第61話
何かを忘れているような…
そうだ!
フリー王子に言っておいた方が良い気がする。
「そういえば伯爵様、この魔道具についてはフリー王子に伝えておかなくても大丈夫ですか?」
「もう色々と伝わっていますよ…社会実験の一環として許可をいただいております。」
あぁ、そういえばメイドさんに紛れてフリー王子の部下がいるんだったな。
例の通信魔道具でやり取りしているのだろう。
「伯爵様はフリー王子の部下の方とやりとりしているのですか?」
「いえ、執務室の机に紙が置いてありました。それには『水と氷の魔道具を領内への貸出を許可する。管理と配布後の体調不良者について記録をしっかりすること。あとブディーノを私が戻った時にも作ること』と…」
ブディーノまで知られているのか。
王宮で関係者へ報告と各地の情報収集をしているはずなのにこちらのことにまで意識を向けているのか…
「そう言うわけでこちらの行動については把握されていますので勝手な行動はくれぐれも謹んでください…ただ、昨日のブディーノは美味でした。このような甘味であれば行動されても問題ありません。」
甘味の力は強いな…
他の甘味となると小豆とか欲しいがこの世界に似た品種があればいいな。
後ゼラチン、寒天があればもう少し甘味の幅が広がるな。
「そちらにつきましては善処します。」
「では後日、鍛冶工房の親方を屋敷に呼びますのでその時は同席をしてください。」
「承知いたしました。では引き続き試作品に関して詳細な検証を行います。」
「よろしくお願いしますね。…そろそろ氷で冷やされた頃かしらね。」
そう言うと伯爵様は氷と水が入ったグラスに手を伸ばし水を一口飲んだ。
「…冷たいですね、これなら暑い時期に水を飲まない人が減るかもしれませんね。これで体調不良になる領民が減れば良いのですが…」
そう言えば脱水症状時の水分補給と言えば経口補水液だがあれは自己判断で飲んで良いものだったか?
まぁこれについては水、塩、砂糖で作れるから今度やってみよう。
鑑定で何かが出るかもしれない。
試作品披露も終えたので伯爵様は『くれぐれも頼みますよ。』と言い部屋を出ていった。
その後、僕たちは部屋で試作品の検証内容をどうするか話し合った。
その中でウィルさんから標準的な魔石で何回使えるかを検証しておきたいと発言があった。
それは大事なことだしやっておくべきことだ、耐久テストにもなるし。
しかし、根気がいる作業なんだよなぁ…
「水を出すことに関しては既存の魔道具がありますので比較も兼ねて私が担当したいです。それであいつの伸び切った鼻っ柱を折ってやるんだ。」
ウィルさんやる気だな…
何か私怨みたいなものも感じるが…
コソッとバリーさんが教えてくれた。
「ウィル殿が勤めている魔法省の上司が20年前、水の魔道具を量産させる事に成功した人物です。今もそのことを鼻にかけて部下へ陰湿な嫌がらせや仕事の妨害をしているようです。」
どこの世界にもいるもんだな…
そう言うことならウィルさんに任せよう。
「それなら検証はウィルさんにお任せします。」
「私もウィル殿に協力して検証を記録したいと思います。」
「了解です、ではお二人にお任せしますね。」
そう言うと2人は試作品の魔道具を持って部屋を出ていった。
あぁ、庭なら水浸しになっても問題ないか?
さて、検証を2人に任せて僕は文字の学習を再開するかな。
文字はなかなか覚えられないから数字だけでもまずはマスターしよう。
数字は幸いにも十進数だった、元の世界で使用していた記数法で良かった。
しかし、アラビア数字というよりローマ数字に近いものがある。
なんとか覚えなければ…!
集中して覚えていると昼の鐘が鳴った。
まだ覚えきれていないから休憩後もやらないとなぁ。
お茶の準備をしておこう、メイドさんにお湯を頼むか。
…水の温度っていじれないかな?




