第64話
とりあえず熱湯が出るからそれに氷を入れれば良い感じの温度になるのではないだろうか?
後は浸かれる浴槽が欲しいがどうするか…
ん?
2人ともこちらを見ているがどうしたんだ?
「あの、どうかしましたか?」
「柴田さん、今お湯が出ているように見えましたが?」
「はい、出ましたね。先ほど言ったお湯も出ないかなとやってみたらできた感じです。」
しかし、出来たのは良いが冷水か熱湯かの2択は極端だよな…
まぁ、お湯が出たことだし良しとするか。
「…柴田様、これは主様へ報告しないといけません。水の魔法陣でお湯が出るのということは前代未聞です。」
うーん、昨日の今日で報告をするとまた怒られそうだなぁ。報告に行かないと言うてはないのかな?
「それって報告に行かないというのは…」
「「出来ません!」」
ユニゾンで言われてしまった…
覚悟を決めて行くしかないのかなぁ。
「ところでそちらの検証はどうしますか?」
「それより母上に報告に行きましょう。」
逃げ道はもうない…
ウィルさんとバリーさんに連行され伯爵様の執務室前に着きウィルさんが『母上、緊急の報告です。』と声をかけると長い沈黙の後、どうぞと聞こえた。
部屋に入ると伯爵様が手を組んでこちらを見据えている…
両脇にはアーロンさんとエディンさんが控えている。
大したことのない報告と思ってくれないかな?
………いや、絶対怒られる。
「……それで、今日は何をやらかしましたか?」
「じゃあ、柴田さん。後はご自分から…」
え?
ウィルさんが報告してくれるんじゃないの?
…仕方がない、僕から言うか。
「えぇっとですね。水の魔法陣ですが水の量以外に温度についても指定出来るんじゃないかなと実験してみましたら…でも思った結果ではなかったんですよね。」
「それは失敗したのですか?それとも成功したのですか?」
「結果を言えば冷たい水と熱湯が出ました。本当はもっといろいろな温度が出せることを期待したのですが…」
「水の魔法陣で熱湯……?」
伯爵様は呟き、深いため息をついた。
アーロンさんは呆れ顔だし、エディンさんは諦観の顔になっている。
「今朝も言ったはずなのですけどねぇ、それで柴田様は水の温度を変えて何をしようとしていたのですか?」
「いやぁ、お恥ずかしい話ですが風呂に入りたくてちょっとした実験のつもりでしたがこのように大ごとになってしまって…本当は一声かけようかと思いましたが出来るかどうか分からなかったので…」
…本当に風呂に入りかっただけなんだけどな。
「…その『風呂』と言うのはどう言ったものでしょうか?」
「僕のいた世界というより住んでいた国では体を洗ったり全身浸かることで疲労回復の効果も期待できる設備ですね。」
「…その設備を用意するとして必要なものはわかりますか?」
お、伯爵様が風呂に興味を持ったか?
疲労回復効果で興味を引かれたのかな。
「えぇ、大体は分かります。」
体の汚れとかを落とす石鹸も欲しいところだが…
まぁ、後回しでいいか。
「では必要な設備内容を書き出して見せてください。出来そうであれば敷地内に実験的に作ってみましょう。」
よし、頑張って書き出そう。
「それと母上、もう一つ報告があります。例の試作品の検証ですが既存の水を出す魔道具については20回で魔石がダメになります。試作品の方は100回使用してもまだまだ使えそうです。」
ガタッ
伯爵様が勢い良く立ち上がった。
「それは本当なの!?」
「はい、100回試したところで柴田さんがお湯を出したのでそちらの方が重要度が高いと思い、急ぎ報告に来ました。」
「えぇ、もうこうなるとどちらの方が重要なのか判断に困るのだけれども…」
「主様、この回数の違いですが柴田様が見たところ非効率的な指定の仕方とのことです。魔石の消耗が激しい魔道具について1度柴田様に見てもらうのがよろしいかと…」
「…判断に迷うわね。そうね、まずはウィル、バリーは引き続き試作品の検証ね。魔石の限界となる回数を知りたいわ。それからエディン、この国で出回っている魔道具の一覧を洗い出して。その中で魔石の消耗が激しいモノがあれば備考として記載を。アーロンはここ数年の屋敷で使用した魔石の使用量を洗い出して。」
伯爵様がすごい勢いで采配していく、すごい迫力だ。次は僕に指令だ、なんだか戦隊モノの作戦会議みたいでワクワクする。
「そして柴田様ですが、先ほどの設備の書き出し以外はくれぐれも違うことはしないでください!」
釘を刺されてしまった…




