第67話
もう見慣れました、伯爵様の執務室のドア。
ウィルさん、バリーさんに連行されてきてしまった。
何度目だろうか?
「母上、緊急ではないのですがお話ししたいことがあります。本日お時間はありますか?」
少しの沈黙の後、『今なら大丈夫よ』と返答があったので部屋に入る。
「それで今度は何をやったのかしら?」
もうすでにやらかしたという前提で進められているがそんなに問題行動は起こしていないんだがなぁ。
「まず試作品の方からですが4000回まで試したところ魔石は砕けずまだ使用可能という状態でした。」
「…聞き間違いかしら?最近信じられないことが多すぎて現実感がないのだけれども4000回、間違いなく使えたのね?」
「はい、私とバリーで確認したので間違いありません!それでこのまま検証を続けるかどうか迷っていたのですが柴田さんから異界の知識を貰いまして…」
ウィルさんは僕が話したメーカー保証の考えを伯爵様に話した。
伯爵様は考えるように聞いている。
「話はよく分かりました。魔道具を配布する際に4000回の動作保証を謳えば良いという考えですね?しかし、工房や商人へこの考えを広めるのは少し待ちましょう。」
「母上、それはなぜでしょうか?商人は儲けが少なくなるかもしれないという危惧というのは分かりますが、工房には伝えても良いかと思いますが。」
「そうね、良い考えであるのは間違いないわ。ただ準備もなく考えを広めると混乱を招くだけよ。それに魔道具工房は柴田様のようにすぐ製品化できるようなものではない、ある意味一品一品が特注みたいなものよ。その長い時間かけて作ったモノに対して耐久試験なんかやっていたら儲けどころではなく生活もままならなくなるわ。…この考えについてはフリー王子に報告しつつ広めるかどうかの判断を仰ぎましょう。」
そうか、この世界では機械化されていないから全てが職人の手作りになるのか。
思い出した考えで危うくこの世界の人達の生活を滅茶苦茶にするところだった。
「それについては、承知いたしました。では試作品の検証は続けることにします。」
「えぇ、そうしてちょうだい。1度限界の回数を知っておきたいわ。それで他に報告があるのかしら?」
「次はこちらをまず見ていただけますか?」
バリーさんが最初に出した紙を伯爵様に渡した。
伯爵様は紙の手触りなどを確かめている。
「…ずいぶん高級そうな紙ですね。それに何ですか『風呂は浴槽が必要です。』って、この紙は柴田様が用意したのですか?」
「それは柴田様がちょっとした実験から生成したモノです。高級紙と言っても良い紙と考えております。ウィル殿も試し書きをされましたが書き心地がすごく良いとのことです。」
伯爵様は羽ペンを手に取り試し書きを始め、少し書いたところで伯爵様はため息をついた。
「…それでこの紙は売れそうとか話して、紙を大量に生成したのかしら?」
何で分かったんだ?まるで伯爵様は部屋の出来事を見ていたようだ。
「…ご推察の通りです。」
「まぁ、既存の製紙業と差別化は出来ますのですぐに販売とはいきませんがいずれということで。まずは王宮にこの紙を献上しましょう、その方が話が早くなるわ。」
やはり根回しはどの世界にでも必要なんだなぁ。
面倒だけどやればスムーズに物事が進むんだよなぁ。
「それでこの紙は何枚用意できるのかしら?10枚、それとも20枚くらいかしら?」
「えぇっと、試しに作った魔法陣で1回の起動で1000枚出せます。」
伯爵様黙ってしまった。
両脇に控えているアーロンさん、エディンさんは遠い目をしている。
「柴田さん、これが普通の反応です。何事もやりすぎはよくないですよ。」
「いや、しかしですね。大量に使うとなるなら、あるに越したことはないと思いますよ。」
「それはそうですが物事には限度がありますので最初は10枚とかそれくらいで良いのですよ。」
「いやいや、後でまた50枚、100枚、500枚と数を変えた魔法陣を描くなら最初から大量に生成できた方が…」
「柴田様!加減を覚えてください!」
ウィルさんと議論をしてたら伯爵様に怒られてしまった、解せない…




