第69話
「スミス親方に作ってもらいたいモノがあるのですが…」
「おう、何が作りたいんだ?」
僕はうろ覚えの記憶で昔ながらのかき氷機を描いて見せた。
親方が真剣な目で見ている、娘さんも横から覗き込んでいる。
「氷を削る道具です、少し記憶があやふやなのですがこういったものは作れますか?」
「これはお前さんの世界にあったものか?あと、これを動かすとどうなるか説明をしろ。」
「はい、僕の世界にあるもので暑い時期に活躍しています。このハンドルを回すとこの軸が連動して…」
僕は一通りかき氷機の説明をすると親方は黙ってしまった。
どうしたのだろうか?
他の皆は『氷を削る?』、『食べ物なのか?』と疑問の声が聞こえる。
「…くくく、面白い。異界の職人と腕比べが出来るとはなぁ!おい、異界人!これは他の工房のやつに話したか!?」
「い、いえ。スミス親方が初めてです…」
「よし!そのかき氷機とやらの製作は俺が請け負ってやる。ところで金は持っているのか?」
「ちょっとお父さん!言葉使い!」
そういえば伯爵様に衣食住の面倒を見てもらっている身だった…
どうしよう…
「スミス親方、いくらぐらいかかりますの?私が出しますわ。」
「そうだなぁ、材料費だけでいいぞ。大体銀貨10枚だな。」
「では、このかき氷機と先ほどの魔道具について大人数用に対応したものの発注数を精査しますのでその時に改めて見積もりをくださいな。」
「おう、最初の小型の魔道具についてはどうする?」
「そちらについては20ほど発注しても良いかしら?清算についてはまとめていたしますわ。」
「分かった、今日から手をつけるから4日後には出来る。出来次第届けるな。後、かき氷機については動作確認用の氷が欲しいな、用意出来るか?」
「はい、なんとかします。」
「それじゃあ、話はこれで終わりだな。伯爵様、帰るぜ!」
「えぇ、スミス親方。お帰りもお気をつけて。」
親方が勢いよく立ち上がり部屋を出ていった。
娘のベラさんは何度も『父がすみません』と頭を下げてから親方の後を追うように部屋を出た。
しばらくの沈黙の後、伯爵様がこちらを向いて口を開いた。
「では大人数用の魔道具については対象人数を20として再設計をお願いね。後、柴田様。親方にモノを頼む時は事前に一言くださいね。」
「あ、はいすいません。以後気をつけます。」
「…それでかき氷とやらは氷を削るみたいですがどうなのかしら?ブディーノのように美味しいのかしら?」
よし、ここは美味しいモノであることをアピールして挽回だ!
「ブディーノとは違いますが暑い時期に削った氷に果実で作った甘いソースをかけて食べるのですが美味しいですよ。甘いソースについてはマッテオさんに協力してもらわないといけませんが…」
「では出来ましたら試食をさせてくださいね?」
「はい、ぜひ感想を聞かせてください。この世界でも受け入れられればあのかき氷機は需要が生まれると思いますので。」
その後、再設計内容とかき氷機について打ち合わせをした。打ち合わせの結果、明日中に伯爵様へ資料を提出することになった。
『すぐやる課』部屋へ戻り大人数用の魔道具の設計はウィルさん、バリーさんに任せて僕はかき氷機の設計を始めた。
昔見たかき氷機を思い出しながら描いているがイマイチ自信がない…
普段見ないモノだものなぁ。
設計図を書いていると時折ウィルさん、バリーさんから質問が来る。
水の量や氷の大きさ、個数についての仕様をダブルチェック、いやトリプルチェックしている感じだな。
2人が決める仕様について聞いてて妥当というか全く問題はない。
この辺りは本当に主席、次席を思わせる。
順調だなぁ。
「……あ。」
「柴田様、どうかされましたか?」
「四角い氷どうしよう…」
「あぁ、柴田さん忘れていたんですね?」
部屋が笑い声で満ちた。




