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第53話

魔道具は出力の変更が出来ないなんて…


うーん、出来そうなんだけどなぁ。ウィルさんに何点か確認しよう。


「ウィルさん、先ほど魔法陣とその裏に何かを押していましたがその出力の指定は別の場所に押しても起動しますか?」


「はい、出来ますよ。この光の魔道具がそうです。」


うん、これは予想していた通りだ。


「では出力の指定ですが1箇所に重ねても動きますか?」


「……はい?出力を1箇所ですか?それは聞いたことがないですね…」


ならこれから検証だな。


「では検証してみましょう。」


そう言って僕は2種類の風の魔法陣プログラムを書いた。1つは強さが1のプログラム、もう1つは強さが3のものだ。


これをそれぞれ魔法陣化する。


「ではウィルさん、2種類の魔法陣を用意しました。出力は魔法陣を記載したのとは別の板で同じ所にしてもらえますか?」


「…分かりました。」


ウィルさんは1つ1つにスタンプのようなものを押していきそれぞれ淡く光った。


これで準備が整った。


「では、検証しますね。まず強さが1の風、次に3の風が出るはずです。」


強さが1の魔法陣に魔石をつけた。


微風が吹く。


「「おぉ…」」


次は強さが3の魔法陣だな。


強さが3の魔法陣へ魔石をつけると髪が靡く程度の風が出た。


「…違いますね、1つの出力口で違うものが出ていますね。」


「そんな…魔道具って1機能しか出来ないんじゃないの…?知らなかった…」


あまりやらない手法なのかな?誰かやっていそうだけどなあ…


「柴田様、出力を1箇所にする検証は成功したみたいですがこれからどうするのです?」


そう、ここからが本題だ。


DIPスイッチみたいなのが出来れば良いが仕組みがよく分からないんだよな。…ここはロータリースイッチで説明するか。


「暑くて仕方がない時に欲しい風と少しだけ暑いときに欲しい風の強さは別です。2つ魔道具を用意しても良いのですが僕は、1つに出来るならまとめてしまいたいと考えています。それでですね…」


僕は紙にロータリースイッチの絵を描いた。


絵心はあるとは言えないが何とか通じれば良いなぁ。


「僕のいた世界にあるロータリースイッチというものです。こちらをこう、回すことで起動したり出力を変更できたりします。この絵で言うとダイヤルに魔石を付けて回すことで最初はこの微風の魔法陣に魔石が接触するようにしてもっと回すとそれより強い風が出る魔法陣に接触するようにします。」


ウィルさん、バリーさん真剣に聞いてくれているな。


「僕のいた世界ではありふれたものですがこういったモノづくりをしてくれる工房はありますか?」


2人とも考え込んでしまった。


細工を手がける工房がないのだろうか?


「すいません、そういった工房は心当たりないですね…」


「私も同じく…」


そうか、ないのか…


もしかしたらフリー王子なら何か心当たりあるかもしれないな。


フリー王子が伯爵邸に戻ってきたら聞いてみよう。


それまでは風が出る魔道具は単一出力で凌ぐか。


「ところで柴田様、魔道具作成はこれで終わりですか?」


いやいや、まだあるんだなぁ。


この間のマッテオさんとの約束があるし、作って厨房に持って行って話せば良いかな?


「いえ、後もう1つ氷を生成する魔道具を作ろうかと。料理にも使えるので作って厨房に持っていこうかなと考えています。この部屋にも作って置きますね、飲み物に入れれば冷たくて暑い時期には最高なので。」


2人とも『そうなの?』と言う顔をしているので後で試してもらおう。


そう言って僕は魔道具にする素材を吟味した。


この時の僕は知らなかった。


快適さを求めていただけなのに作った魔道具が伯爵領で大騒ぎになることを…

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