第68話
結局1000枚全てを王宮へ献上することになった。
1000枚で問題なかったでしょうと言いたかったが、また怒られそうなので我慢した。
風呂の設備一覧についてはウィルさんに清書をしてもらい、清書してもらったものを伯爵様に提出した。
そして数日後、鍛冶工房の親方が屋敷へやって来た。
良きタイミングで呼んでもらえるそうなので『すぐやる課』部屋で2人と待っていると…
「なにぃ!?そんなことが出来るのかっ!?」
突如屋敷中に野太い声が響き渡った。
「…今のは?」
「声からの推測ですがスミス親方かと、言葉遣いは乱暴ですが優しい方ですよ。」
「子供の頃よく工房に遊びに行ったなぁ。剣を作っているところを見学させてもらいましたよ。」
そうか、あの怖そうな声が工房の親方か。
怒鳴られているんじゃない、声が大きい人と思っておくか…
そう思っているとメイドさんから『伯爵様がお呼びです。』と声がけをされた。
ウィルさん、バリーさんと応接室へ向かう。
応接室に近づくにつれ親方の声が鮮明になる、普段から声が大きいのか。
ドアの前に着きウィルさんが声をかけると『入りなさい』と返事があったので部屋に入る。
いつも通り伯爵様が奥の方に座っていて後ろにアーロンさんとエディンさんが控えている。
伯爵様の向かいにはアーロンさん、バリーさんくらいがっしりした大きい男性が座っている、横には女性だ。
この人も鍛冶工房の人かな?
「スミス親方、今お話しした魔道具の試作品を作った3人ですわ。説明不要かと思いますが息子のウィルにブレイ男爵家のバリー、そして…」
「おお!ウィルにバリーか!?お前ら大人になったなぁ!」
「お父さん!伯爵様はまだ話しているよ。」
「ん?そうだった、すまねぇ伯爵様。」
「えぇ、大丈夫ですわ。そしてあちらの男性が柴田様ですわ。」
「ほぅ!お前さんが今噂で持ちきりの異界人か!?…なんか噂と違うな?」
どんな噂が流れているんだ?見た通り普通の中年だぞ。
「こほん、柴田様。こちらはこの領で鍛冶工房を運営しているスミス親方とその娘のベラです。早速ですが例の魔道具について説明を。」
「はい、承知いたしました。では、ご説明させていただきます。ウィルさん、バリーさん資料をお願いします。」
あらかじめまとめておいた設計図を配り、寸法や魔法陣の仕様を説明する。
親方は頷きながら図面をいろいろな角度で眺め、娘のベラさんは資料を見ながら『ここは曲げ加工で…』と呟いている。
魔法陣の仕様を説明していたところ親方が手を挙げた。
「ちょっといいか?」
スミス親方が説明を遮った、どうしたのだろうか?
「暑さ対策の魔道具なんだろ?個人で使う分には良いかもしれないが大人数がいるとグラスいっぱいの水じゃあ足りねぇ、一気に大量の水は出せねぇのか?」
そうか、大人数がいるとあの量じゃ足りないか…
そうするとどれくらいの量があれば良いのだろうか?
「水の量や氷の量も調節できます。どれくらいの量が必要ですか?」
「そうだなぁ、うちの工房は20人いるからそれくらいの量は一気に出て欲しいな。暑い時期で冷たい水が飲めるなら数杯飲む奴もいるだろう。」
そうすると200ccを20倍して数倍だから…10リットルは一気に出力したほうがいいのか。
キャンプや運動部が使うウォータータンクの絵を描いて親方に見せた。
「僕がいた世界にあったモノですがこういったものは作れますか?」
親方は紙を受け取ると一瞥して答えた。
「でかい入れ物に蛇口を付けるだけだろ?簡単に出来るぞ。材質はなんでもいいのか?」
「出来れば内側については水が長時間触れるので錆びないものが良いです。」
答えながら伯爵様にもウォータータンクの絵を描いて渡した。
伯爵様はそれを見て思案顔になる。
「…そうね、個人個人に渡さなくても人が集まるところに給水所を設ければいいわね。各村にもそれが1つあれば十分だわ。数については再度検討するとしてこの大きさのものは1つどれくらいで出来るかしら?」
「そうだなぁ、今急ぎの仕事もないから若い衆に任せるとして…3日あれば1ついけるな。実際はもっと早く作れると思いますがね。」
若い衆に任せるんだな。
…そうだ、アレを作れるか親方に聞いてみようかな?




