。
思えば屋敷の外に出るのは初めてだな、どんな町並みなんだろうか。
エディンさんを先頭にウィルさん、僕、後方にバリーさんと言う隊列で歩いて行く。
屋敷は街に隣接しているようですぐに着いた。
石畳の道の両脇には赤茶色の煉瓦造りの建物が並んでいる。
ゴミも落ちていないし綺麗だな。
それにパンを焼く匂いや走り回る子供、道ゆく人たちの声。
生きている街だ…
「柴田さん、どうです?綺麗な街並みでしょう。」
「はい、とても綺麗だと思います、それに活気もある。住んでいたところと違った雰囲気で元いた世界だとお洒落とかそう言った部類になるかと思います。」
そう僕が答えるとウィルさんは満足そうだ。
母親が治めている領地だものな、言葉にはしていないが自慢なのだろう。
まぁ見かける人も暗い顔はしていないし善政を敷いているのだろう。
「そう言えばスミス親方が言っていましたが僕に関して噂が流れているのですか?」
「あぁ、柴田様の噂に関しては名前が合っているくらいで後は根も葉もないものですよ。子供で合ったり老人で合ったり、美青年や美女なんていう噂もありますね。」
そうエディンさんが答えてくれた。
屋敷の外に出ていないから噂が一人歩きしているのだな、ただのおじさんということが知れたら美青年や美女と信じている人ががっかりしてしまうのではないか?
訂正するべきなのか迷うな。
「容姿に関してそのような噂があるのでしたらしばらくはひっそりと暮らしていた方が良いかもですね…」
「実際の柴田さんは加減を知らないおじさんですものね。」
「少しは主様の心の平穏を考えてくださいね。」
皆好きに言ってくるな、普段話さないエディンさんまで。
バリーさんは頷いている。
…まぁ、伯爵邸の生活に馴染んでいると考えることにするか。
「…すいません、監視をされているようなので声を抑えていただけますか?」
え?
監視?
エディンさんが急に声を低くしていったけどどこにいるんだ?
街中には数多くの人が歩いているのに…
「柴田様辺りを見回さないでください。後方に1人、斜め右に1人いますね。バリー、後ろは頼む。」
「承知いたしました。」
「あの、エディンさん。走った方が良いですか?」
「いえ、敵意は感じられませんので他領の情報収集役でしょう。念の為警戒しつつ会話は極力控えて頂けますと助かります。」
そうだった。スキルの内容を知られたら狙われるという話だった。
余計なことはせず黙っていよう。
今までに無い緊張感を持ちながらしばらく歩いたところでエディンさんが振り返った。
「監視の目が無くなりました。早々に引き上げましたのでおそらくは柴田様の容姿と所在の確認だったのでしょう。あの召喚された日に招待されていない領の者かと。」
「あとで母上に言っておきましょう、今後増えてきそうですね。」
「そうなると柴田様の外出時の護衛体制を決めなければなりませんね。」
「察知については私1人で可能ですが人数で来られると最低5人は欲しいですね。しかし、そうなると屋敷の警備体制や街の巡回が手薄になりますね…」
「外出予定はしばらくは無いので護衛については屋敷に帰ってからにしましょう。」
答えが出しづらい問題を切り上げしばらく歩くと街の外れの方に工房らしき建物が見えて来た。
「あそこがスミス親方の工房ですか?」
「えぇ、かなり立派な建物なんですよ。私の父も生前ですが協力したのですよ。」
ウィルさんの父親か、見かけないと思ったが亡くなっていたのか…
大工とか建築士だったのかな?
「ウィルさんのお父様は建築関係のお仕事を?」
「いえ、魔道具職人でした。」




